稲盛財団(京都市、金澤しのぶ理事長)は2026年の京都賞を、軽くて柔軟に曲げられる次世代の「ペロブスカイト太陽電池」を発明した桐蔭横浜大学大学院工学研究科特任教授の宮坂力(つとむ)氏(72)、海の微生物が地球規模の炭素などの物質循環に果たす役割を解明した米カリフォルニア大学サンディエゴ校スクリップス海洋研究所名誉教授のファルーク・アザム氏(85)ら、3氏に贈ると発表した。
宮坂氏は「先端技術部門」での受賞で、理由は「次世代太陽光発電技術『ペロブスカイト太陽電池』の創成」。ペロブスカイトは結晶構造の一種。帯電する性質を生かし、コンデンサーやプリンターヘッドなどの電子デバイスに使われている。ヨウ素や臭素を使って人工的に合成するペロブスカイトには、光を吸収する性質がある。宮坂氏の研究グループは、このタイプのペロブスカイトに、光を電気に変換し発電する性質があることを発見。新概念の太陽電池として、世界に先駆けて提唱した。
パネル状のシリコン太陽電池と異なり、薄くて軽く柔軟に曲げられることから、従来の常識を覆す次世代電源のあり方を提示した。宮坂氏は有害な鉛が使われることによる環境負荷の軽減や、電池としての寿命の改善などへの取り組みも主導。世界のエネルギー問題の解決に向け、大きな影響を与え続けている。早稲田大学特命教授。
同財団は「ペロブスカイト太陽電池の領域は、学術的深化を経て、持続可能な社会基盤を支える実用化段階へと進展しつつある」と評価した。
アザム氏は「基礎科学部門」での受賞で、理由は「海洋生態系の炭素循環における『微生物ループ』の役割の解明」。微生物ループとは、海洋や湖沼・河川の微生物が主役の食物連鎖のこと。海洋などの炭素循環は従来、プランクトンを中心に考えられてきたが、アザム氏の研究により、細菌や原生生物など、微生物の重要な役割が明らかになった。
植物プランクトンが排出した小さな有機物は、生物が利用できないと考えられていた。しかし実は細菌が餌とし、その細菌を原生動物が食べることで、食物連鎖に戻っていることが分かった。アザム氏は、微生物が炭素などの地球規模の物質循環に果たす役割も解明し、海洋生態学や生物地球化学に決定的変革をもたらした。
同財団は「海洋生態系における微生物の役割の解明は、海洋を中心とする水圏生態学の発展に大きく寄与した」と評価した。
このほか「思想・芸術部門」でマルチメディアアーティストのローリー・アンダーソン氏(79)が決まった。「斬新なアイデアとユーモアをもってテクノロジーを駆使しながら、音楽、美術、映像などの領域を横断する活動を展開し、語る声、身体、電子メディアが一体となって提示される実験的かつポップな独自のマルチメディアパフォーマンスの表現を確立した」と評価された。
発表は19日付。同賞は科学や文明の発展、人類の精神的深化、高揚に貢献した人物に贈られるもので、今回で41回目。授賞式は11月10日、国立京都国際会館(京都市)で行われ、3氏にそれぞれ賞金1億円などが贈られる。
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