この半導体ニュースのまとめ

・イーディーピーが窒素含有量0.5ppm以下の低窒素ダイヤモンド基板・ウェハを発売
・1mm角から30mm角までの基板および1インチウェハに対応し、(100)、(110)、(111)面を用意
・半導体デバイス、量子デバイス、青色・紫外光向け光学部品などへの応用を見込む

窒素含有量0.5ppm以下のダイヤモンド基板を製品化

産業技術総合研究所(産総研)発ベンチャーのイーディーピー(EDP)は、窒素含有量を0.5ppm以下に低減したダイヤモンドデバイス開発用の低窒素基板・ウェハを発売したことを発表した。

同社は、大型で高純度なダイヤモンド単結晶を製作できる点を強みとしており、これまでその技術を活用する形でダイヤモンドデバイス開発用の基板、ウェハ、エピ基板、ラボグロウンダイヤモンド(Laboratory Grown Diamond:LGD、人工宝石)製造用種結晶、光学部品などを展開してきた。

ダイヤモンドは優れた半導体特性を持つ材料であり、究極の半導体材料とも呼ばれ、大電力制御用パワーデバイスや高周波高出力デバイスへの応用が期待されている。こうした用途では、大型ウェハを用いたデバイス製造が想定されるため、同社は設立当初からダイヤモンド単結晶の大型化に取り組んできており、2025年4月には1インチウェハを製品化したほか、2026年5月には2インチウェハ製造に向けたモザイク結晶の開発に成功したことも発表している

一方、これまで製品化してきたダイヤモンド単結晶は、一部を除き窒素含有量が最大8ppmほどであったが、半導体デバイス開発では、窒素含有量が多いことで応用範囲が制限される場合があり、ユーザーからは窒素含有量の少ないダイヤモンド基板への要望が寄せられていたという。

デバイス開発で多く用いられる(100)基板にも対応

イーディーピーでは、すでに窒素含有量0.5ppm以下の結晶面(111)の基板を販売していたというが、デバイス開発で最も多く利用される(100)基板については、これまで低窒素基板を販売していなかったという。

背景としては、ダイヤモンドの成長時に反応ガス中へ窒素を若干含有させることで、成長が安定し、多結晶などの欠陥生成を抑制できるほか、成長速度を高められるという製造上の理由があったためで、同社では、安定した特性を得るため、一定量の窒素を含む形で製品化していたという。

しかし、近年、実用化に向けてダイヤモンドデバイス開発の用途が多岐にわたるようになってきており、そうした開発ニーズに合わせた材質を用意することが重要な課題となっていたとのことで、今回の低窒素基板・ウェハの製品化は、そうしたニーズに対応することを目的としたものとなるとする。

1mm角から30mm角、1インチウェハまで展開

新たに発売する低窒素基板・ウェハは、ダイヤモンドデバイス開発向けに提供されるもので、サイズは1mm×1mmから30mm×30mmまでの基板、および1インチウェハが用意される。また、厚さは0.03mmから4mmまで対応するとしている。

結晶面は(100)、(110)、(111)が用意されるが、(111)面および(110)面の基板についてはサイズに制限があるとしている。また、指定がない場合は3°のオフ角を有する仕様となる。窒素含有量は0.5ppm以下とする。

  • 10mm×10mmおよび15mm×15mmの従来ダイヤモンド基板と低窒素ダイヤモンド基板

    10mm×10mmおよび15mm×15mmの従来ダイヤモンド基板と低窒素ダイヤモンド基板 (出所:イーディーピー)

同社によると、パワーデバイスや高周波デバイス向け基板としては、従来品と同様に使用できるとしている。窒素含有量が少ないため、疑似n型としての特性は低下する一方、耐電圧特性は従来品と同等だという。

量子デバイスや光学部品への応用も視野

また、低窒素化に伴い量子デバイス関連の開発においは、従来品に比べてN-Vセンターの含有率が低くなるとしている。N-Vセンターはダイヤモンド中の窒素と空孔に由来する欠陥中心で、量子センサや量子情報デバイスなどで活用が検討されている一方、用途によっては窒素含有量の制御が重要となる。

さらに、光学部品として使用する場合には、500nm以下の波長における透過率が向上しており、青色および紫外光の透過性が改善されているという。紫外光や青色光を用いる光学用途では、基板材料の透過率が性能に影響するため、低窒素基板の提供は光学部品分野での応用拡大にもつながる可能性がある。

その他の特性として、熱伝導率は2000W/m・Kで、これまでの基板と同様に取り扱うことが可能だとしている。ダイヤモンドは高い熱伝導率を持つ材料であり、パワーデバイスや高周波デバイスにおける放熱用途でも注目されている。

ダイヤモンド半導体材料の開発ニーズに対応

ダイヤモンドは、ワイドバンドギャップ半導体材料の中でも高い絶縁破壊電界や熱伝導率を持つことから、次世代パワーデバイス材料として研究開発が進められている。実用化に向けては、結晶品質、ウェハサイズ、欠陥制御、不純物制御、エピタキシャル成長、加工技術など、複数の要素技術を高める必要がある。

イーディーピーは、これまで大型単結晶ダイヤモンドの製造技術をベースに、研究用基板や1インチウェハなどを展開してきた。今回、低窒素の(100)基板を含む複数サイズの基板・ウェハを製品化したことで、半導体デバイス開発や量子デバイス開発、光学部品開発など、用途ごとの材料要求に対応しやすくなる。

ダイヤモンド半導体は、SiCやGaNに続く次世代半導体材料候補として期待される一方、実用化には用途に応じた材料を供給できる体制が構築されることも重要になってくる。今回の同社による低窒素基板・ウェハの発売は、研究開発段階にあるユーザーが用途に応じた結晶面、サイズ、窒素含有量の選択を可能とし、研究開発を加速させる取り組みにつながることが期待される。