この半導体ニュースのまとめ
・ASMLの2026年第3四半期売上高は過去最高の116億6200万ユーロ、純利益は49億6000万ユーロを達成
・AI関連投資を背景に顧客の装置需要見通しが上振れ、2029年や2030年の発注に関心を示す顧客も登場
・現在の供給計画では2027年と2028年の需要を満たせないとして、2028年の追加増産を検討
ASMLは10月14日、2026年第3四半期の決算を発表した。それによると売上高は前四半期比25.0%増の116億6200万ユーロ、売上総利益は同33.1%増の67億ユーロ、純利益は同70.0%増の49億6000万ユーロとなり、同社としての四半期売上高で過去最高を更新した。また、売上総利益率は前四半期の54.0%から57.5%へ上昇し、営業利益率も同37.1%から44.4%へと上昇。1株当たり純利益は、前四半期の7.59ユーロから12.95ユーロへ増加した。
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ASMLの2026年第3四半期決算概要。売上高は117億ユーロ、装置売上高は84億ユーロ、Installed Base Management売上高は33億ユーロ、売上総利益率は57.5%となった (出所:ASML。以下すべてのスライド同様)
売上高と純利益が過去5四半期で最高に
ASMLの四半期売上高は、2025年第3四半期の75億1600万ユーロから、同年第4四半期に97億1800万ユーロへ増加。2026年第1四半期は87億6700万ユーロ、第2四半期は93億2600万ユーロで推移し、第3四半期は116億6200万ユーロまで拡大した。
純利益も、2025年第3四半期の21億2500万ユーロから、同年第4四半期に28億4000万ユーロ、2026年第1四半期に27億5700万ユーロ、第2四半期に29億1800万ユーロと推移し、第3四半期は49億6000万ユーロまで増加した。
第3四半期の装置売上高は84億ユーロ、Installed Base Management(IBM)売上高は33億ユーロとなった。IBMは、納入済み装置に対するサービスおよびフィールドオプションの売上高を示すもので、半導体メーカーによる生産性向上に向けたアップグレード需要が想定を上回ったという。
ASMLのChristophe Fouquet社長兼CEOは、第3四半期の売上高が会社予想の上限に近い水準となった背景について、増産の立ち上げが順調に進んだことに加え、生産性向上に向けたアップグレード需要が継続したためと説明している。売上総利益率が会社予想を上回る57.5%となったことについても、IBM売上高が想定以上となったことが寄与したとしている。
半導体露光装置の販売台数は121台
第3四半期の半導体露光装置の販売台数は121台となり、前四半期の91台から30台増加した。この販売台数には計測・検査装置は含まれていない。露光装置の内訳としては新品が113台、中古が8台で、新品が前四半期の86台から27台の増加、中古も同5台から3台増加している。また、波長別では、EUVは17台、ArF液浸が40台、ArFドライが10台、KrFが35台、i線が19台としている。
装置売上高も前四半期の66億ユーロから84億ユーロへ増加しており、出荷台数の増加が四半期売上高の拡大をけん引した形である。ユーザーベースでみると、メモリが46%、ロジックが51%となっており、国・地域別では台湾が32%でトップ、次いで韓国31%、中国23%、米国13%、残りのアジア地域で1%となっており、前四半期では日本が4%を占めていたが、第3四半期での記載はなくなっている。
AI需要で2029年や2030年の発注に関心を示す顧客も
ASMLによると、AI関連投資の規模と継続期間に対する見方を背景に、顧客各社が短期および中期の半導体製造装置の需要予測を引き上げており、一部の顧客は2029年、さらに2030年を対象とする装置発注にも関心を示すようになっているという。
AI半導体では、AIアクセラレータに用いられる先端ロジックだけでなく、HBMをはじめとする先端半導体メモリや、各チップを接続する先端パッケージングの需要も拡大している。
先端ロジックや先端メモリの製造では、プロセスの微細化やデバイス構造の複雑化に伴い、EUVやDUVによる露光回数が増える可能性がある。ASMLも、先端ロジックおよびメモリプロセスで重要な露光工程が増加すると予測しており、露光技術が顧客の技術革新において引き続き中核的な役割を担うとの見方を示している。
2027年と2028年は供給が需要を下回る見通し
またASMLは、2026年に入ってから受注の勢いが四半期ごとに増していることを踏まえ、現在計画している2027年と2028年の供給能力では、顧客需要を完全には満たせないとの見通しを示した。
同社は2026年第2四半期決算の時点で、従来型のNA(=0.33) EUV露光装置および液浸DUV露光装置について、2026年の生産能力を基準に、2027年の生産能力を30%引き上げる計画を示していた。
2028年についてもさらに30%の増産を検討していたが、今回の決算では、これまで示してきた30%の増産を上回る生産能力の確保に向けた方法を検討していることが明らかにされた。
同社の半導体露光装置は、光源、光学系、ステージ、計測、制御など、多数の高精度部品とサブシステムで構成される。そのため、ASML単独で組み立て能力を増やすだけでは生産能力を高めることはできず、サプライチェーン全体で部品やサブシステムの供給能力を拡大する必要がある。
また、新規装置の供給能力を高めるだけでなく、既存装置の生産性を引き上げるアップグレードを提供することで、顧客が保有する装置群のウェハ処理能力を拡大する取り組みも継続するとしている。
TSMCと12インチフォトマスクの実用化を推進
このほか、同社は事業面では、ASMLとTSMCが高NA EUV向けフォトマスクを大型化する取り組みを推進している。高NA EUV露光装置では、投影光学系の開口数を従来のEUV露光装置のNA=0.33からNA=0.55へ引き上げることで、より微細な回路パターンを形成できるようになるが、1回に露光できる領域が従来のEUV露光装置より小さくなるため、大型チップを製造する場合には、複数回に分けて形成したパターンを高精度につなぎ合わせるスティッチングが必要となる場合がある。
ASMLとTSMCは、現在の6インチフォトマスクを6×12インチへ大型化することで、2枚のマスクを使用する露光に比べて40%を超える生産性向上が可能になるとしている。ただし、12インチフォトマスクの実用化には、マスクブランクス、描画、検査、欠陥修正、洗浄、保管、搬送など、フォトマスクのサプライチェーン全体を新たな寸法へ対応させる必要がある。
ASMLとTSMCは、露光装置だけでなく、フォトマスクの製造・検査装置、材料、搬送設備、EDAなどを含むエコシステムの整備を進め、高NA EUVの生産性向上と量産規模の拡大につなげていくとしている。
次世代重ね合わせ計測装置「YieldStar 550」を出荷
ASMLは第3四半期、次世代の重ね合わせ計測装置「YieldStar 550」を出荷したことも明らかにした。
半導体製造では、多数の回路パターンを複数のレイヤにわたって重ねて形成する。各レイヤの位置が設計値からずれると、トランジスタや配線が正常に接続できなくなり、歩留まり低下につながる可能性がある。
YieldStar 550は、先端ロジックおよび先端メモリのプロセスノードを対象に、各レイヤの重ね合わせ精度を計測する装置となる。
ASMLは、EUVおよびDUV露光装置だけでなく、計測・検査装置や計算リソグラフィを組み合わせたホリスティックリソグラフィを展開している。露光前後の計測データを装置制御へ反映することで、パターン形成精度と生産性の向上を図ろうという取り組みである。
2026年通期売上高は440億~450億ユーロを予想
なお、2026年第4四半期の業績については、売上高を142億~152億ユーロと予想している。このうちIBM売上高は約37億ユーロ、売上総利益率は約57%を見込むほか、研究開発費は約12億ユーロ、販売費および一般管理費は約4億ユーロを見込んでいる。
これを踏まえた2026年通期業績については、売上高を440億~450億ユーロ、売上総利益率を約56%と予想している。




