ヤマハ発動機と半導体(GPU)IPやAIソリューションを提供するディジタルメディアプロフェッショナル(DMP)は5月10日、業務資本契約を締結し、DMPが発行する第三者割当増資を引き受けることを明らかにした。

  • DMPとヤマハ発動機

    同日開催された記者会見で笑顔で握手を交わすヤマハ発動機の上席執行役員 先進技術本部長の藤田宏昭氏(左)とDMP代表取締役社長 CEOの山本達夫氏(右)

今回の業務資本契約の締結の目的について、ヤマハ発動機の上席執行役員 先進技術本部長の藤田宏昭氏は、「自社製品の知能化技術(AI)の強化を図るため」と説明。両社は2018年よりヤマハ発動機からの開発委託という形で協業してきたが、それを通じて、ここまでの間に、DMPの有するAIに対する知見、半導体に関するハードウェアのノウハウなどが、ヤマハ発動機が今後、成長を続けていくためには必要であるとの判断に至り、DMPに開発リソースなどの拡充を図ってもらうことを目的に、今回の契約に至ったとしている。

  • DMP

    AI関連の企業の多くは、出自がソフトウェア分野からであり、開発したアルゴリズムをハードウェアに落とし込んで、かつ性能を引き出す、というノウハウを持つところは多くない。DMPはもともとがGPU IPのライセンスビジネスを主としてきており、当然のことながら半導体設計などに関するノウハウを有しており、その点がヤマハ発動機の目に留まったという

藤田氏は、「AIアルゴリズム、ソフトウェア、そして最終的にそれらをハードウェアに落とし込むまで幅広いノウハウを有するのがDMP。我々の提供する製品は、小型であったり低価格なものが多いので、最終製品としてリーズナブルなものでなければいけない。そうした意味で、低消費電力化や小型化が可能なDMPの技術力は魅力的である」としており、両社の関係性をベストパートナーであると評している。

  • DMP

    DMPのAI製品ポートフォリオ。IPレベルから、それを実装したFPGAモジュール、そしてそれを活用するためのソフトウェアまで幅広く取り揃えている

そのため実際の協業では、AIを活用した新しい価値を提供できる製品の提供に向け、AIの技術開発というレベルから実際の製品開発におけるAIアルゴリズムのハードウェアへの落とし込みまで幅広いプロセスでの協業を目指すことになるという。

  • ヤマハ発動機
  • DMP
  • 資本業務提携により、AI技術そのものの開発から、一貫してAIを搭載したコンポーネント(製品)、それを搭載したシステムまで協力して開発することが可能となり、DMPが得意とする小型・低消費電力に向けたチューニングなども強力に推し進めることができるようになる

現在、強化を図ろうとしている分野は以下の3点

  • 低速度領域における自動・自律運転システムの開発
  • ロボティクス技術を活用した農業領域などにおける省力化・自動化システムの開発
  • モビリティ製品全般に向けての先進安全運転支援システムの開発

ヤマハ発動機では、これらの分野のどれかに対し、2021年には協業の成果物を製品化したいとしている。それを踏まえると、DMPは組込機器向け低消費電力GPU IPや、XilinxやIntel(旧Altra)のFPGAベースのAIモジュールなどを提供しているが、第1弾製品では専用のASICではなく、FPGAにAIアルゴリズムを搭載した形での提供となる可能性が高そうであるが、「数が相応に出ることが分かれば、ASICを作る可能性もなくはない」(DMP代表取締役社長 CEOの山本達夫氏)ともしており、製品と市場の需要次第で、柔軟な対応を図っていくつもりとしている。 なお、低速度領域における自動・自律運転システムとしてはヤマハ発動機の主軸である二輪車のほか、ボートなどの船舶も範疇に入ってくるほか、農業領域などにおける省力化・自動化システムにはドローンや無人ヘリ、ニュージーランドの企業に出資したり、NVIDIAと協業して進めている農業用UGV(無人地上車両)などが含まれており、ドローンやUGVといった分野はAIの活用が進んでいることから、そうしたあたりが第1弾製品として選ばれる可能性が高そうである。

  • ヤマハ発動機

    協業によるAI適用製品を搭載する事業分野のイメージ。すでにAI化が進んでいる分野では、より高度なことを実現するために、まだそれほどAI化が進んでいない分野では他社に先んじて高い付加価値の製品を提供するために、今回の提携が決定された