Intel子会社のAlteraは日本時間の2月12日、LinkedIn Eventとして[「Innovators Forum: Building the Future with Partners and Customersを開催した(視聴にはLinkedInのアカウントが必要)。この内容を簡単にご紹介したい。
2024年3月にAlteraとして独立子会社になる事が発表された旧PSG(Programmable Solution Group)。2024年9月にはAltera Innovators Dayをサンノゼで開催しており、基調講演やセッションの内容はYouTubeで視聴できる。その意味では別にこれが初めてのイベントという訳ではない筈なのだが、まだ知名度的に足りないと判断したのか、改めてAlteraのポートフォリオを紹介するものとなった。
ちなみにその昨年のAltera Innovators Dayで同社が言い始めたのが「FPGAi」、要するにFPGAとAIの融合であって、今回も冒頭でその言葉が出て来た(Photo01)。
もっとも今回はあまり細かい話は無く、まずは言葉を記憶に留めておいてほしいという事かと思われる。
まずはAlteraの提供する全製品ラインナップ(Photo02)が示され、次いでAgilex 9からAgilex 3までの説明が簡単に行われた(Photo03~06)。この際に、Agilex 3が今年第2四半期に投入されると明らかになったのが今回のセッションでの新情報の1つ目である。
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Photo03:現在はAgilex 9 Direct RFシリーズのみがラインナップされている事もあって、Mixed Signalを前面に打ち出している
またAgilexユーザーの例としてとしてTejas NetworksのArnob Roy氏(Photo07)やCritical LinkのThomas Catalino氏(Photo08)によるAgilex製品の自社ソリューションへの適用が紹介された後で、開発ツールとしてQuartus Prime(Photo09,10)およびFPGA AI Suiteについても触れ、Edge Inference向けにAlteraのFPGAが良いソリューションになると強調した。
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Photo07:Tejas Networksは携帯電話基地局のバックホール向け機材などを提供している
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Photo08:Critical Linkは組込みシステム向けにSOM(System On Module)を提供している
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Photo11:現在のFPGA AI Suite、OpenVINOをQuartus Prime経由でインプリメントできることも強みの1つとして挙げているのだが、これ完全に独立したあとどうするのだろう?
またAlteraは2025年1月14日、ASAP(Altera Solution Acceleration Partner) Programを発表したが、このProgramのメンバー企業にDigiKeyが入った事を同社PresidentのDave Doherty氏がアナウンスした(Photo12)。
最後に2つ目の新発表として、同社は「altera university」を立ち上げることをアナウンスした。ただし詳細は後日となっている。
発表内容は以上であるが、簡単に捕捉を。Agilex 3のアナウンスがあったのは2024年3月のことで、この時には「近日中に展開」だったが、それが1年あまりも必要になるとは流石に想像しなかった。
Cycloneの後継という位置づけであると思うが、Cyclone V同様にFPGAの他にArmコアを搭載したSoCモデルも出る予定なのか、それともAMDのArtix同様にFPGAのみでArmコア搭載モデルは省くのか、がまず興味あるところだ。最近だとMicrochipのPolarFireみたいに最小25K LUTながらRISC-V CPUをHard IPとして搭載するモデルもある。結構Arm内蔵Cylone Vが使いやすい(AMDのZynq Ultrascale+ほどのLUTは要らない)という声も聞くことがあるので、このあたりのラインナップ展開が楽しみである。
FPGA AI Suiteについては、Agilex 5/7にINT 9/FP16/BF16などのサポートを追加し、またTensor Blockも追加された強化型DSPが搭載されており、これを利用する事でAgilex 5 D-Seriesなら最大56TOPS(FP16/BF16)を発揮するとされているが、競合となるVersal AI Edge Gen2はFP16/BF16なら最大90TOPS、MX6/INT8なら最大370TOPSなどと説明されているだけに、もう少し性能の上乗せが必要にも感じられる。
あとPhoto10のキャプションにも書いたが、Quartus PrimeはAMDのVivado相当のツールであり、Vitisにあたるものが存在しない。しいて言えばPhoto02の右下にあたるSystem Developmentのツールがそれに該当するのだとは思うが、この部分でもう少し何か欲しいところである。これは別にAMDだけでなく、Latticeなども同様である。Latticeで言えばRadiant+PropelがQuartus Prime相当で、Solution Stackにあたる部分がSystem Development相当という格好だが、LatticeのSolution Stackの方がより実アプリケーションに近い構成になっているようにも思う。今まではIntelの一部門ということで、この辺のソリューションがCPU向けのソリューションと被る事もあってか、あまり充実していなかった感があるのだが、独立企業になったことで今後はもう少し充実してゆく事を期待したい。