この半導体ニュースのまとめ

・パナソニック環境エンジニアリングが半導体・電子デバイス工場向けに排水処理・資源回収事業を開始
・ユニット型金属回収装置「RARELOOP」で廃液中の銅を回収し、産廃処理費削減と資源循環を支援
・難処理廃液の凝集・分解技術、後工程向けレジスト剥離液、ガラス基板向け銅めっきプロセスも展開

半導体工場向けに排水処理・資源回収事業を開始

パナソニック HVAC & CCのグループ会社で、水・空気・土・エネルギーの供給・浄化・再生事業を手掛けるパナソニック環境エンジニアリングは7月21日、半導体や電子デバイス工場向けに「排水処理・資源回収事業」を開始すると発表した。

同事業では、金属回収と排水処理に加え、半導体の生産工程で必要な薬液、さらに次世代半導体パッケージで注目されるガラス基板向けの銅めっきプロセスまでをカバーする。

AI技術の急速な普及を背景に、半導体や電子デバイス工場の新設・拡張が世界規模で進んでいる。一方で、製造工程で使用される剥離液などの薬液使用量の増加、それに伴う排水処理の高度化、産業廃棄物処理コストの増大が課題となっている。

同社はこれまで、リチウムイオン電池や液晶パネル工場に対し、排水処理設備やレジスト剥離工程に用いる薬液の供給・リサイクル技術を提供してきた。今回、そこで培ったノウハウと独自技術を組み合わせ、半導体・電子デバイス工場の「入口」となる薬液供給と、「出口」となる排水処理・金属回収の双方にソリューションを提供する。

  • 出口となる排水処理・金属回収のソリューションも展開

    入口である薬液の供給に加え、出口となる排水処理・金属回収のソリューションも展開を開始する (出所:パナソニック、以下すべて同様)

ユニット型金属回収装置「RARELOOP」を開発

事業の中心となるのが、「ユニット型金属回収装置(RARELOOP、レアループ)」である。

半導体やプリント基板の製造工程で発生するエッチング廃液には、多くの銅が含まれている。しかし、さまざまな化学物質が混入しているため分離処理が難しく、従来は大型プラントシステムを導入するか、そのまま産業廃棄物として処分する必要があった。

RARELOOPは、電解技術を用いて廃液中の銅イオンを再利用可能な固形金属として回収する装置をパッケージ化したもの。2026年4月から発売しており、従来の大型プラントシステムと異なり、限られた工場スペースにも設置しやすいユニット型とした点を特徴とする。

これにより、初期導入のハードルや運用時のメンテナンスコストを低減できるほか、回収した銅を資源として売却することで、産業廃棄物処理費の削減にとどまらない収益創出にもつなげられるという。

同社は今後、RARELOOPで培った電解・回収技術を進化させ、銅だけでなく、銀、スズ、ニッケルといった希少金属回収への展開も計画している。

  • ユニット型金属回収装置のイメージ

    金属回収槽とユニット型金属回収装置のイメージ

難処理廃液を凝集・分解技術で処理

半導体や電子デバイス工場の排水では、ナノ粒子やスラリーを含む「難凝集廃液」、ならびにアミンなどの有機窒素を含む「難分解廃液」への対応も課題となる。

従来の排水処理では、難凝集成分の分離に多量の薬品を投入する必要があり、難分解物質の処理にも多くの工程と時間を要していた。その結果、設備の大型化や処理コストの増大につながっていた。

これに対し、同社は独自の電気化学反応技術を応用し、薬品をほとんど使用せずに、難凝集廃液中のナノ粒子やスラリーを効率よく凝集・分離できる技術を確立した。薬品使用量を削減することで、排水処理プロセスの低コスト化に貢献する。

また、難分解廃液については、独自の酸化還元促進機構と次亜塩素酸生成技術を組み合わせることで処理を高速化し、装置の小型化を実現したとしている。

  • 凝集技術と分解技術の仕組み

    凝集技術と分解技術の仕組み

後工程向けレジスト剥離液も開発

同社は、半導体後工程向けのレジスト剥離液も開発した。

半導体のパッケージング工程では、回路形成時に保護膜であるレジストを使用するが、工程完了後には特殊な化学品で完全に除去する必要がある。近年は半導体回路の微細化に伴い、レジストの完全除去が難しくなり、薬液使用量の増加や処理時間の長期化が課題となっている。

同社は、液晶パネル向けで培った薬液設計ノウハウを応用し、環境負荷が低く、長寿命で、低温かつ高速処理が可能な独自のレジスト剥離液を開発した。薬液の交換サイクルを延ばし、使用量の低減と環境課題への対応を両立する狙いだ。

ガラス基板向け銅めっきプロセスを確立

さらに、次世代の先端パッケージングのコア材料として注目されるガラス基板向けに、独自の銅めっき技術も確立した。

AI半導体の高性能化に伴い、現在主流の樹脂系材料では、熱や応力による反りや歪みが課題となっている。ガラス基板は、こうした課題を抑える次世代材料として期待されているが、高精度に開けられた貫通穴(スルーホール)の内壁に銅を強固に密着・成膜させる工程は難易度が高い。

同社は、ガラス表面に金属酸化物中間層を施すことで、銅を強固に密着させるプロセス技術を開発。スルーホールの内壁まで均一に銅をめっきできるほか、パッケージ基板の大型化にも対応するという。

  • 銅めっきしたガラス基板のサンプル

    レジスト剥離液の効果と銅めっきしたガラス基板のサンプル

資源循環と環境負荷低減を半導体工場に提案

パナソニック環境エンジニアリングは、半導体や電子デバイス分野を成長領域と位置付けている。今回開始する排水処理・資源回収事業では、薬液供給、排水処理、金属回収、ガラス基板向け銅めっきプロセスを組み合わせることで、高度化する生産課題と資源循環ニーズに対応する。

半導体工場では、先端プロセスや先端パッケージングの進展に伴い、使用する化学物質や排水の種類も複雑化している。単に排水を処理するだけでなく、廃液から有価金属を回収し、薬液使用量を削減し、環境負荷を抑えながら生産性を高める取り組みが重要になっている。

同社としては、同事業を通じて、半導体工場の資源循環の高度化と環境負荷低減を推進し、カーボンニュートラルおよびサーキュラーエコノミーの実現に貢献していく考えだ。