北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)は7月24日、AI研究および高性能計算(HPC)を支える新たな計算基盤「HAKUSAN(はくさん)」を整備し、2026年3月から運用を開始したことを発表した。
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HAKUSANの外観。キャビネット側面には、旧システムKAGAYAKIのモチーフである北陸新幹線「かがやき」と地元・石川県の霊峰・白山が描かれており、役目を終えたKAGAYAKIをHAKUSANが見届ける構図を通じて、JAISTの研究基盤を継承し、未来へ発展させていく姿勢が表現されている。(出所:JAIST Webサイト)
材料探索からAI科学まで幅広い分野での活用を予定
現代科学において、スーパーコンピュータは研究活動を支える不可欠な基盤となっている。大学や研究機関では、数値シミュレーションやデータ解析、AI研究を支えるHPCシステムの整備が進められており、JAISTでも原子・分子レベルの現象解明や新材料探索など、計算科学を基盤とした先端研究が推進されてきた。
これまでJAISTでは、網羅的な第一原理計算によって、多数の元素から構成されるハイエントロピー合金中に、従来は知られていなかった「隠れた規則構造」を発見したほか、高性能蓄電材料の優れた充電特性を生み出すメカニズムを解明したり、従来の計算手法では精密な解析が困難だった分子シミュレーション上の課題を解決したりするなど、計算科学を活用したさまざまな研究成果を挙げてきた。
一方で近年は、生成AIをはじめとする人工知能技術の急速な発展や、ビッグデータ解析の高度化に加え、数値シミュレーション自体の高精度・大規模化が進んでおり、研究現場で求められる計算資源は年々増大している。そのため、JAISTではおよそ5年ごとにHPC基盤を更新しており、こうした研究ニーズや技術動向を踏まえ、旧システム「KAGAYAKI」の後継として、新たなAI・HPC基盤HAKUSANを導入し、2026年3月から運用を開始した。
HAKUSANは理論演算性能2.03PFLOPS(最大で毎秒2030兆回の浮動小数点演算)を備え、最新のIntel Xeon 6プロセッサを採用。総CPUコア数は3万1744コア、総メモリ容量は186TiBとなる。
また、システムにはxFusion製のラックスケール液冷サーバー「FusionPoD」を採用。124台の液冷計算ノードを高速インターコネクト「InfiniBand NDR200」で接続し、大規模並列計算に対応する。このラックスケール液冷技術により、高性能CPUの高密度集積と優れた電力効率を両立したほか、迅速なノード交換や障害検知、遠隔監視機能なども備えられている。
JAISTでは、HAKUSANの多数の計算ノードを高速ネットワークで接続した大規模並列計算環境を活用し、原子・分子・材料の高精度シミュレーションや大規模探索計算を加速するほか、データ科学と計算科学を融合した新たな材料探索や科学的発見を支援するという。また、科学データ解析やAIを活用した新材料探索、未知の現象や法則の発見を目指す「AI for Science」の研究基盤としても活用する予定とした。さらにJAISTでは、HAKUSANを中核とすることで、計算科学、データ科学、AI、実験科学を有機的に結び付け、研究・教育のさらなる高度化を図るとしている。
なおHAKUSANの名称は、JAISTが立地する石川県を代表する霊峰・白山に由来する。キャビネット側面には、旧システムKAGAYAKIのモチーフである北陸新幹線「かがやき」と白山を描き、役目を終えたKAGAYAKIをHAKUSANが見届ける構図とすることで、研究基盤を継承しながら未来へ発展させる姿勢を表現したという。
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HAKUSANのシステム全体構成図。中核となる124台の液冷計算ノードを高速ネットワーク「InfiniBand NDR200」で接続し、既設のGPU計算ノードやVM計算ノードとも連携することで、AI研究から大規模数値シミュレーションまで幅広い用途に対応する。(出所:JAIST Webサイト)
JAISTの寺野稔学長は、「HPC基盤は、単なる大型計算機ではなく、これまで見ることのできなかった現象を明らかにし、新たな科学的発見を生み出すための強力な研究基盤です。HAKUSANでは、高性能計算とデータ科学にAIを融合し、計算科学、データ科学、AI、実験科学を結ぶ最先端領域の研究を加速します。研究分野を越え、大学と産業界をつなぐ次世代研究基盤として発展させていきます」とコメントしている。