企業へのサイバー攻撃が急増する中、通信各社からセキュリティ対策を直接組み込んだネットワークサービスを提供する動きが加速しています。なぜネットワークにセキュリティを統合するのか、その利用はどこまで広がろうとしているのかを、各社の発表から確認してみましょう。→「ネットワーク進化論 - モバイルとブロードバンドでビジネス変革」の過去回はこちらを参照。
セキュリティ統合で先行するNTTドコモビジネス
多くの企業からここ数カ月のうちに、サイバー攻撃を受け情報漏洩したとの発表が相次いでいます。その背景に、ここ最近のAIの急速な進化を挙げる声は多いですが、AIの進化は今後も加速すると予想されているだけに、サイバー攻撃に対応するためのセキュリティ対策は今後、一層重要になってくることは間違いありません。
そうしたセキュリティ対策の新たなアプローチの1つとして、ネットワークにセキュリティ対策を統合する動きが急拡大しています。企業が用いるネットワークの基盤そのものに、サイバー攻撃の検知や遮断などのセキュリティ機能をあらかじめ組み込んで提供するのですが、そのメリットはより早い段階で、多くの機器をサイバー攻撃から保護できることにあるようです。
従来、ネットワークサービスとセキュリティ対策は別々に用意するのが一般的でした。しかし、最初からネットワークの側にセキュリティ対策の仕組みが取り込まれていれば、ネットワーク自体が不正侵入などの異常を検知して被害を抑えることができますし、IoT機器などのように、ネットワークには接続するがハード的に別途ソフトウェアを組み込むのが難しいような機器に対しても、セキュリティ対策ができるようになります。
そうしたことから、昨今では国内の通信会社が相次いでセキュリティ統合型ネットワークサービスの提供に動いているようです。
その中でも早い段階で取り組みを進めているのがNTTドコモビジネスで、同社ではネットワークインフラの設備を自社で持たず、クラウド経由で必要な分だけお金を払って利用するNaaS(Network as a Service)の技術を用い、ネットワークにセキュリティ機能を一体で提供するセキュリティ統合型NaaSの提供に力を入れています。
実際、同社はセキュリティ統合型NaaSとして、すでにオフィスやクラウド、リモートワークなどに対応する企業向けネットワークサービス「docomo business RINK」を2023年、IoT機器向けのネットワークサービス「docomo business SIGN」を2025年より提供しています。
docomo business RINKに関してはさらに、2026年10月から社内のネットワークに侵入した脅威に対処する「LANセキュリティ」を追加するなど、機能拡張を進め強化が図られているようです。
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docomo business RINKやdocomo business SIGNで提供されている「WANセキュリティ」の事例。ネットワークで脅威を検知して通知し、攻撃者を遮断できることから、セキュリティソフトを導入できないIoT機器なども保護できる
KDDIは米企業と連携してサービスを提供
また、KDDIも2026年9月29日に企業向けのネットワークとその運用、そしてセキュリティを統合して一体的に提供するネットワーク基盤「AccelWaves」構想を発表。その第1弾として同日から「SASEゲートウェイ powered by Palo Alto Networks」の提供を開始しています。
こちらはその名前の通り、セキュリティ大手の米Palo Alto Networksが提供する統合型セキュリティソリューション「Prisma SASE」の基盤を、KDDIの広域イントラネットサービス「Wide Area Virtual Switch」「Wide Area Virtual Switch 2」と直接閉域接続することにより、VPN接続不要でPrisma SASEを利用できるようにするもの。顧客が既存の環境を変えることなく、より安全な接続を実現できることが大きなポイントとなるようです。
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KDDIは「AccelWaves」構想の第1弾として「SASEゲートウェイ powered by Palo Alto Networks」の提供を開始。KDDIのネットワークにPalo Alto Networksのセキュリティソリューションを直接取り込み、安全な接続を実現するものになる
個々の技術や内容に違いはありますが、いずれのサービスも、ネットワークに直接セキュリティ対策を導入することで、個々のデバイスより大きな枠組みで顧客の安全を守ろうとしていることは確かです。通信各社が企業のセキュリティリスクの高まりをふまえ、こうしたサービスに力を入れるようになったことは興味深い動きといえるでしょう。
ただ、最近の動向を見るに、サイバー攻撃はAIの高度化によって、特定の企業を狙い撃ちするというより、ターゲットを選ばずあらゆる企業に攻撃を仕掛けるようになってきたといえます。
それだけにこうしたサービスを広げていくうえでは、各社が力を入れる大企業だけでなく、中小企業への対応も求められることになりそうですが、2社はどのように考えているのでしょうか。
KDDIのビジネスコア事業本部 プロダクト企画開発本部長である堀純二氏は、そのターゲットとして「セキュリティ対策に課題を持つ法人全て」だと話しています。しかし、Palo Alto Networks自体が大企業向けに強みを持つことから、当初提供するサービスでは大企業が主なターゲットとなるようで、今後提供を予定しているサービスにより、その裾野を広げていきたい考えのようです。
NTTドコモビジネスはすべての企業を対象に
一方、この分野で先行しているNTTドコモビジネスの代表取締役社長の小島克重氏は、大企業はサプライチェーンや幅広い取引先との応対など、さまざまな場面でセキュリティ対策が求められます。
しかし、中小企業は技術面や投資余力の関係もあり、セキュリティ対策の導入が進んでいないと説明。それだけに、ネットワークに統合したセキュリティであれば「むしろ使ってもらうだけでセキュリティ対策が打てる」と話し、すべての企業を対象に同社のサービスを展開していきたい考えを示していました。
複数企業による情報漏洩が連日のように伝えられている昨今の状況を見れば、セキュリティ対策の重要性が大きく高まっていることは間違いありません。ネットワークに直接セキュリティ対策を取り込むという動きは非常に価値のあるものだけに、いかに多くの企業に価値を理解してもらい、導入してもらう取り組みが重要になってくるといえそうです。


