この半導体ニュースのまとめ

・Micronが2035年までの米国投資計画を2500億ドル超へ拡大し、米国内DRAM生産比率40%を目指す
・ニューヨーク州クレイの新ファブで初のコンクリート打設を実施し、当初計画より前倒しで建設が進展
・GlobalWafersのテキサス州300mmシリコンウェハ拠点に5億ドルを支援し、10年間の供給契約で材料調達を強化

2035年までの米国投資を2500億ドル超へ拡大

Micron Technologyは7月9日(米国時間)、AI時代における半導体メモリ需要の拡大を背景に、2035年までの米国におけるファブおよび技術関連投資計画を従来の2000億ドルから2500億ドル超へ引き上げることを発表した。

同社は、この投資拡大は、長期的に自社のDRAM生産の40%を米国内で行うという目標を支えるものであると説明している。AIデータセンターや高性能コンピューティング(HPC)、車載、産業、防衛などの用途では、先端DRAMやNANDなどのメモリ/ストレージ需要が拡大しており、米国内での供給能力確保は経済安全保障やサプライチェーン強靭化の観点からも重要性を増している。

MicronのSanjay Mehrotra会長兼社長兼CEOは、データとメモリが現代経済の基盤になっているとした上で、同社が米国投資を2500億ドル超へ拡大することで、世界で最も先進的なメモリ製造を米国にもたらし、国内半導体サプライチェーンを強化していく考えを示した。

ニューヨーク新ファブで初のコンクリート打設

同社は同日、ニューヨーク州クレイで建設を進める新ファブにおいて、初のコンクリート打設を実施したことも発表した。これは、現地での造成工事から建屋の垂直方向の建設へ移行する節目となる工程で、当初計画より四半期以上早い進捗だという。

  • コンクリート打設の記念プレート

    Micronのニューヨーク工場建設予定地に設置されたコンクリート打設の記念プレート (出所:Micron)

この新ファブ建設は2026年1月に着工しており、6カ月足らずで主要な初期造成工事を完了したこととなる。このニューヨーク州における新ファブ建設プロジェクトは、最大4棟のファブを含む大規模な半導体製造拠点となる見通しで、ニューヨーク州内ではMicronの直接雇用9000人を含む5万人規模の雇用創出が見込まれている。米国内全体では、アイダホ州、バージニア州を含む投資も併せると9万人超の雇用創出が期待されるともしている。

地元企業に6億7500万ドル規模を発注

すでに新ファブの初期造成工事段階において、同州内の施工会社やサプライヤ、下請け企業などに契約総額の半分以上となる約6億7500万ドル規模の発注が行われたとするほか、現場で働く作業員の80%超がニューヨーク州民としており、建設段階から地域経済への波及効果が出始めているとしている。

また、施設の建設ピーク時には数千人規模の熟練技能者が必要になると同社では説明しており、労働組合、実習制度、地域の訓練プログラムの卒業生、専門工事会社、サプライヤなどに広範な機会をもたらすともしている。

アイダホ州とバージニア州でもメモリの生産を拡大

建設が進められているニューヨーク州の拠点は、Micronの米国投資計画の中核に位置付けられるが、それと並行する形でアイダホ州およびバージニア州でも投資が進められている。

アイダホ州の投資については、最初のファブが2027年半ばに初期のウェハ生産が予定されており、2棟目についても2028年後半の初期のウェハ生産が見込まれている。一方のバージニア州では2026年より1α nm DRAMプロセス世代を採用したDDR4の初期生産を開始しており、自動車、産業、医療、航空宇宙・防衛など、長期供給が求められる顧客用途を支えるとしている。

Micronは、AI時代の先端メモリ需要に対応する一方、市場環境に応じて供給計画を適切に調整する規律ある投資姿勢を維持するとしている。

GlobalWafersに5億ドルを支援、300mmウェハ供給を確保

Micronは同日、米国半導体サプライチェーン強化に向け、最大30億ドルを投じる戦略的投資計画も発表した。その一環として、GlobalWafersに対し、テキサス州シャーマンに建設される300mmシリコンウェハ製造施設「GlobalWafers America」の開発・製造能力拡張を支援するため、5億ドルの戦略的資金支援を行う計画を示した。

両社はあわせて10年間の供給契約も締結する予定で、Micronは長期製造計画を支える重要な原材料である300mmウェハの供給能力にアクセスできるようになる。Micronでは、重要材料の安定調達は同社の長期成長と技術ロードマップを支えるうえで不可欠だとしている。

GlobalWafersは、米国のCHIPS for America Program(CHIPS法)の支援を受けており、米国内で先端300mmウェハを生産できるシリコンウェハサプライヤとされている。今回の支援により、Micronは米国内における半導体メモリの製造能力拡大だけでなく、その上流に位置する材料供給の強靭化にも踏み込むことになる。

次世代ウェハ技術でも協業を検討

また、MicronとGlobalWafersは、製造能力拡張や長期供給契約に加え、将来の半導体製造要件に対応する次世代ウェハ技術やプロセス革新についても協業を検討する模様だ。

AIやHPC向け先端メモリ分野では、プロセスの微細化や3次元構造化、高速・低消費電力化が進むにつれ、ウェハ品質や材料特性の重要性が高まっている。先端DRAMやNANDの製造では、ウェハの品質、欠陥管理、供給安定性が歩留まりや量産計画に直結するため、材料サプライヤとの長期的な協業が競争力を左右する要素となる。

Micronの調達責任者であるBen Tessone氏は、GlobalWafersの米国ウェハ製造拠点への戦略的投資について、供給保証を高め、主要サプライヤとの協業を深め、米国の半導体サプライチェーンおよび製造インフラの拡大を支えるものだと説明している。

AI時代の米国メモリ供給網を構築

今回の一連の発表は、Micronが米国内でメモリ生産能力、材料調達、地域サプライチェーン、人材育成を一体的に強化しようとしていることを示すものとなる。

AIデータセンターでは、GPUやAIアクセラレータの性能向上に伴い、HBM、DDR、NAND、SSDなどのさまざまなメモリ/ストレージ需要が急速に拡大している。メモリは、AIシステムの演算効率、消費電力、システム全体の性能を左右する重要部品であり、先端メモリの安定供給はAIインフラ競争の基盤となる。

Micronは、ニューヨーク、アイダホ、バージニアでの生産投資に加え、GlobalWafersとの協業を通じて300mmシリコンウェハの米国内供給を確保することで、DRAMの米国内生産比率40%という長期目標に向けた体制を整えることとなる。米国における先端メモリ製造と上流材料供給を結び付ける今回の投資は、AI時代の半導体サプライチェーン再構築に向けた重要な取り組みといえそうだ。