この水素エネルギー関連ニュースのまとめ

・田中貴金属工業が500kW純水素燃料電池設備「TANAKA H2 Nexus」の稼働を開始
・東芝製「H2Rex」100kW機を5台導入し、最大稼働時には湘南工場の使用電力の34%程度を賄うことが可能
・水素関連技術の供給元であると同時に利用者として知見を蓄積し、水素社会の実現と脱炭素化に貢献

国内最大級500kWの純水素燃料電池設備を導入

田中貴金属工業は7月9日、神奈川県平塚市の田中貴金属工業湘南燃料電池発電所に、国内最大級となる500kWの純水素燃料電池設備「TANAKA H2 Nexus(タナカ エイチツー ネクサス)」を導入し、7月8日より稼働を開始したことを発表した。

  • 「TANAKA H2 Nexus」

    田中貴金属工業湘南燃料電池発電所に新設された燃料電池発電設備「TANAKA H2 Nexus」の外観 (出所:田中貴金属)

今回の設備導入は、同社が水素関連技術の供給元であると同時に、自ら水素エネルギーの利用者としてその活用に取り組むものとなる。

田中貴金属では、燃料電池発電所の実運用を通じて、水素利用に関する知見やノウハウを蓄積し、今後の技術開発や事業拡大につなげるとともに、水素エネルギーの社会実装を推進していく考えだ。

最大稼働時に湘南工場の使用電力34%程度を供給可能

「TANAKA H2 Nexus」には、東芝製の純水素燃料電池システム「H2Rex」100kW機が5台導入された。定格出力は500kWで、三相3線AC210/220Vに対応する。総合効率は低位発熱量基準(LHV)で95%、設計耐久性は約8万時間としている。

  • 「H2Rex」

    東芝製の純水素燃料電池システム「H2Rex」 (出所:田中貴金属)

同設備は純水素を活用して発電することで、最大稼働時には近隣に位置する湘南工場で使用する電力の34%程度を燃料電池発電で賄うことが可能だという。将来的には、CO2排出量削減と安定したエネルギー供給の両立を目指す。

また、港湾部などの塩害地域でも設置できる重耐塩仕様のほか、ブラックアウト下でも稼働可能な自立運転機能を備える。負荷追従発電における追従スピードを従来比5倍とする最適EMS(エネルギーマネジメントシステム)も搭載しており、工場などの電力需要変動に対応しやすい構成としている。

燃料電池用貴金属触媒の知見を実運用へ

田中貴金属は1980年代より、貴金属加工技術を基盤として燃料電池および水素関連分野の研究開発を進めてきた。現在では、燃料電池用貴金属触媒で世界トップクラスの供給実績を持つほか、水電解用触媒、ガス改質触媒、貴金属めっき電極、水素透過膜など、水素社会の実現を支える各種技術の開発・製造を手掛けている。

今回の設備導入は、こうした燃料電池関連技術の研究開発をさらに発展させる取り組みとなる。従来は材料や部材を供給する立場で水素関連産業に関わってきた同社が、自ら水素エネルギーを使用することで、実際の運用現場で生じる課題を把握し、今後の技術開発や事業展開に反映させることを狙う。

製造業では、脱炭素化と安定した電力供給の両立が重要なテーマとなっている。特に、電力を多く使用する工場では、再生可能エネルギーや水素、蓄電池、燃料電池などを組み合わせたエネルギーマネジメントの高度化が求められており、今回の設備はそうした取り組みの一環と位置付けられる。

水素社会の実装に向けた実証拠点として活用

今回の「TANAKA H2 Nexus」は、単なる自家発電設備にとどまらず、水素関連技術の実運用拠点としての意味合いも持つ。田中貴金属は、燃料電池用触媒や水電解用触媒など、水素エネルギーの供給・利用に関わる幅広い技術を展開しており、自社設備で得られる運用データや課題は、今後の材料開発や顧客提案に活用できる可能性がある。

水素エネルギーは、発電時にCO2を排出しないエネルギー源として期待されている一方、製造、輸送、貯蔵、利用の各段階でコストやインフラ、運用ノウハウの蓄積といった課題も残されている。製造現場での実利用を進めることで、こうした課題を具体的に把握し、設備メーカー、材料メーカー、自治体、エネルギー供給事業者などが連携して改善を進めることが重要となる。

田中貴金属としては、今回の設備稼働を通じて、水素関連技術の研究開発で培った知見を活用し、水素社会の実現と脱炭素化の推進に貢献していく考えだ。