ECU挿絵

今回のテーマはECU(エンジンコントロールユニット)である。

エンジンというからには、また車の話である。しかし、車と一言で言っても、そこにはさまざまな機能や設備が搭載されている。

まず、足元を見て、ブレーキがない車には乗らない方がいいだろう。同じようにタイヤやハンドルがついていない車にも乗らない方がいいが、逆にそれで発進できたら大したものである。

それらの、車最大の用途である「走る」、そしてある意味走るより重要な「止まる」という機能の他にも、車にはライトやステレオ、エアコンなどの機能がついている。

AM放送が聞けなきゃ死ぬ、という者はあまりいないだろうが、ライトやエアコンは走行に直接関係がなくても、時に生死にかかわるぐらい重要な機能である。

車というのは走る以外にも、相撲を取る場所がないカップルが人気のない所に停めて中で相撲を取る、という重要な用途があるのだ、夏場エアコンがない車で相撲を取ったら死人が出る。

自動車でもサッカーでも重要な「司令塔」

この「走る」機能と、エアコンやライトなどの機能、今まで作動させる原理が違っていたらしい。

エアコンなどは「電気機器」だ。一方、エンジンほか「走る」機能の方は、極めてメカニカル(機械的)な原理で動いていたのだ、という。

今まで、電気と機械が全く別物だと考えたことすらなく、そう言われたところで「そうなん…? 」としか言いようがないのだが、そう言った内部構造に全く興味なく、気づいたらオイルフィルターを真っ黒にさせている奴が全然知らない内に、機械的だったエンジン回りも電子制御する向きになってきたそうだ。それがECUである。

エンジンコントロールユニット(英: engine control unit、ECU)とは、エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際に、それらを総合的に制御するマイクロコントローラ(マイコン)である。エンジンコンピュータ、または単にコンピュータとも呼ばれる。 (引用:「ECU」『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』2018年7月2日 (月) 17:00)

このECUを使うことでどんな良いことが起こるかというと、運転性の向上、燃費の向上、排気ガスのクリーン化、そしてエンジン性能の向上などが挙げられる。このように、さまざまな利点があるため、今では車の多くの部分でECUが使われているという。

特にハイブリットカーにはECUが欠かせないようだ。もちろんオイルフィルター真っ黒野郎にとっては、ハイブリットカーと言ったら、「仕組みはわからんけど、燃費がいい車」というイメージしかない。なぜ燃費が良いかというと、動力が、ガソリンで動くエンジンと、電気で動くモーターの文字通りハイブリットだからだ。

しかし、動力も、萌えキャラの設定と同じように「積めばいい」というものではない。上手くバランスが取れていないと「ヤンデレ要素いらなかった、幼馴染ポジ一点突破の方がマシだった」みたいなことになる。

同じように、エンジンとモーターの統制がとれず、両者が延々「俺が行く」「いいや俺が行く」「どーぞどーぞ」とやっていたら燃費以前に車が走らない。

よってこの二つの動力を上手く動かす司令塔が必要だ、それがハイブリット制御のECUである。このECUが、エンジンの効率が悪い時はモーターのみで車を走らせ、急加速の時は両方使うなど、アクセルの踏みこみ具合などにより判断し、動力に指示を出すのだ。

今これを書いているのがW杯の真っ最中なのだが、ECUというのはサッカーで言えば「司令塔」みたいなものである。サッカーに関しては、セネガル戦で初めて「W杯が始まっている」と気づいたぐらい無知なので、司令塔の重要さはピンときていなかった。だが「車で言えばエンジンの動きを制御するやつ」と言われれば、その重要さがわかる。そこがボンクラだと、サッカーでは試合に負け、車では事故が起こる。

ECUはエンジン回りの他に、エアバックの制御にも使われているそうだ。衝突時に、その衝撃レベルから判断し、エアバックを展開したりシートベルトの動きを制御したりするという。

凄まじく重要な機能である、ECUが「このぐらいの衝撃でエアバックを出すのはオーバーすぎる」と判断してエアバックを出さなかったが、実際はそこまでオーバーじゃなかった、となったら事である。

車の司令塔もサッカーの司令塔も「責任重大」なのは共通している。自分に回って来たら「どーぞどーぞ」と言いたくなる仕事である。

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)、「カレー沢薫の廃人日記 ~オタク沼地獄 - 」(2018)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年7月10日(火)掲載予定です。