子どもの難治性細菌性腸炎に対し、父親の糞便を腸内に移植して治療することに、香川大学の研究グループが成功した。移植して1年が経過しても、再発や合併症が見られなかった。海外では、糞便移植は腸内細菌の正常化のために一部の疾患で行われているものの、国内では保険適用ではないため、症例が多くない。今後は症例を積み重ね、治療法の一つとして確立していきたいとしている。

香川大学医学部小児科学講座の近藤健夫助教(消化器・肝臓分野)らの研究グループは、難治性再発性CD(クロストリディオイデス・ディフィシル)腸炎と呼ばれる、下痢が主症状の腸炎を発症した3歳の女児に対して治療してきた。この女児には、ガイドラインで定められている抗菌薬を投与しても再発してしまうため、別の治療法を模索していた。

この女児は超低出生体重児として出生し、生後しばらく、医療の管理下で集中治療を行った。その後退院できたものの、心臓や肺に合併症があり、それらの悪化で緊急入院となった。病棟で治療していたところ、腹痛や下痢がみられた。

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    鼻から栄養を摂る場合、栄養が均一な栄養剤を胃腸に入れるため、腸内細菌の多様性が低下しやすい

CD腸炎は下痢が主症状だが、発熱や腹痛といった他の消化器疾患と同じような訴えがある。鑑別するために細菌検査を行い、最終的にこれらの消化器症状はCD腸炎によるものと判明した。しかし、CD腸炎に対してガイドラインに沿って治療したものの、治療を中止すると再発することを複数回繰り返し、完治しにくい状態になっていた。

近藤助教によると、CD腸炎が再発を繰り返し、難治性となった原因として「出生後に抗菌薬を使用したことに加えて、超低出生体重児で心肺に合併症があったため長期間経鼻栄養で均一な栄養を摂っていたことが、腸内の細菌の多様性が低下を招いた可能性があり、それが難治性となった要因の一つではないか」と分析する。

飲み薬の抗菌薬を投与しても回復が見られず、糞便移植をすることにした。健康状態が良かった実父から便を採取し、生理食塩水で溶かして液体状にしたものを、滅菌ガーゼでろ過し、150ccに調整。大腸内視鏡を用いて、女児の大腸内に移植した。移植後は大腸内の細菌環境が整い、1年後も再発や合併症が見られなかった。

この手法を2025年9月、26年4月の小児科関連の2学会で報告したところ、他の小児科医から「同じような患者がいて治療法がなく困っている。具体的な移植方法を教えてほしい」といった声があったという。

近藤助教は「香川大学医学部附属病院でも年に2、3例はCD腸炎の発症例がある。頻度は低いものの、その中で今回の患児のように難治な経過をたどる場合、糞便移植が選択肢に上がる。倫理的観点などから現状ではどの医療機関でも実施できるわけではないが、症例を増やして完治できるよう、治療法を確立したい」と話した。

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