最初は1回に収めるつもりだったが、いろいろ書いていたらボリュームが増えてしまった。ということで今回は、サーブのグローバルアイ早期警戒機に関連して、機上の指揮管制システムと地上側の9Air C4Iソリューション、それらを組み合わせたシステム構成について取り上げる。→連載「軍事とIT」のこれまでの回はこちらを参照

  • 再び登場、サーブ・グローバルアイの模型。IMDEX Asia展示会にて 撮影:井上孝司

    再び登場、サーブ・グローバルアイの模型。IMDEX Asia展示会にて 撮影:井上孝司

指揮管制システムは機上用と地上用がある

サーブはエリアイ・レーダーとは別に、9Airborne C2(C2 : Command and Control)という指揮管制システム製品を手掛けている。これは早期警戒機のみならず、洋上哨戒機(MPA : Maritime Patrol Aircraft)、洋上監視機(MSA : Maritime Surveillance Aircraft)、SIGINT(Signal Intelligence)収集といった用途にも対応できる、汎用性のある「頭脳」。固定翼機にも回転翼機にも搭載できるとしている。

9Airborne C2が提供する基本的な機能は、飛行経路の計画立案、センサー機材の制御、状況図の生成・表示、救難任務に関わる各種資産の調整、脅威評価や武器割り当てなど。

すると、「眼」としてエリアイ・レーダーを搭載する早期警戒機は、そこに「頭脳」となる9Airborne C2システムを組み合わせたミッション・システムを載せていると考えられる。オペレーター・コンソールに現れる状況図を、9Airborne C2システムが処理・生成するわけだ。

一方、陸上で航空戦の指揮統制を行うツールとして、9Air C4I(C4I : Command, Control, Communications, Computers and Intelligence)がある。これを構成する製品群として、以下のものがある。

  • 9Air TOCCS(Tactical Operation Command and Control System。指揮統制の中枢機能で、作戦計画、任務割当、空域管制、防空作戦などを包括的に支援する)
  • 9Air CRS(Control and Reporting System、管制・報告システムで、センサーからのデータを整理統合して状況図を生成する)
  • 9Air Compact C2(Link 16データリンクを中核として、シンプルでコンパクトな指揮統制機能を提供する)

地上で使用するコンソールは、キーボードとマウスとディスプレイ3画面を備える構成。ただしコンパクト型では形態が変わっているかもしれない。なお、サードパーティ製モジュールによる機能拡張も可能との触れ込みになっている。

いかにもスウェーデンらしいと思うのは、この9Air C4Iを構成する機材一式を標準型ISOコンテナに収めて、必要に応じて移動できるようにしているところ。必要な通信機能を確保できるという前提条件付きだが、戦闘機だけでなく指揮所の方も柔軟に動き回り、存在を嗅ぎつけられにくくするという発想だろう。

  • スウェーデン南西部、ヨーテボリ郊外にある「Aeroseum」でシレッと屋外に置かれていた、用途廃止になった移動式レーダー車。アンテナを立てて後部の扉を開けると、レーダーサイトを店開きできる 撮影:井上孝司

    スウェーデン南西部、ヨーテボリ郊外にある「Aeroseum」でシレッと屋外に置かれていた、用途廃止になった移動式レーダー車。アンテナを立てて後部の扉を開けると、レーダーサイトを店開きできる 撮影:井上孝司

  • 一方、リンシェーピンの空軍博物館(flygvapenmuseum)を訪れると、航空機だけでなく、防空指揮管制に関する展示も行われている。9Air C4Iの御先祖様というべきか 撮影:井上孝司

    一方、リンシェーピンの空軍博物館(flygvapenmuseum)を訪れると、航空機だけでなく、防空指揮管制に関する展示も行われている。9Air C4Iの御先祖様というべきか 撮影:井上孝司

9Airブランドの下で包括的なソリューションを提供

バラバラに製品名を並べるだけでは、これらの関係性が分からない。

全体を包括する「9Air」というブランドがあり、その下に複数の製品やソリューションが入る。それらの関係性を整理すると、こんな形になるようだ。

  • サーブ「9Air」ブランドの製品・ソリューション体系(サーブの資料をもとに編集部作成)

    サーブ「9Air」ブランドの製品・ソリューション体系(サーブの資料をもとに編集部作成)

「じゃあ、そもそも頭の“9”はなんなんだ」という疑問が出てきそうである。あくまで個人的な推測だが、艦載用の指揮管制システムや射撃指揮システムで使用している「9LV」と共通するブランディングを企図したのではないだろうか。

陸・空にまたがる分散可能なシステム構成

さて。当初、航空戦の指揮管制システムは、地上から上空の戦闘機に向けて一方的に指示を飛ばすところからスタートした。その後、戦闘機同士のデータリンクと情報共有が可能になり、地上と複数の戦闘機を一元化したデータ共有網に発展。さらに、地上配備の防空システムやその他の地上部隊、艦艇まで取り込んだマルチドメイン型の指揮管制網に発展する。

すると状況認識の分野では、さまざまなセンサーから入ってくるデータを融合処理したり、トラック管理を行ったりする必要が生じる。それを司っているキー・コンポーネントが、TDFE(Track Data Fusion Engine)である。9Air C4Iを構成する製品群は、このTDFEをコア・コンポーネントとして共用している。

こうしてみるとサーブの早期警戒機、あるいはそれと組み合わせる指揮管制ソリューションは、空中の機体にすべての機能を統合するのではなく、陸・空にまたがり、機能を分掌するシステム構成を企図しているのだと分かる。

空中の眼となるグローバルアイは比較的小型の機体であるし、地上側の指揮統制システムも、目立つ大がかりな不動産を構築しなくて済む設計。フットプリントが大きく目立ちやすい資産を作るのを避けて分散構成にする思想は、スウェーデン流の航空戦のやり方と符合しているといえそうだ。

そして、機上ですべて完結させずに陸の管制システムと空などのセンサー機材で機能を分掌する形態があれば、面白い応用ができるかもしれない……? というところで、話は次回に続く。ベースになる材料が不足しているので「個人的妄想」の域を出ないのだが。

  • 冒頭のグローバルアイと並べて模型展示を実施していた。スウォードフィッシュ洋上哨戒機。翼下にRBS15空対艦ミサイルを搭載した状態であることから、対艦打撃も考慮に入っているのだと分かる。ただしそれが有用性を発揮するには、敵艦の位置が分かっていなければならない。すると指揮統制システムが重要になる 撮影:井上孝司

    冒頭のグローバルアイと並べて模型展示を実施していた。スウォードフィッシュ洋上哨戒機。翼下にRBS15空対艦ミサイルを搭載した状態であることから、対艦打撃も考慮に入っているのだと分かる。ただしそれが有用性を発揮するには、敵艦の位置が分かっていなければならない。すると指揮統制システムが重要になる 撮影:井上孝司