この半導体ニュースのまとめ

・TIが商用CAN XLトランシーバ「TCAN6062」を発表
・最大20Mbpsのデータレートと1フレーム当たり最大2048バイトのペイロードに対応
・CAN FD/CAN SICとの下位互換性やTCP/IPトンネリングにより段階的な移行を支援

Texas Instruments(TI)は、商用CAN XL(Controller Area Network extended data-field length)トランシーバ「TCAN6062」を発表した。

最大20Mbpsのデータレートと、1フレーム当たり最大2048バイトのペイロードに対応し、ヒューマノイドロボット、産業用ロボット、ヒューマンマシンインタフェース(HMI)などで増加するデータを高速かつ効率的に伝送できるとしている。

  • TIのTCAN6062 CAN XLトランシーバ

    TIのTCAN6062 CAN XLトランシーバの適用イメージ (出所:TI)

最大20Mbpsと2048バイトのペイロードに対応

産業システムでは、高機能化やインテリジェント化に伴い、モーションコントロール、センサからのフィードバック、診断情報など、ネットワーク上でやり取りされるデータ量が増加している。

特にロボティクス分野では、複数のモーターやセンサを同期させながら、制御データや状態監視データを決められた時間内に伝送する必要がある。従来のCANでは、信頼性や予測可能性を確保できる一方、帯域幅や1フレーム当たりのデータ量に制約があり、データ需要の増加に対応するためにシステムレベルでのトレードオフが求められる場合があった。

TCAN6062は、CANで培われてきた優先度制御を維持しつつ、最大20Mbpsのデータレートと最大2048バイトのペイロードに対応する。優先度の高いメッセージを先に伝送することで、リアルタイム性が求められる制御データを適切なタイミングで届けながら、診断情報などの大容量データも同一ネットワーク上で扱えるようにする。

CAN FDとCAN SICから段階的に移行可能

TCAN6062は、CAN FD(Flexible Data Rate)およびCAN SIC(Signal Improvement Capability)との下位互換性を備えているため、既存のCANベースネットワークを全面的に再設計することなく、段階的にCAN XLへ移行できると同社では説明している。

産業機器は製品ライフサイクルが長く、既存ネットワークや制御機器をすべて一度に置き換えることが難しい場合がある。下位互換性を確保することで、設計資産を維持しながら、データ帯域を必要とするエリアからCAN XLへ移行できる。

また、CAN XLでは通信レイヤを統合し、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)トンネリング技術を用いて、CANネットワーク上でイーサネットを利用することも可能となる。これにより、診断情報、センサデータ、制御トラフィック、OTAアップデートを1つのネットワークで伝送できるという。

これまで用途やデータの性質に応じて複数のネットワークを使い分けていた産業機器において、通信ネットワークを集約できれば、配線やコネクタ、制御回路の削減につながる可能性がある。

SICでネットワークのリンギングを最大80%低減

TCAN6062は、CAN SIC技術を活用することで、複雑なネットワークで発生するリンギングを最大80%低減できるともする。

CANネットワークでは、配線の分岐や多数のノードを接続することで信号反射が生じ、波形品質が低下する場合がある。特にデータレートを高めた場合、信号品質の確保が難しくなるため、配線構成や終端条件を含めた検証作業が複雑化する。SICによってリンギングを抑制することで、ノード数の多いネットワークアーキテクチャの検証を容易にし、高速通信とネットワーク構成の自由度を両立できるとしている。

また、広い入出力電圧範囲に対応するほか、最大±58Vの電圧保護機能を備える。ノイズや過渡電圧が発生しやすい産業環境でも利用できるようにすることで、さまざまな産業アプリケーションにおける設計自由度を高めたともしている。

産業用ロボットから車載安全システムまでを想定

TIでは、TCAN6062の主な用途として、ヒューマノイドロボット、産業用ロボット、HMIシステムなどを挙げている。

産業用ロボットでは、関節部分に搭載されたモーターの制御や位置情報、トルク、温度、振動などのセンサ情報をリアルタイムに伝送する必要がある。ヒューマノイドロボットのように制御対象となる関節やセンサが多いシステムでは、ネットワーク帯域と予測可能性の両方が重要になる。

また、HMIシステムでは、操作情報や機器の状態表示に加え、診断データやソフトウェア更新などを同一ネットワークで扱うニーズが高まっている。CAN XLの大容量ペイロードとTCP/IPトンネリングを活用することで、リアルタイム制御と情報系通信を統合できる可能性がある。

CAN in Automation(CiA)では、CAN XLが産業機器やロボティクスに加え、車載安全システムを含む幅広い用途で、高速かつ信頼性の高いデータ通信を実現できるとしている。

なお、同製品はすでに同社Webサイトにて量産対応数量で提供済みだという。