世界のスーパーコンピュータ(スパコン)に関するランキングの2024年6月版(第63回)「TOP500」が5月13日(独時間)、独ハンブルグにて開催中のHPCに関する国際会議「ISC High Performance 2024(ISC 2024)」に併せる形で発表された。

それによるとトップとなったのは前回同様、米ORNL(米オークリッジ国立研究所)に設置されたエクサスパコン「Frontier」で、これで2022年6月版のTOP500でトップを獲得して以降、5期連続でのトップ獲得となった。また、LINPACK性能は1.206ExaFlopsと、前回の1.194ExaFlopsから若干引き上げられた。

  • エクサスケールスパコン「Frontier」

    2024年6月版のTOP500で5連覇を達成したエクサスケールスパコン「Frontier」 (出所:TOP500 Webサイト)

2位も前回同様、米国アルゴンヌ国立研究所に設置されたエクサスパコン「Aurora」だが、LINPACK性能は前回の0.585ExaFlopsから1.012ExaFlopsへと引き上げられた。3位は2023年より稼働を開始したマイクロソフトのAzureスパコン「Eagle」で順位の変動はなし。LINPACK性能も前回同様0.561ExaFlops(561.20PFlops)としている。

4位も順位および性能の変更はなく、理化学研究所(理研)のスパコン「富岳」。LINPACK性能は442.01PFlopsとしている。ただし富岳は、「HPCG(High Performance Conjugate Gradient)」および「Graph500」にて9期連続の第1位を獲得したほか、人工知能(AI)の深層学習で主に用いられる単精度や半精度演算処理に関する性能ベンチマーク「HPL-MxP」(旧:HPL-AI)において第4位を獲得している。

5位は欧州連合(EU)のスパコン共同事業体(EuroHPC Joint Undertaking)のうちの1つで、フィンランドの教育文化省が運営する非営利の国有企業CSC - IT Center for Scienceによる「LUMI」。こちらも前回からの順位、LINPACK性能ともに変化はない(LINPACK性能は379.70PFlops)。

6位は新たにランクインしたスイス国立スーパーコンピューティングセンター(CSCS)のNVIDIA GH200を搭載したAI対応スーパーコンピュータ「Alps」。LINPACK性能は270.00PFlopsとしている。

7位はLUMIと同じくEuroHPCのうちの1つで、前回6位だったイタリアのボローニャに設置されているCINECAデータセンターの「Leonardo」。LINPACK性能は前回の238.70PFlopsから241.20PFlopsへと若干の向上が図られた。

8位は前回同順位であったEuroHPCの1つで、スペイン・バルセロナの「Barcelona Supercomputing Center(BSC)」に設置された「MARENOSTRUM 5 ACC」。ただし、LINPACK性能は前回の138.20PFlopsから175.30PFlopsへと引き上げられている。

前回7位だったORNLのスパコン「Summit」はAlpsのランクインとMARENOSTRUM 5 ACCの性能向上に伴い9位に順位を落とした。LINPACK性能は148.6PFlopsとこれまでのものと変更はない。そして10位は6位にAlpsが入ったことで前回9位だったNVIDIAの「EOS NVIDIA DGX SuperPOD」が順位を1つ下げる形でランクイン。LINPACK性能は121.40PFlopsと前回から変更はない。

トップ10のスパコン設置場所を国・地域別で見ると米国が5(前回6)、欧州が4(フィンランド、スイス、イタリア、スペイン。前回3)、日本が1となっている。

  • 2024年6月版(第63回)TOP500の上位10システムの概要

    2024年6月版(第63回)TOP500の上位10システムの概要 (出所:TOP500 Webサイト)

また、富岳以外の日本の主なスパコンシステムとして100位以内にランクインしているのは以下の通り。前回は富岳併せて11システムがランクインしていたが、東京工業大学(東工大)の新システム「TSUBAME4.0」がランクインしたものの、同じ東工大の「TSUBAME3.0」(前回95位)および核融合科学研究所の「プラズマシミュレータ・雷神」(前回100位)が運用終了ならびに100位圏外となった結果、10システムへと数を減らしている。

  • 31位(新登録):東京工業大学の「TSUBAME4.0」(25.46PFlops)
  • 39位(前回32位):産業技術総合研究所(産総研)の「ABCI 2.0」(22.21PFlops)
  • 40位(同33位):東京大学情報基盤センターの「計算・データ・学習」融合スパコン「Wisteria/BDEC-01」のシミュレーションノード群(Odyssey)(22.12PFlops)
  • 61位(同50位):東北大学の大規模計算科学計算システムスーパーコンピュータ「AOBA」のサブシステム「AOBA-S」(17.22PFlops)
  • 64位(同53位):宇宙航空研究開発機構(JAXA)のスーパーコンピュータシステム(JSS3)のHPCシステム「TOKI-SORA」(16.59PFlops)
  • 77位(同62位):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops)
  • 78位(同63位):気象庁の「線状降水帯予測スーパーコンピュータ」(13.37PFlops) (77位と78位の気象庁のスパコンは主系と副系の2系統で構成。それぞれの順位は1系あたりのLINPACK性能)
  • 95位(同77位):海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「地球シミュレータ(SX-Aurora TSUBASA)」(9.99PFlops)
  • 99位(同80位):研究機関とのみ記載。HPE Apollo 6500システム(AMD EPYC 7543 32C 2.8GHz、NVIDIA A100)を採用したシステム(9.46PFlops)
  • 東京工業大学の新型スパコン「TSUBAME4.0」

    東京工業大学の新型スパコン「TSUBAME4.0」 (編集部撮影)

なお、富岳のプロセッサ「A64FX」を開発した富士通によると、現在、富岳のテクノロジーをもとに、高性能、省電力に加え、信頼性と使いやすさを実現するArmアーキテクチャのCPU「FUJITSU-MONAKA」の開発を進めているとするほか、富岳で学習し公開した大規模言語モデル「Fugaku-LLM」を、同社の先端技術で無償で試せる「Fujitsu Research Portal」を通じて提供を開始したとしている。