中国の新顔「LineShine」が首位、TOP500で初の2Exa超えを達成

世界のスーパーコンピュータ(スパコン)に関するランキングの2026年6月版(第67回)「TOP500」が6月23日、独ハンブルグにて開催中のHPCに関する国際会議「ISC High Performance 2026(ISC 2026)」に併せる形で発表された。

それによるとトップとなったのは初登場の中国のスパコンシステム「LineShine(凌勝/灵晟)」。中国深センの国家スパコンセンター(National Supercomputer Center, Shenzhen:NSCS)に設置されたシステムで、1ノードあたりArmv9ベースのカスタムCPU「LX2」(1CPUあたり1.55GHz動作のコアを304基搭載)を2つ搭載しており、合計1378万9440コアでLINPACK性能として2,198.40PFlop/s(2.198ExaFlops)、消費電力は42,220.00kW(42.22MW)と、初の2Exa超えを達成した(理論性能値は2,735.82PFlop/s)。

中国のスパコンが首位になるのは2017年以来となるほか、CPU主体の構成で2ExaFlopsを達成した初のシステムという点でも注目される。HPCGでも22.00PFlopsで首位に立った一方、HPL-MxPでは7.92Exaflop/sで4位となっている。GPUをはじめとするアクセラレータを用いないことから、海外では富岳に思想が近いシステムではないかと見る向きもある。

LineShineを用いた研究成果のプリプリントに、同システムの構成が簡単だが記載されている。それによると、1CPUあたり2つの演算ダイが搭載され、1ダイあたり4つのNUMA(Non-uniform memory access)アーキテクチャ構成を採用。それぞれのNUMAに38コアCPUと4GBのHBM、専用のSDMAエンジンが統合されており、DDRとHBM間のデータ移動をSDMAエンジンを活用するメモリ階層とすることで性能を引き上げている模様だ。

  • 2026年6月版(第67回)TOP500の上位10システムの概要

    2026年6月版(第67回)TOP500の上位10システムの概要 (出所:TOP500 Webサイト)

ExaFlops級は5台へ拡大

2位は前回首位の米LLNL(ローレンス・リバモア国立研究所)に設置された「El Capitan(エル・キャピタン)」。LINPACK性能は1809.00PFlops(1.809ExaFlops)と、前回から変更はない。3位は前回2位の米ORNL(米オークリッジ国立研究所)のエクサスパコン「Frontier」。LINPACK性能は1353PFlops(1.353ExaFlops)で前回から変更はなし。4位の前回3位だった米アルゴンヌ国立研究所のエクサスパコン「Aurora」もLINPACK性能は1.012ExaFlopsと変更はなく、5位の前回4位であったEuroHPC/Forschungszentrum Jülich(FZJ、ユーリッヒ研究センター)の「JUPITER Booster」も1000PFlops(1ExaFlops)と変更はない。LineShineがエクサスケールスパコンとなったことで、米国、欧州、アジアの3地域にエクサスケールスパコンが設置されたこととなった。

伊EniのHPC7が初登場で6位にランクイン

6位はイタリアの半国有石油・ガス会社Eniのスパコン「HPC7」が初登場ながら571.50 PFlop/sでランクイン。HPE Cray EX255a(AMDの第4世代EPYC 24C 1.8GHz)とAMD Instinct MI300Aを採用し、同社の既存「HPC6」と並ぶ新たな中核機として位置付けられる。

7位は前回5位のMicrosoft Azureの「Eagle」でLINPACK性能は561.20PFlops(0.561ExaFlops)から変更はなし。8位は前回6位のEniのスパコン「HPC6」で、LINPACK性能は477.90PFlopsのまま変更なし。9位に前回7位であった理化学研究所(理研)のスパコン「富岳」が入ったが、LINPACK性能は前回同様442.01PFlopsで変更はない。10位は前回8位のスイス国立スーパーコンピューティングセンター(CSCS)に設置されているAIスパコン「Alps」で、LINPACK性能434.90PFlopsは前回同様である。

高い実用性を探求する日本のスパコン開発

日本では、フラッグシップスパコンである富岳の次世代機として「富岳NEXT」(開発コード名)の開発が進められているほか、6月19日付で理研はAI for Science開発用スパコンの名称を「理究(りきゅう)」に決定したことを公表するなど、方向性として単なるLINPACK性能での高さを追い求めるのではなく、実際に利用する際に高い演算性能を提供することを目指した取り組みを富岳以降推進してきた。

富岳はTOP500だけでなくGraph500やHPCGで存在感を維持してきた経緯があり、次世代機以降についても実アプリケーション寄り指標での評価が注目点となると見られる。

このほか、同時公表のGreen500では仏トゥールーズ大学とフランス国立科学研究センター(CNRS)が運営するスパコンシステム「KAIROS」が73.28GFLOPS/Wで首位を維持した。TOP500が性能の絶対値を示す一方、Green500はエネルギー効率の観点から次世代HPCの方向性を映す指標であり、今回もTOP500上位勢とは異なる顔ぶれが並ぶ結果となっている。

トップ100以内に日本勢は14システムがランクイン

なお、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。前回の富岳併せて12システムから14システムへと増加している。新顔としては、さくらインターネット/プラナスソリューションズの「SAKURAONE CYD」、国内研究機関(匿名)のスパコンシステム、KDDIの「KDDI GPU Cloud」の3システムで、代わりに前回93位であったさくらインターネット/プラナスソリューションズの「SAKURAONE CYC」が113位となっている。

  • 19位(前回16位):産総研の「ABCI 3.0」(145.10PFlops)
  • 21位(前回17位):ソフトバンクの「CHIE-4」(135.40PFlops)
  • 28位(前回25位):ソフトバンクの「CHIE-3」(91.94PFlops)
  • 30位(前回27位):ソフトバンクの「CHIE-2」(89.78PFlos)
  • 38位(前回32位):産総研の「ABCI-Q」(74.58PFlops)
  • 50位(前回41位):FPTのスパコン(49.85PFlops)
  • 52位(前回42位):筑波大学計算科学研究センターと東京大学情報基盤センターの共同運営による最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)の「Miyabi-G」(46.80PFlops)
  • 62位(前回51位):東京科学大学の「TSUBAME4.0」(39.62PFlops)
  • 63位(初登場):さくらインターネット/プラナスソリューションズの「SAKURAONE CYD」(37.79PFlops)
  • 69位(前回54位):さくらインターネット/プラナスソリューションズの「さくらONE」(33.95PFlops)
  • 89位(初登場):研究機関とだけ記載されたHPE ProLiant Compute XD685ベースのスパコン(23.78PFlops)
  • 98位(初登場):KDDIのスパコン「KDDI GPU Cloud」(22.21PFlops)
  • 99位(同73位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.12PFlops)