この半導体ニュースのまとめ
・AMDが宇宙グレード版Versal AI Core XQRVC1902のサンプル提供を開始
・強化パッケージを採用し、最長15年間にわたる宇宙ミッションに対応
・米軍規格MIL-PRF-38535のClass Y認定取得に向けた評価を推進
AMDは10月1日(米国時間)、強化された宇宙グレードパッケージを採用したアダプティブSoC「AMD Versal AI Core XQRVC1902」のサンプル提供を、先行アクセス顧客向けに開始したことを発表した。
同製品は、長期運用衛星や有人宇宙船をはじめ、高い信頼性が求められる宇宙ミッションを想定したもの。最長15年間にわたるミッションを支援できるよう設計されており、顧客は今回のサンプルを活用して宇宙機器向けのエンジニアリングモデルを構築できるようになる。
AMDは現在、宇宙飛行用コンポーネントに関する米軍規格「MIL-PRF-38535」のClass Y認定取得に向けて同製品を評価している。Class Yは、長期運用や深宇宙探査などに向けた品質と信頼性を確保するため、試験、スクリーニング、文書化などに高い水準を求める規格となる。
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最長15年間の宇宙ミッションをサポートするように設計されたAMD Versal AI Core XQRVC1902アダプティブSoCのパッケージイメージ。米国軍事規格MIL-PRF-38535クラスYの認定(現在は適合試験実施中)を前提にCLASS Yのロゴが入っている (出所:AMD)
長期ミッション向けにパッケージを強化
宇宙機器に搭載する半導体は、打ち上げ時の振動や衝撃に加え、宇宙空間における温度変化や放射線など、地上とは異なる環境にさらされる。
特に長期運用衛星や深宇宙探査機は、打ち上げ後の修理や半導体の交換が難しい。このため、演算性能だけでなく、長期間にわたって性能と品質を維持できるパッケージや材料、設計が必要になる。
今回のXQRVC1902では、宇宙空間における熱的・機械的ストレスを軽減するため、宇宙グレードのチップコンデンサを採用したほか、十分な設計マージンを確保したパッケージ設計ルールと、強化された有機基板材料を用いたほか、パッケージはリッドレス構造を採用。発生した熱を外部へ放出しやすくすることで熱性能を高めたとしている。
Versalの演算機能を宇宙システムで活用
XQRVC1902は、AMDのアダプティブSoC「Versal AI Core」シリーズに位置づけられる宇宙グレード製品。AIエンジン、DSPエンジン、プログラマブルロジック、Armプロセッサ、オンチップメモリ、高速トランシーバなどを統合し、取得したデータの信号処理や画像処理、AI推論などを宇宙機器上で実行できるようにする。
XQRVC1902は400基のAIエンジンタイル、1968基のDSPエンジン、約197万のシステムロジックセルを備えるほか、アプリケーション処理向けのデュアルコアArm Cortex-A72と、リアルタイム処理向けのデュアルコアArm Cortex-R5Fを搭載する。
衛星や宇宙船で取得したデータを機体上で処理することで、地上へ送信するデータ量を抑えられるほか、通信遅延や帯域幅の制約を受けずに必要な判断を行えるようになる。対象用途としては、地球観測データやセンサ情報の処理、画像認識、通信ペイロード、レーダー信号処理、宇宙機の自律制御などが想定されている。
2197 BGAで既存製品とピン互換
強化パッケージ版XQRVC1902は、既存の商用、防衛、宇宙グレード向けVersal AI Core VC1902が採用する2197 BGAパッケージとピン互換性を持つ。そのため既存のVC1902を使用している開発者は、基板設計やシステム構成などの設計資産を活用しながら、長期宇宙ミッション向けの強化パッケージ版へ移行できるという。
同一のデバイスアーキテクチャを異なる信頼性グレードへ展開することで、地上での機能開発や評価に商用品を使用し、実際の宇宙機には宇宙グレード品を採用するといった開発手法も取りやすくなる。
また、プログラマブルロジックを備えるため、打ち上げ前の設計変更に加え、ミッションの進行や要求の変化に合わせて処理機能を再構成できる点も特徴となる。
Class Y認定に向けた重要なマイルストーン
なお、今回のサンプル提供開始についてAMDでは、MIL-PRF-38535 Class Y認定取得に向けた重要なマイルストーンに位置付けられると説明している。
宇宙機器で取得・処理するデータ量が増加する中、地上へデータを送信してから処理するだけでなく、衛星や宇宙船上で信号処理やAI推論を実行する能力の重要性が高まっており、AMDでは長期運用衛星や有人宇宙船、月探査、深宇宙探査など、信頼性と処理性能の両方が求められるミッションに向け、アダプティブSoCによる高帯域・高スループット処理と、長期ミッションに対応する強化パッケージを組み合わせることで支援を行っていくとしている。