サーブとゼネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ(GA-ASI)が開発を進めている「無人早期警戒機(UAEW : Unmanned Airborne Early Warning)」が、2026年5月に初飛行した。MQ-9Bにサーブ製レーダー「LoyalEye」を搭載した機体だ。早期警戒機を無人化すると、何が変わるのか。その仕組みとメリットを考えてみたい。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

MQ-9B+LoyalEyeの無人早期警戒機、すでに初飛行

2026年5月19日にGA-ASIの飛行試験施設“Desert Horizon”で、同社社有のMQ-9B(登録記号N555TN)にサーブ製のロイヤルアイ(LoyalEye)レーダーを搭載した無人早期警戒機の初飛行が行われた。この時点では「これから7カ月をかけて試験・評価を進める」としていたので、年末までには完了すると思われる。

  • GA-ASIの飛行試験施設で、同社社有のMQ-9Bにサーブ製のロイヤルアイ(LoyalEye)レーダーを搭載した無人早期警戒機の初飛行の様子 出典:サーブ

    GA-ASIの飛行試験施設で、同社社有のMQ-9Bにサーブ製のロイヤルアイ(LoyalEye)レーダーを搭載した無人早期警戒機の初飛行の様子 出典:サーブ

まだそんな状況だから、ロイヤルアイ・レーダーの詳細は明らかになっていない。ただ、外観写真はリリースされているから、多少のことは分かる。

ロイヤルアイ・レーダーは、以前にグローバルアイとの関連で取り上げたエリアイ・シリーズと異なり、レーダー機器をふたつのポッドに分けて、左右の翼下内舷側パイロンに搭載している。このパイロンの許容最大重量は明らかになっていないが、1,000lb(454kg)程度との推定値はある。

そしてMQ-9の全長(11.7m)と比べると、翼下に搭載したポッドの全長は半分以下。側面から撮影した写真を使い、ポッドを機体と並ぶように縦列コピペしてみたところ、機体の全長はポッド2.5個分程度と推定できた。

そこから逆算すると、ポッドの全長は4~5m程度という推算ができる。ただし、AESAレーダーのアンテナ・アレイは平面形になるはずだが、ロイヤルアイのポッドは前後が絞り込まれている。すると、ポッドの前後は空力的成形のためのフェアリングで、レーダー本体はもっと短い可能性が考えられる。

ともあれ、エリアイと比べるとロイヤルアイはだいぶ小さく、アンテナ・アレイの全長は半分以下であると分かる。それを左右に搭載していることから、ポッドはそれぞれ外側に向けてアンテナ・アレイを収容しているのだろう。そもそも、内側向きのアレイを設置しても障害物が多い。

機材を左右に分散して全周カバーを可能にするとともに、各々のポッドを小型軽量化してパイロンの許容最大重量に収める。そうすれば、機体側の手直しは最小限で済む。

早期警戒機を無人化する場合の課題は?

早期警戒機を無人化した場合、レーダーの探知データは地上に送り、指揮管制の機能は地上側に委ねるしかない。機上に管制員や所要の機材を載せる余地はないし、そもそも管制員が乗っていたら、それはもはや無人早期警戒機とはいわない。

では、レーダーから出てきた生データをそのまま、まるごと、地上の管制システムに送るのか。もちろんそういうやり方は考えられるが、空対地のデータ通信能力は限りある資源である。ことに衛星通信を使用することになれば、そのデータ通信のパイプは細くなる。

すると、機上でなんらかのエッジ処理を行う必要が出てくるのではないか。レーダー・スクリーンの画にあたる情報をまるごと送る代わりに、探知目標の位置・高度・針路・速力・識別などに関する情報を送る、といった具合に。

もうひとつの課題として、SWaP(Size, Weight and Power)の抑制がある。既存のMQ-9Bを改造せずにそのまま載せるのが理想だが、そうするとレーダーや関連システムの消費電力は、MQ-9Bが持つペイロード向け発電能力の範囲内に収める必要がある。

MQ-9Bのペイロード向け発電能力に関してはデータがないが、ベースモデルのMQ-9ブロック1については3kWとの情報がある。また、ブロック5で発電能力を強化したとの情報もある。MQ-9Bも同様であろう。

重量については前述の通り、パイロンの許容最大重量に収める必要があるし、サイズも小さいに越したことはない。もちろん、機外に取り付けるものだから空力的な配慮も必要になる。

無人化のメリット、有人早期警戒機との協調運用も?

では、早期警戒機を無人化するメリットとは何か。

人が乗らないから、撃ち落とされても人命の損耗につながらない利点は、他の分野の無人機と同様に存在する。ただ、ベース機のMQ-9Bが決して安価な機体ではないし、搭載するレーダー機器も「失っても諦めがつく」というには高価になりそうではある。

むしろ、長時間滞空が可能になるとか、複数機の分散・協調運用を実現しやすくなるとか、少ない人的所要で運用できるとかいう利点の方が大きいのではないか。それに、大型の有人早期警戒機と比べると、機体を運用するために必要となる地上側のフットプリントを小さくできる利点もある。

また、前回に取り上げたようにサーブの9Air C4I(C4I=Command, Control, Communications, Computers and Intelligence)ソリューションもフットプリントが小さく、移動しやすい設計だから、生残性が向上する可能性を期待できる。有人・無人の早期警戒機を分散展開させて、それらからの探知データを地上の指揮管制システムで集約できる。

ロイヤルアイがエリアイと同じ基本技術を共有していて、同じSバンドの周波数を使用していると仮定すると、協調運用の可能性も考えられる。つまり、エリアイERを搭載する有人のグローバルアイと、ロイヤルアイを搭載する無人のMQ-9B UAEWでチームを組ませて、バイスタティック捜索やマルチスタティック捜索を行える可能性は考えられないか。

データを地上に送って管制を行うのであれば、地上側でデータを集約・突き合わせることでバイスタティック捜索やマルチスタティック捜索を行える理屈である。レーダー反射断面積(RCS : Radar Cross Section)が小さいターゲット、ステルス性が高いターゲットの探知に役立つかもしれない。