この半導体ニュースのまとめ
・オムロンが検査データとNVIDIA Omniverseを組み合わせた品質管理技術を実証
・AOIとAXIのデータを重ね合わせ、部品の反りや内部の接合不良の因果関係を可視化
・AIエージェントによる検査支援やOpenUSDを介した設計・製造工程との連携を目指す
生成AIの普及やAIデータセンターの拡大に伴い、半導体パッケージではチップレット化や大型化、バンプ数の増加、バンプサイズの微細化が進んでいる。処理性能や生産効率の向上が期待できる一方、接合箇所の増加や構造の複雑化によって品質保証の難易度も高まっている。
オムロンは、こうした半導体分野における先端パッケージングの品質課題に対応するため、基板表面を測定する外観検査装置(AOI)や、内部の接合状態を非破壊で測定する3D CT型X線検査装置(AXI)のデータを、NVIDIA Omniverse上へ再現する技術の実証を進めている。
同社が目指すのは、検査装置で不良品を選別するだけでなく、検査で得た定量データを品質改善へ活用する仕組みである。表面と内部の状態を同じ3D空間上で確認し、過去の検査結果や製造条件と組み合わせることで、不良原因の究明から工程条件の見直しまでをつなげる。
AOIとAXIのデータから不良の因果関係を可視化
基板検査では、AOIを用いることで部品の浮きや傾き、位置ずれなどを確認できる一方、部品の下に隠れたはんだ接合部の状態を把握することは難しい。反対にAXIでは、内部のボイドやはんだ形状を確認できるものの、部品表面の状態を直接把握することはできない。
従来はAOIとAXIの結果を別々に確認し、熟練技術者が両者の関係を推察していた。オムロンは、双方の検査データをNVIDIA Omniverse上で空間的に重ね合わせることで、外観に現れた異常と内部の接合状態を関連付けて確認できるようにすることを目指している。
例えば、AOIで部品の浮きや位置ずれを検出し、同じ箇所のAXIデータからはんだ形状の異常を確認できれば、部品搭載工程やリフロー工程など、不良が発生した工程を絞り込みやすくなる。検査結果の精度そのものを高めるというよりも、複数の検査結果を統合して不良の実態と因果関係を把握しやすくし、工程改善へフィードバックする取り組みとなる。
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AOIとAXIの検査データを重ね合わせる不良要因分析のイメージ。基板表面にある部品の浮きや位置ずれと、内部のはんだ形状を同じ3D空間上で確認し、不良の因果関係や発生工程の特定につなげる (資料提供:オムロン)
チップや基板の反りを3Dで共有
チップレットや大型基板では、材料間の熱膨張係数の違いなどによって、加熱・冷却時にチップや基板の反りが発生する場合がある。反りによってバンプやはんだ接合部へ応力が集中すると、クラックやオープン不良につながる可能性がある。
オムロンは、AOIで取得した部品表面の高さ情報と、AXIで測定したはんだ接合部の高さや形状を統合し、反りやたわみと、それに伴う接合状態の変化を3Dで可視化する。
高さの違いをカラーマッピングで表示し、3Dモデルを任意の方向から確認できるようにすることで、設計部門と製造部門が同じ品質状態を共有しやすくする。反りや接合異常が同じ方向に偏っていれば、材料や構造だけでなく、加熱温度や圧力、リフロープロファイルといった製造条件を見直すための判断材料にできる。
X線被ばく量を3次元でシミュレーション
3D CT型X線検査では、基板を複数方向から撮像することで、内部構造を立体的に再構成する。一方、メモリをはじめとする一部の半導体部品はX線に対する感受性が高く、過剰な照射が製品の特性や信頼性へ影響を与える可能性がある。
従来の線量管理では、X線源の移動や照射方向、装置内での反射などを含む3次元的な状況を把握しにくかった。オムロンは、検査時のX線照射量をNVIDIA Omniverse上で3次元表示し、部品単位の累積線量をヒートマップとして可視化する技術も実証している。
検査経路や撮像条件を変更した場合の被ばく量をあらかじめシミュレーションすることで、検査精度やタクトタイムを維持しながら、部品へのX線照射を必要最小限に抑える条件を検討できるようにする。
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3D CT型X線検査における部品へのX線被ばく量の可視化。照射方向や検査経路を踏まえた部品単位の累積線量を3次元のヒートマップで表示し、検査精度やタクトとの最適なバランスを検討する (資料提供:オムロン)
AIエージェントで熟練者の判断を支援
製造現場では、人、設備、材料、方法からなる4Mが継続的に変化する。材料ロットや装置の摩耗、キャリブレーション、温度管理などの条件が変わるため、一度構築したAIモデルや検査条件をそのまま使い続けるだけでは、安定した品質を維持することが難しい。
オムロンは、NVIDIAのVideo Search and Summarization(VSS)を活用し、検査画像の特徴を抽出する視覚言語モデル(VLM)、過去の検査事例を検索するGraph RAG、大規模言語モデル(LLM)などを組み合わせたAIエージェントの開発を進めている。
利用者が検査結果について自然言語で質問すると、AIエージェントが過去の検査データから類似する画像や事例を探し、その原因や判断材料を提示する仕組みを想定する。検査画像の3Dデータと熟練技術者の知識を組み合わせ、経験の浅いオペレーターによる良否判定や検査条件の設定を支援する。
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NVIDIAのVideo Search and Summarization(VSS)を活用した検査機オペレーション支援のイメージ。検査画像から類似事例や特徴を検索し、検査方法やしきい値などを提案することで、教育工数の削減と判断基準の均一化を目指す (資料提供:オムロン)
実証では、X線検査でNGと判定された結果を熟練技術者が過去事例と照合し、最終的な良否を判断するまでに1時間程度を要するケースに対し、AIによる類似事例と根拠の提示によって数分程度まで短縮することを目指している。
一方、実用化に向けては、熟練技術者が持つ暗黙知を引き出し、AIが理解できるデータへ変換することが課題となる。3Dデータの再現精度はAXIの測定精度を基に高い水準へ到達しつつあるものの、日常業務で熟練者と同様の回答を得るためには、知識の蓄積と構造化をさらに進める必要があるという。
OpenUSDを共通言語に設計・製造工程へ接続
オムロンは、AOIとAXIの検査結果を、3Dデータの標準的な記述形式であるOpenUSDを用いてNVIDIA Omniverseへ受け渡す。
設計、製造、検査では、それぞれ異なるソフトウェアやデータ形式が利用されているため、工程をまたぐ品質問題が発生した場合、人が情報を読み替えて関係部門へ伝える必要があった。
OpenUSDを共通言語として利用すれば、検査で確認した部品位置や接合状態などの品質データを、設計や工程シミュレーションで利用しやすくなる。将来的にはAIが検査結果から改善箇所を判断し、設計変更や製造条件の調整へ直接フィードバックする仕組みにつなげる考えだ。
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OpenUSDを介したNVIDIA Omniverseとの連携イメージ。AOIとAXIの検査データを共通形式で集約し、設計や製造などの各工程へフィードバックすることで、品質問題への対応と工程改善の迅速化を目指す (資料提供:オムロン)
今回の技術は、検査装置に搭載する単一機能ではなく、検査結果をものづくりへ生かすアプリケーションとして位置付けられている。製品への組み込み、オプション機能、サービスなど、提供形態や実用化時期は現時点で未定で、オムロンは自社工場と一部顧客による実証を通じて、導入効果や提供方法を検討している。
同社は、精緻な3D検査データとデジタルツイン、AIエージェントを組み合わせることで、検査を不良の発見から原因分析、工程改善、再発防止までを支える品質マネジメントへ発展させ、先端半導体パッケージの品質向上や歩留まり改善につなげていくとしている。




