この半導体ニュースのまとめ

・富士フイルムが米国アリゾナ州の半導体材料拠点に約30億円を投資
・銅配線用CMPスラリの能力増強と、前工程・後工程向け多品種生産設備の新設を実施
・先端パッケージングを含む新製品を開発から量産へ迅速に移行できる体制を構築

富士フイルムは10月14日、米国アリゾナ州メサ市にある半導体材料の生産・開発拠点において、銅配線用CMPスラリの生産能力を増強するとともに、先端パッケージング用途などに向けた多品種生産設備を新設すると発表した。総投資額は約1800万ドル(約30億円)で、新設備の稼働開始は2027年を予定する。

CMPスラリは、硬さの異なる配線や絶縁膜などが混在し、凹凸が生じている半導体の表面を、化学的反応と機械的研磨によって均一に平坦化するCMP工程で用いられる研磨剤である。

世界トップクラスのシェアを有する銅配線用CMPスラリを増産へ

今回、富士フイルムが生産能力を増強するのは、先端ロジックや先端メモリの配線形成工程で使用される銅配線用CMPスラリ。同社によると、銅配線用CMPスラリのシェアは世界トップクラスとのことで、AI関連需要の拡大を背景に、先端ロジックおよび先端メモリ向けを中心に需要が増加しているという。

特に米国では、米国を本拠地とする大手半導体メーカーによる設備投資に加え、アジアを本拠地とする半導体メーカーによる新工場の建設も続いている。こうした市場環境を踏まえ、CMPスラリの生産・開発における中核拠点の1つであるアリゾナ拠点の供給能力を引き上げることを決めたという。また、同拠点では、CMPスラリのほか、フォトリソグラフィ周辺材料や薄膜形成材なども生産しているという。

先端パッケージングを含む多品種生産設備を新設

今回の投資では銅配線用CMPスラリの増産に向けた設備投資に加え、前工程から後工程まで、多様化する半導体製造プロセス向けCMPスラリを多品種生産できる設備も新設するとしている。

従来、CMPは主として半導体前工程における配線層の形成などを中心に用いられてきた。しかし、複数の半導体チップを高密度に接続する先端パッケージングの広がりに伴い、後工程でも高精度な平坦化技術の重要性が増してきており、今回の対応はそうしたニーズの拡大に応じるものといえる。

具体的には、配線工程であるBEOL(Back End of Line)向けに加え、ウェハ表面に、トランジスタやキャパシタ、抵抗などの素子を形成するFEOL(Front End of Line)向けやFEOLで形成したトランジスタの端子と配線層の最下層を接続するための中間的な接続工程であるMOL(Middle of Line)向けCMPスラリといった前工程用CMPスラリに加え、銅と絶縁膜を平坦化してチップやウェハを直接接合するハイブリッドボンディングをはじめとする、先端パッケージング向けCMPスラリの生産設備を新設するとしており、半導体の構造や製造工程の多様化に対応していくとする。

研究開発の成果を迅速に量産へ

また、アリゾナ拠点には、CMPスラリのグローバルな研究開発を担う研究開発センターも設置されており、新設される多品種生産設備は、同センターで開発されたCMPスラリを、量産設備へ迅速に移行する役割も担うこととなるという。

研究開発施設に近接することで、顧客の製造プロセスに応じた材料を開発し、その成果を量産へ柔軟に移行できる体制を構築することで、新たな事業分野への展開の加速を目指すとしている。

前工程から後工程まで半導体材料を展開

富士フイルムは、フォトレジスト、フォトリソグラフィ周辺材料、CMPスラリ、ポストCMPクリーナ、薄膜形成材、高純度プロセスケミカルなど、半導体前工程向けの材料を幅広く展開しているほか、後工程向けには、ポリイミドをはじめとする感光性絶縁膜材料「ZEMATES(ゼマテス)」を提供している。また、イメージセンサ向けにはカラーフィルタ材料などで構成する機能性材料群「Wave Control Mosaic(ウエイブ コントロール モザイク)」を展開するなど、幅広い半導体材料を展開してきた。

それら半導体材料の製造拠点も日本、米国、欧州、台湾、韓国などに世界各国・地域に点在しており、顧客の半導体工場に近い地域で材料を製造・供給する「地産・地消」に加え、技術サポートや共同開発を提供する「地援」を推進してきた。

今回の設備投資では、米国における銅配線用CMPスラリの供給能力を高めるとともに、アリゾナ拠点の研究開発機能と多品種生産機能を連携させることで、米国を中心とした先端半導体ニーズへの対応強化を図っていくこととなるが、同社ではそうした先端プロセスのみならず、レガシープロセスまで含め、前工程から後工程までを対象とする材料ポートフォリオと、グローバルな安定供給体制を組み合わせることで、半導体材料市場における事業拡大を目指すとしている。