この半導体ニュースのまとめ
・オンセミがSynapticsを約70億ドル相当の株式交換で買収する最終契約を締結
・SynapticsのエッジAIコンピュート、HMI、無線接続技術を取り込み、フィジカルAI向け事業を強化
・買収によりオンセミの2030年時点のTAMは300億ドル拡大し、2430億ドル規模になる見込み
オンセミがSynapticsを買収、株式交換で企業価値は約70億ドル
onsemi(オンセミ)は6月25日、Synapticsを買収する最終契約を締結したと発表した。買収は全株式交換取引で行われ、Synaptics株式1株に対してonsemi普通株式1.350株を割り当てる。取引総額は企業価値ベースで約70億ドルに相当し、過去10営業日の両社株価の出来高加重平均終値に対して約19%のプレミアムを付けた水準だという。
Synapticsは、エッジAIコンピュート、HMI、無線接続、ミックスドシグナル技術などを手掛ける半導体企業であり、民生機器や産業機器、車載、AR/VR、IoTなど幅広い市場向けに技術を展開してきた。一方のオンセミはこれまで、車載、産業、AIデータセンター向けを中心に、インテリジェントパワーとセンシング技術を強みとしてきたが、今回の買収により、電源・センサーに加えて演算、接続、制御までを含むシステム提案力を高めることとなる。
フィジカルAIの4要素を強化、AIデータセンターからエッジへ拡大
オンセミが今回の買収で強調しているのが「フィジカルAI」への展開である。同社は、AIがクラウドから自動車や産業機器などの物理世界へ広がる中で、次の革新には「Power」「Sense」「Connected Compute」「Control」の4要素がシームレスに連携する必要があると説明する。機械が現実世界を認識し、判断し、動作し、環境に適応するためには、電源、センサー、ローカル演算、接続、制御を統合したアーキテクチャが不可欠になるためだ。
Synapticsの買収により、onsemiはSynapticsが持つエッジAIコンピュートの製品群やソフトウェア、開発エコシステムを取り込むことができる。これにより、従来から強みを持つパワー半導体やイメージセンサーなどのセンシング技術と組み合わせ、AIデータセンターにとどまらず、エッジ側でリアルタイムに判断を行うインテリジェントシステムへ事業領域を広げる考えだ。
TAMは2030年に2430億ドルへ、300億ドルの市場機会を追加
オンセミによると、Synapticsとの統合により、同社の2030年時点のTAM(獲得可能市場)は300億ドル拡大し、2430億ドル規模になる見込みだという。自動車、産業機器、AIデータセンターに加え、ロボティクス、AR/VR、スマートデバイス、コネクテッドエッジといった領域で、より広範な市場機会を取り込むことを狙う。
オンセミのHassane El-Khoury社長兼CEOは、AIがクラウドを超えて物理世界へ移る中で、リアルタイムに「認識・判断・行動・適応」できるシステムが必要になると説明。Synapticsの追加により、これらフィジカルAIで必要とする4つの柱が交差する位置に立ち、AIデータセンターを超えたエッジアプリケーションの機会を獲得できるようになるとしている。
一方、SynapticsのRahul Patel社長兼CEOは、今回の発表をSynapticsのエッジAIおよびフィジカルAI領域での成長を加速する重要な一歩と位置付ける。SynapticsのAIネイティブな演算、接続、HMI技術と、オンセミのインテリジェントパワーおよびセンシングを組み合わせることで、エッジAIスタックの各層にまたがる統合ソリューションと開発プラットフォームを顧客に提供できるようになるとしている。
買収は2027年半ばの完了を想定、統合後のシナジー創出が焦点に
今回の取引は両社の取締役会で全会一致により承認されており、Synaptics株主の承認、規制当局の認可、通常のクロージング条件を経て、2027年半ばの完了を見込む。買収完了後、Synapticsはオンセミの完全子会社となる予定で、Synaptics株主は統合後企業の約12%を保有する見通しだ。
またオンセミは、買収完了後18カ月以内に非GAAPベースの1株当たり利益にプラス寄与することを見込むほか、年間約2億ドルのシナジー創出を想定している。電源、センシング、エッジAIの演算、接続、制御を1つのシステム提案として組み合わせられるかが、今後の統合効果を左右することになりそうだ。
今回の買収は、オンセミがフィジカルAI時代のインテリジェントシステム企業へと軸足を広げることを目指す動きといえる。AIデータセンター向け電源需要の拡大に加え、自動車、産業機器、ロボティクスなど物理世界でAIを動かす市場の成長が期待される中、同社がSynapticsの技術をどのように自社の電源・センシング製品群と統合していくかが、今後の焦点となる。