この半導体ニュースのまとめ

・インテルがCore Ultraシリーズ3のエッジ関連への採用が130件超に拡大したことと、OpenVINO Physical AI Framework投入を説明
・エッジAIの焦点をコンピュータビジョンからフィジカルAIへ広げ、ロボット向け開発キットやPhysical AI Studioで実装負担を下げる
・Panther Lake世代で実運用を見据えた提案を強化

Intelの日本法人インテルは6月18日、直近の自社の取り組みを紹介する「Intel Tech Talk」を開催。Computex 2026で発表したAI PC向けとなる「Core Ultraシリーズ3(開発コード名:Panther Lake)」の普及価格帯向け製品となる「Coreシリーズ3(開発コード名:Wildcat Lake)」やゲーミングSoC「Intel Arc G3」などの説明に加え、エッジAIそしてフィジカルAIに向けたCore Ultraシリーズ3/Coreシリーズ3の活用に向けた取り組みについての説明を行った。

  • Panther LakeとWildcat Lake

    左がPanther Lake、右がWildcat Lakeの実チップ

組み込み分野に対してIntelは40年以上にわたってCPUを中心としたソリューション提供を行ってきており、その活用範囲も産業PCからIoT、コンピュータビジョンなどに広がり、現在はエージェントAIやフィジカルAIの活用へと移行しつつあるという。

Core Ultraシリーズ3/Coreシリーズ3の採用が130件超、エッジAIの裾野が拡大

組み込みAIの活用の中核に据えるのが、Core Ultraシリーズ3およびCoreシリーズ3であり、インテルによると、すでにシリーズ3製品全体で130件を超える設計がエッジ分野が進んでおり、対象システムも産業向け生成AI、堅牢型オンボードコンピュータ、AI外観検査、汎用ヒューマノイド、インフラ保守向けエージェントAI、外食向け会話AI、AIセルフチェックアウト、医療画像向けマルチモーダルAI、デジタルアバターなど幅広いとする。

  • シリーズ3プロセッサを採用したエッジ分野の設計はすでに130件以上

    シリーズ3プロセッサを採用したエッジ分野の設計はすでに130件以上あり、Physical AI StudioおよびOpenVino Physical AIの投入により、ロボティクス分野を中心にさらなる採用拡大を狙う (資料提供:インテル、以下すべて同様)

  • エッジ領域にシリーズ3を提供

    従来の組み込み業界的に考えると、必ずしもハイエンドなCPUが必要とされていたかというと、コストと性能のバランスが優先されるため、必要最低限なCPUに対するニーズは根強い。そういった意味では、AIには対応できる最新アーキテクチャを採用しつつ、いろいろと高機能な部分をオミットし、価格を抑えたCoreシリーズ3が注目される可能性が高いといえる

フィジカルAIの課題は「モデル性能」より「実装」、OpenVINOでギャップ解消へ

中でも強調していたのがロボティクス分野を意識したOpenVINO Physical AI Frameworkの投入。インテルは、フィジカルAIのボトルネックは優秀なモデルを作ることではなく、それを実際のロボットへ安定的に組み込む「デプロイメントギャップ」にあると説明する。現状、ロボットOEMは機種や用途ごとに、カメラドライバ、センサパイプライン、推論ループ、アクション実行、リアルタイム制御、安全性検証といった部分を個別に作り込まざるを得ず、そのたびに大量のグルーコードを作り直しているという。OpenVINO Physical AI Frameworkは、この部分を標準化し、カメラ、ロボット、安全制御を1つのランタイム上で扱えるようにすることを狙ったフレームワークだとする。

同フレームワークの特徴は、単なる推論実行環境ではなく、安全性や実時間性まで含めて設計している点にある。安全機能は後付けではなくフレームワークに組み込む形としており、モデル予測制御ループや拡散モデルベースのアクション生成、マルチモーダル処理をプラグインとして扱えるともしており、単に基盤モデルを動かすだけでなく、それを現実世界で安全かつ繰り返し使えるロボット動作に落とし込む部分までインテルが支援する形となっている。

Physical AI Studioとロボティクス開発キットで、開発から実装までを一気通貫で支援

この実装面を支えるのがPhysical AI Studioとなる。これははCore Ultraシリーズ3もしくはCoreシリーズ3を搭載したホストPCを対象にした開発支援ツールで、ロボットのキャリブレーション、サーボ位置合わせ、データセット収集、模倣学習、モデル最適化までを一貫して支援する。説明会では、Hugging Face系のオープンソースを用いた模倣学習フローに触れ、Pytorch形式などへの対応に加え、OpenVINO向け最適化モデルが生成可能であることなどが示された。Physical AI StudioはGitHubで無償公開されており、エッジAI開発の裾野を広げていきたいとしている。

  • Physical AI Studio

    Physical AI StudioとOpenVINO Physical AI Frameworkの概要

また、ハードウェア面のサポートとして、Panther Lakeを搭載した「ロボティクスリファレンス開発キット」も打ち出した。開発キットはリアルタイム制御を意識した構成で、EtherCAT、CAN-HD、GMSL、USBなどのほか、レガシーインタフェースも備え、ロボット本体や各種センサ、カメラなど、さまざまな産業分野で必要とする機器と接続できる設計を採用している。すでに同キットは一部の代理店にてプリオーダーを受け付けている段階で、現時点ではPanther Lake版の提供であり、Wildcat Lakeを使いたい場合は別途ボードを組み合わせることで対応する必要があるという。

  • 「ロボティクスリファレンス開発キット」

    「ロボティクスリファレンス開発キット」の概要

  • 「ロボティクスリファレンス開発キット」の外観
  • 「ロボティクスリファレンス開発キット」の外観
  • 「ロボティクスリファレンス開発キット」の外観
  • 「ロボティクスリファレンス開発キット」の外観
  • 「ロボティクスリファレンス開発キット」の外観。横面3面にさまざまな産業ニーズに対応するインタフェースを用意。産業機器の領域ではD-Sub 9ピンやD-Sub 37ピンも未だに利用されている場合もあるため、そうしたレガシーインタフェースも用意されている

Panther Lake世代で外付けGPU不要へ、サービスロボット実装が現実解に近づく

Panther Lake世代の登場により、何が変わるのか。インテルが紹介したのは、バリスタロボで、約5年前の段階ではCPUに外付けGPUを組み合わせないと動かすことができなかったという。これがPanther Lake世代では内蔵GPUで代替可能となったとのことで、外付けGPUなしでもサービスロボットを動作させることが可能になりつつあることを強調した。現場の実装で必要となる計算性能と電力効率が、ようやくシステムとしてまとまってきたといえる。

また、Panther Lakeとダイレクトティーチングを組み合わせた機械学習研究用キットもデモを披露。20~50回ほど繰り返し動作を行うことで、求める動作を学習し、それに応じた最適な動作を自動でロボットが行うことができるようになるという評価キットで、ダイレクトティーチング用のロボットとモータやアームの動作を把握するためのカメラ(デモではインテルのRealSenseが深度を測ることができることもあり用いられていたが、別のカメラでも問題ないとのこと)を組み合わせ、それらのデータをPanther Lake世代のPCで処理することで手軽に協働ロボットの動作をプログラムできることなどが示された。

  • 機械学習研究用キットら

    機械学習研究用キット。教育用のアームと、実際にそれと連動して動くアームの2つセットで5万円ほどとのこと。実際の学習にはPanther Lake搭載PCとWebカメラ2台を別途用意する必要がある

Panther LakeからWildcat Lakeまで、最新IPを広い価格帯へ展開するIntelの狙い

これまで同社の製品戦略は、最新世代をハイエンドに、それよりも前の世代をメインストリームに、といった形でユーザーに提供するといったものであったが、Panther LakeもWildcat Lakeもアーキテクチャも製造プロセスも同じ(Intel 18A)である。違いは、CPUやGPUのコア数の違いやDRAMチャネル、対応I/Oなどといったところで、Panther Lakeのエッセンスをトップからボトムまで持ち込むという思想になっている。AIを活用する時代、いわゆるAIの転換期を迎えた2026年という時代にあった、フルでAIを活用したいというニーズにはPanther Lakeを、AIを活用したいが価格を抑えたいというニーズにはWildcat Lakeと提供することで、AI転換期におけるワークロードニーズに対応するAI PCをすべての領域で提供することを目指した取り組みといえる。エッジAIでも同様に、フラッグシップだけでなく、より幅広い価格帯のプロセッサへ最新IPを広げることで、AI機能を現場の実装に浸透させたい狙いが見える。インテルにとってエッジAIという領域は、PC向けのNPUやGPUを活用するための延長線上というよりも、ロボットや産業機器を含むフィジカルAI基盤へつなぐ成長領域として位置付け直されつつあるようだ。

  • Panther LakeとWildcat LakeはコアのアーキテクチャやGPUアーキテクチャ、製造プロセスは同じ

    Panther LakeとWildcat LakeはコアのアーキテクチャやGPUアーキテクチャ、製造プロセスは同じものを利用している

  • Core Ultraシリーズ3とCoreシリーズ3の違い
  • Core Ultraシリーズ3とCoreシリーズ3の違い
  • Core Ultraシリーズ3とCoreシリーズ3の違い