世界のスーパーコンピュータ(スパコン)に関するランキングの2024年11月版(第64回)「TOP500」が11月18日(米国時間)、米国ジョージア州アトランタならびにオンラインにて開催されているHPCに関する国際会議「SC24」にて発表された。

毎年2回、6月と11月に発表されるTOP500は今回で64回目。前回まで5期連続でトップを獲得していた米ORNL(オークリッジ国立研究所)のエクサスケールスパコン「Frontier」を退けてトップとなったのは米LLNL(ローレンス・リバモア国立研究所)に設置された「El Capitan(エル・キャピタン)」。AMDの第4世代EPYC(24コア、1.8GHz動作)を1103万9616コアとAIアクセラレータ「Instinct MI300A」(インターコネクトはSlingshot-11を採用)を採用したエクサスケールスパコンで、LINPACK性能は1742.00PFlops(1.742ExaFlops)を記録している。2位に転落したFrontierのLINPACK性能は1353PFlops(1.353ExaFlops)で、前回の1.206ExaFlopsから若干引き上げられているものの、El Capitanにトップを明け渡すこととなった。

  • 「El Capitan(エル・キャピタン)」

    米LLNLの2Exa超えスパコン「El Capitan(エル・キャピタン)」 (出所:TOP500)

3位は前回2位の米アルゴンヌ国立研究所に設置されたエクサスパコン「Aurora」で、LINPACK性能は前回の1.012ExaFlopsから変更はない。4位は前回3位で2023年より稼働を開始したマイクロソフトのAzureスパコン「Eagle」でLINPACK性能は0.561ExaFlops(561.20PFlops)でこちらも変更はない。

5位はエネルギー供給会社である伊Eniが導入した最適化されたAMD第3世代EPYC(64コア、2GHz動作)とInstinct MI250Xを搭載したHPE Cray EX4000システムベースのスパコン「HPC6」で、LINPACK性能は477.90PFlopsとなっている。6位は、前回4位であった理化学研究所(理研)のスパコン「富岳」でLINPACK性能は442.01PFlopsと変更はないが、富岳は「Graph500」と「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」で10期連続の第1位を獲得しているほか、2025年より後継機(富岳NEXT)の開発を開始する予定。京から富岳への切り替えの際は、同じ建屋を利用するため、利用できない期間があったが、富岳と富岳NEXTの場合は、富岳の稼働を継続させながら、別の建屋を構築し、導入を図っていく模様である。

7位は前回6位のスイス国立スーパーコンピューティングセンター(CSCS)に設置されているNVIDIA GH200を搭載したAIスパコン「Alps」。LINPACK性能は前回の270.00PFlopsから434.90PFlopsへと引き上げられ、前回5位で、今回は8位となった欧州連合(EU)のスパコン共同事業体(EuroHPC Joint Undertaking)のうちの1つで、フィンランドの教育文化省が運営する非営利の国有企業CSC - IT Center for Scienceによる「LUMI」のLINPACK性能379.70PFlopsを抜いて順位が入れ替わった形となった。

9位は前回7位で、LUMIと同じEuroHPCの1つである、イタリアのボローニャに設置されているCINECAデータセンターの「Leonardo」。LINPACK性能は前回同様の241.20PFlopsとしている。

そして10位はEl Capitanと同じLLNLのスパコン「Tuolumne」。El Capitanと同様のHPE Cray EX255A(AMDの第4世代EPYCとInstinct MI300A)を採用し、LINPACK性能は208.10PFlop/sとしている。

  • 2024年11月版(第64回)TOP500の上位10システム

    2024年11月版(第64回)TOP500の上位10システムの概要 (出所:TOP500 Webサイト)

この結果、上位10システムのうち5システム(El Capitan、Frontier、HPC6、LUMI、Tuolumne)がAMDのプロセッサとなり、Intelの3システム(Aurora、Eagle、Leonardo)を上回る結果となったほか、アクセラレータ/コプロセッサについては、211システムが採用している。また、7システム(El Capitan、Frontier、Aurora、HPC6、Alps、LUMI、Tuolumne)がSlingshot-11インタコネクトを採用し、Infinibandの2システム(Eagle、Leonardo)を上回っている。500システムを国・地域別でみると、米国のシステムが173で、中国が新規登録を行っていないため前回の80から63へと減らした一方、ドイツが41システムと数を伸ばしており(日本は34システムで4位)、地域別でみると、北米の181に続き、欧州が161、アジアは143台となっている。

  • 第64回 TOP500の記載スパコンに搭載されている各アクセラレータ/コプロセッサとシステム数

    第64回 TOP500の記載スパコンに搭載されている各アクセラレータ/コプロセッサとシステム数 (出所:TOP500 Webサイト)

なお、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100以内にランクインしているのは以下の通り。前回の富岳併せて10システムから1システム増の11システムがランクインしている。前回のランクから消えたのは、前回39位だった産業技術総合研究所(産総研)の「ABCI 2.0」(22.21PFlops)(次世代システム導入に伴って2024年10月31日付で運用を終了)、前回95位だった海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.99PFlops)、同99位の記名なし研究機関のシステム(9.46PFlops)の3システムで、代わりに4システムが新たに登録された形となっている。

  • 16位(新登録):ソフトバンクの「CHIE-3」(91.94PFlops)
  • 17位(新登録):ソフトバンクの「CHIE-2」(83.14PFlops)
  • 28位(新登録):筑波大学計算科学研究センターと東京大学情報基盤センターの共同運営による最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)の「MiyabiMiyabi-G」(46.80PFlops)
  • 36位(前回31位):東京科学大学(旧 東京工業大学)の「TSUBAME4.0」(39.62PFlops)
  • 37位(新登録):GMO GPU Cloudのスパコンシステム(38.06PFlops)
  • 58位(同33位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.12PFlops)
  • 76位(同50位):東北大学の大規模計算科学計算システムスーパーコンピュータ「AOBA」のサブシステム「AOBA-S」(17.22PFlops)
  • 80位(同53位):宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.59PFlops)
  • 96位(同62位):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops)
  • 97位(同63位):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops) (96位と97位の気象庁のスパコンは主系と副系の2系統で構成。それぞれの順位は1系あたりのLINPACK性能)