このものづくりニュースのまとめ

・三菱電機と千葉工業大学がフィジカルAI研究開発で基本協定を締結
・多脚・人型・ドローンなどの自律制御ロボットを活用した事業化を推進
・製造やインフラ分野の労働力不足解決を狙う

三菱電機と千葉工業大学(千葉工大)は5月26日、フィジカルAIに関する国産技術の研究開発を共同で進める基本協定を締結したと発表した。これに基づき両者は共創センターを設立し、多脚歩行型、人型、ドローン型などの自律制御ロボットを活用したAIロボティクスソリューションの事業化を推進する。協定期間は2029年4月までの3年間を予定する。

  • 協定締結の握手

    協定締結に際し、握手を交わす三菱電機 執行役副社長 兼 CTOの加賀邦彦氏(左)と 千葉工業大学 常任理事・未来ロボット技術研究センター所長の古田貴之氏(右) (出所:三菱電機)

背景に日本が抱える労働力不足とインフラの老朽化という課題

日本は労働人口の減少に加え、道路や鉄道、水道といった公共インフラの老朽化が進行しており、製造現場やインフラ保守の現場ではAIやロボットによる自動化の必要性が高まっている。

一方で、加工や組み立て、機器調整といった作業は周囲の状況に応じた柔軟な対応が求められるため、自動化が難しい領域として残っている。こうした課題に対し、現実環境に応じたリアルタイム制御を可能とするフィジカルAIが、熟練者のような作業を実現する基盤技術として期待されている。

産業ナレッジとロボット技術を融合

今回の取り組みでは、三菱電機と千葉工大それぞれの強みを組み合わせる構成となる。

三菱電機は製造ラインやインフラ保守で培った現場ナレッジに加え、協働ロボット「MELFA ASSISTA」に代表されるモーション制御やセンシング技術を有している。一方の千葉工大は、外部環境に応じた柔軟な運動能力を実現する大規模物理モデル技術を持ち、災害対応や原子力向けロボットなど実環境での実績を積み上げてきた。

両者はこれらの技術を統合し、状況に応じて判断し動作する自律制御ロボットの実現を目指す。

共創センターで事業化を加速

設立される共創センターでは、官需および民需双方を視野に入れたフィジカルAI技術と関連技術の研究開発を進めるとともに、実用化に向けた事業活動も展開する。

開発成果は製造業やインフラ分野での活用を起点に、将来的には災害対応や物流など幅広い領域への適用を目指すとしており、AI技術の社会実装を前提とした取り組みとなる。

「人のように動くロボット」実現へ

フィジカルAIは、従来のAIのようにデータ上での判断にとどまらず、実環境に即した認識と動作を連動させる点に特徴がある。

今回の共同開発では、センサーから得られる情報と動作をリアルタイムに統合し、外部環境に適応した動作を実現することで、人間の作業に近い柔軟性を持つロボットの実現を目指す。

これは単なる自動化を超え、状況に応じて判断し行動する新たなロボットの枠組みを示すものといえる。

フィジカルAIが産業構造を変える可能性

AIはこれまでソフトウェア領域を中心に発展してきたが、今後はフィジカルAIの名のもとにロボットや産業機械と融合し現場で価値を生むフェーズへと移行しようとしている。

そうした中において、今回の協業は、AIとロボティクス、さらに産業ナレッジを統合する取り組みであり、日本発のフィジカルAI技術を基盤とした新たな産業創出を狙う動きと位置付けられる。

労働力不足や社会インフラ課題の解決という観点からも、AIの実装領域は今後一層広がるとみられ、今回の取り組みはその方向性を示すものとなる。