読者の方々は、日本の林業、あるいは木材産業についてどのようなイメージがあるだろうか。SDGsが浸透したことで森林や木材への関心が社会的に高まり、今まさに成長中の産業であるといったプラスのイメージだろうか。それとも多くの業界同様、慢性的な人手不足や高齢化の流れを受けている斜陽産業というマイナスイメージだろうか。

恐らく、前述のような極端なイメージではなく、どっちつかずのイメージが大半を占めていることだろう。

まず、林業と木材産業の区分けについてあまり知らない人が大半であると思う。そこで日本の林業、木材産業の現状について語る前に、まずは両者の棲み分けについて少し解説したい。

「林業」から「木材産業」、そして「消費者」へ届く木材

下図は、木材流通を川上・川中・川下に分類した図である。林業と呼ばれる業界は川上に位置し、大きく森林所有者と素材生産者に分かれる。林業の一般的なイメージとして、森林所有者と素材生産者が同じと想像する方も多いのではなかろうか。確かに両者を同じ事業体で行うケースもあるが、基本的には分けてビジネスを行う。

  • 木材生産・利用の流れから見た「林業」「木材産業」「消費者」の解説図

    木材流通の流れから見た「林業」「木材産業」「消費者」の解説図

素材生産者が原木市場に搬出した後の加工は川中、すなわち木材産業の世界である。知らない人のために補足をすると、魚などと同じく木材にも市場が存在し、競りを行って加工業者が原木を競り落とす。なお原木とは、角材や板材など木材製品にするための原料で、日本農林規格(JAS)では素材と呼ばれている。

そして、原木市場からさまざまな加工過程を経て、川下であるハウスメーカーや工務店などのハウスビルダーに木材製品が入荷され、私たちの手元に届くというのが、一般的な木材流通の流れである。

さて、前回記事の冒頭でもぼやいたが、「日本の木材(国産材)を使って林業に還元していこう」というメッセージは、森林所有者や素材生産者に利益をもたらす意味合いで使われており、「国産材利用=川上への利益還元」という等式が社会に浸透しているというのが現状だ。実際、国も国産材利用や地域材利用と銘打ってあらゆる施策を講じている。

でははたして「国産材利用=川上への利益還元」は正しいのだろうか。タイトルに即して言い換えるのであれば、「木を使うことは良いこと」という考えは、日本の林業にとって本当に良いことなのだろうか。