この半導体ニュースのまとめ

・富士フイルムが約70億円を投じた大分工場の半導体材料新棟を稼働
・先端半導体向けポストCMPクリーナーの製造能力を従来比3倍に拡大
・同製品の2030年度売上高を2024年度比2倍以上に引き上げる計画

富士フイルムは8月21日、半導体材料事業の中核会社である富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(FFEM)の大分工場(大分県大分市)に、ポストCMPクリーナーを製造する新棟が完成し、2026年8月から稼働を開始したことを発表した。

  • 大分工場のポストCMPクリーナー製造新棟の外観

    大分工場のポストCMPクリーナー製造新棟の外観 (出所:富士フイルム)

新棟は地上4階建ての鉄骨造で、延床面積は約3,600m2。建屋や製造装置などを含む投資額は約70億円で、ポストCMPクリーナーの製造と品質検査、オフィスに使用する。今回の能力増強により、大分工場におけるポストCMPクリーナーの製造能力は従来比3倍となる。

CMP後の粒子や微量金属を除去

CMPは、硬さの異なる配線や絶縁膜が混在する半導体表面を、研磨パッドとスラリーと呼ぶ砥粒を活用した化学的・機械的作用によって均一に平坦化する半導体製造工程。半導体の微細化や配線層の多層化に伴い、後続する露光や成膜、エッチング工程の精度を確保するうえで重要な役割を担う。

ポストCMPクリーナーは、CMPスラリーを用いた研磨後に、金属表面を保護しながら粒子、微量金属、有機残留物などを洗浄する材料。研磨後に残留物が残ると、配線の短絡や断線、電気特性の低下といった不具合につながる可能性があるため、歩留まりや信頼性を左右する材料の1つに位置付けられる。

特にAI半導体では、微細化と積層化の進展に伴ってデバイス構造が複雑化しており、CMP工程とその後の洗浄工程に求められる精度も高まっている。富士フイルムでは、AI半導体などの先端半導体向けを中心に、ポストCMPクリーナーの需要が急速に拡大していると説明している。

自動生産設備と品質評価機器を導入

新棟には、極めて高い純度が求められる先端半導体材料に対応した自動生産設備と品質評価機器を導入した。製造能力を拡大するだけでなく、品質管理や検査体制も強化し、先端半導体メーカーが求める材料品質に対応することを目指したとする。

CMPスラリーとクリーナーの一体提案を強化

富士フイルムは、CMPスラリーを半導体材料事業の主力製品の1つと位置付け、日本、米国、台湾で生産能力を拱大してきた。ポストCMPクリーナーについても、CMPスラリーと組み合わせて提案できることを強みとし、欧米やアジアを中心とする半導体メーカーへの販売を拡大している。

CMPスラリーとポストCMPクリーナーは、それぞれ研磨と洗浄という異なる役割を担う一方、研磨後の表面状態や残留物は、使用するスラリーの組成や研磨対象によって異なる。このため、両材料を組み合わせて最適化することで、研磨性能と洗浄性能を一体で改善できる可能性がある。

同社では、先端半導体向けポストCMPクリーナーの売上高について、2030年度に2024年度比2倍以上へ拡大すると見込んでおり、大分工場の新棟を供給拡大の中核とし、旺盛なグローバル需要を取り込むことを目指すとしている。

前工程から後工程まで材料を展開

同社は、フォトレジスト、フォトリソグラフィ周辺材料、CMPスラリー、ポストCMPクリーナー、薄膜形成材料、高純度プロセスケミカルなど、半導体前工程向けの材料を幅広く展開してきたほか、後工程向けとして、ポリイミドをはじめとする感光性絶縁膜材料「ZEMATES」の提供を強化。イメージセンサー向けにはカラーフィルター材料などで構成する機能性材料群「Wave Control Mosaic」を展開するなど、さまざまな半導体材料に対するニーズへの対応を図ることで事業の拡大を進めてきた。

今回の大分工場の新棟稼働は、そうした取り組みの中におけるCMPスラリーとポストCMPクリーナーを組み合わせた提案強化につながるもので、AI半導体向け材料事業の成長を支える役割を担うことが期待される。

なお、新棟の屋根には太陽光発電パネルが設置されており、工場で使用される電力の再生可能エネルギーへの切り替えを進めることで、工場から排出される温室効果ガスの削減にも取り組むとしている。