Agilex 9 Direct RFの新ハイエンド「AGRW039」が登場

Alteraは6月8日、International Microwave Symposium(IMS2026)にて同社のAgilex 9 Direct RFのハイエンド製品として「AGRW039」を追加した事を発表したが、これに関する説明がオンラインの形で6月30日に開催されたので、この内容をご紹介したい(Photo01)。

  • が説明を行ったJohn Sotir氏

    Photo01:左が説明を行ったJohn Sotir氏(GM, Aerospace, Defense & Government Systems Business Unit)。右はおなじみSam Rogan氏(VP&GM, APJ Sales兼Altera Japan社長)

基地局や航空宇宙・防衛向け信号処理に対応するDirect RFシリーズ

Alteraは2023年1月からAgilex 9 Direct RFシリーズを提供している。もっと正確に言えば、このRF向けのFPGAはStratix 10世代から存在しているのだが、2023年1月にAgilex 3/5/7/9というラインナップ分けを行っており、ここで「AGRW014/027」と「AHRM027」という3製品が発表される形になった(他にStratix 10 1SA28という製品もある)。

このDirect RFというのは要するに携帯電話の基地局とか航空宇宙用途(例えばレーダー)の信号をそのまま処理できる、という意味で付けられた名前であるが、今回のテーマは航空宇宙・防衛・政府機関向けである(Photo02)。

  • 米国だけでなく日本でももちろんこのマーケットが急成長を見込んでいる

    Photo02:米国だけでなく日本でももちろんこのマーケットが急成長を見込んでいる(欧州も同じく)という話で、これは昨今の動向を見れば明白である

ドローン対策などで高まる防衛・政府機関向けの処理性能要求

その防衛・政府機関向けの要件がこちらであるが、昨今の動向としてより高い処理性能が、同じ消費電力枠の中で求められるようになってきたとしている(Photo03)。

  • 現在は地上および艦艇向け

    Photo03:ちなみに現在は地上および艦艇向けで、航空機や衛星向けに関しては、何しろ新プロセスということで将来的には提供したいが、現時点ではEMP耐性などを評価中との事だった

一例として挙げられたのがドローン対策である。レーダーを例にとっても、従来に比べて数が圧倒的に多いし、(説明では語られなかったが)RCS(Rader Cross Section:レーダー反射面積)も航空機やミサイルなどに比べてずっと小さいから、これらへの対策としてより高い信号処理能力が必要になるというわけだ。

AGRW039はAgilex 9 Direct RFシリーズの最上位製品に

現在こうした防衛・政府機関向けにはAgilex 5/7/9が提供されている訳だが(Photo04)、今回発表のAGRW039はAgilex 9 Direct RFシリーズの最上位製品となる(Photo05)。

  • alt属性はこちら

    Photo04:Stratix 10も提供中だが、一応Agilexを前面に押し出している結果がこういうリストになる

  • 性能比較の相手がStratix 10

    Photo05:性能比較の相手がStratix 10というのはちょっとずるいと思う

従来のAGRW014/AGRW027/AGRM027との主な違いは

  • 演算性能の大幅強化
  • 消費電力の低減
  • DDR5/LPDDR5への対応

といった事になる。

Intel 7の採用でロジック、メモリ、DSPを大幅強化

このうち性能に関して言えば、Product Tableがすでに公開されているが、表1に主要な数字をまとめてみた。

  • 主要な数字

    表1:主要な数字

ここで従来のWide-Band向けのハイエンド(Stratix 10 1SA28)と現時点でのハイエンド(Agilex 9 AGRW027)、そして今回発表の新ハイエンド(Agilex 9 AGRW039)を比較してみると、LEの数もメモリ量もDSPの数も、いずれも大きく増加している(逆に言えばStratix 10 1SA28とAgilex 9 AGRW027は大きくは変わらない)。ただ性能は兎も角動作周波数は世代ごとに小さくなっている。というのはStratix 10 1SA28はIntel 14nm、Agilex 9 AGRW027はIntel 10nm、そしてAgilex 9 AGRW039はIntel 7での製造となっている。Intel 7というのはIntel 10nm Enhanced SuperFinの改良型なので、Intel 10nm(正確にはIntel 10nm+と思われる)→10nm SuperFin→10nm Enhanced SuperFin→Intel 7とマイナーバージョンアップながら3世代後のものであり、絶対性能や性能/消費電力比が大きく改善されている。

Photo05で言えば“Agilex Core Fabric”の部分がプロセスの改良により大きく性能を引き上げている訳だ。もっともIntel 10nmとIntel 7ではトランジスタ密度はさして大きな違いはない。なので、これだけLEやらメモリやらが増えている分、ダイサイズは相応に大型化しているものと思われる。

ADC/DAC仕様は従来製品と同等、Tileの詳細は明言されず

またADC/DACについてはこの3製品でまったく違いが無い。そこでSotir氏に“ADC/DACのTileは同一(Identical)なものか? それとも仕様が一致しているだけで違うTileなのか?”と確認したが、「同じ技術が利用されている」という玉虫色の返事であった。

Agilex 7 Mシリーズとのデザイン互換性にも注目

ところでこのPhoto05のスライドであるが、このAGRW039に関するBlog entryではこんなスライドが掲載されている(Photo06)。

  • Made in the USA on Intel 7 Process

    Photo06:“Made in the USA on Intel 7 Process”というあたりが何とも

Agilex 7 Mシリーズとデザイン互換、というのはちょっと面白い話であり、逆に言うと既存のAgilex 9 AGRW027とは互換でない可能性がある訳で、どうしてこうなったのか聞いてみたかった。

AGRW039開発ボードも用意、Direct RFエコシステムを拡充

説明ではすでにAgilex 9 Direct RFのエコシステムが立ち上がっているとされ(Photo07)るが、ここに搭載されるのはAGRM027である。ただAltera自身、DK-DEV-4ARF-FA-AというAgilex 9 AGRW039の開発ボード(Photo08,09)を用意している事がすでに明らかにされている。

  • iWaveは日本でも製品を展開

    Photo07:このうちiWaveは日本でも製品を展開しているとされた

  • FPGAがソケット形状になっている

    Photo08:FPGAがソケット形状になっているのが興味深い

  • Photo09:DDR5 SODIMM×2、HPSドーターボード、QSPI Flshドーターボード、Clockドーターカード(A-Tile用)、20GHzバラン×4などが搭載されている

    Photo09:DDR5 SODIMM×2、HPSドーターボード、QSPI Flshドーターボード、Clockドーターカード(A-Tile用)、20GHzバラン×4などが搭載されている