この半導体ニュースのまとめ

・Applied Materialsが、次世代スマートグラス向け統合視覚システム「SENZ」を発表
・導波路、ライトエンジン、センシング、視力補正、電子調光を単一システムとして最適化し、AR表示の量産化を狙う
・GlobalFoundries、Qualcomm Technologies、EssilorLuxotticaとの連携も打ち出し、スマートグラスの開発・製造エコシステム構築を進める

スマートグラス向けに「統合済み視覚システム」を前面化

Applied Materials(AMAT:アプライド マテリアルズ)は6月17日(米国時間)、次世代スマートグラス向けの統合視覚システム「SENZ」を発表した。SENZは、導波路光学系、ライトエンジン、センシング、視力補正、電子調光技術を単一システムにまとめた「integrated ambient visual platform」と位置付けられており、AI対応ディスプレイ・スマートグラス向けに最適化された構成を特徴とする。従来のスマートグラス市場では、部材ごとに個別最適化された部品と分断されたサプライチェーンが、開発速度や量産立ち上げの足かせになってきた。同社は、SENZによってこの分断を減らし、製品投入までの時間短縮と製造複雑性の低減を図る考えだ。

導波路から視力補正まで一体最適化し、AR表示の完成度を高める

SENZの特徴は、ARスマートグラスの視覚体験を左右する中核要素を単なる部材群ではなく、相互に整合したシステムとして設計している点にある。AMATによると、レンズスタックに導波路光学系、ライトエンジン、カメラ、電子調光技術を組み込んだシステム設計により、より高い表示性能、小型化、設計自由度を実現できるという。個々の部品性能だけではなく、レンズ全体の構成最適化によって、スマートグラスをIT機器らしくないものとし、自然な装着感へ近づけることも狙っている。視野の明るさ、コントラスト、鮮明さを高めながら、屋外の明るい環境でも違和感やアーティファクトを抑えた表示を可能にするとしている。

  • SENZ

    SENZは導波路光学系、ライトエンジン、カメラ、電子調光技術など、スマートグラスのシステムに必要な要素を取り込んだものとなる (出所:AMAT)

開発期間短縮と量産対応を両立する「co-optimized solution」

また、同社はSENZを単体の導波路ソリューションではなく、「co-optimized solution」としてブランドパートナーへ提供すると説明している。つまり、完成品メーカー側は、個々の部材をつなぎ合わせるのではなく、すでに共同最適化されたシステムソリューションとリファレンスデザインを活用することで、設計段階でのトレードオフを減らし、より短期間で製品開発を進めやすくなる。同社が長年培ってきたマテリアルエンジニアリングと高量産製造の知見を生かし、スマートグラス量産を制約してきた設計・製造上の摩擦を減らすとしており、ブランドパートナーは、SENZシステムソリューションとリファレンスデザインを使用することで、自社に適した製品の開発が容易になるとしている。

このSENZの立ち上げを支える技術パートナーとして、同社は3社の名前を挙げている。1つ目はGlobalFoundries(GF)で、シンガポールの量産拠点を活用して導波路の量産を進める戦略的協業を構築している。2つ目はQualcomm Technologiesで、Snapdragon STARTの一環として、AI対応次世代スマートグラス向け設計・製造支援で連携する。3つ目がEssilorLuxotticaで、次世代AR/AI対応スマートアイウェア向けインテリジェント光学システムの商用化に向けた共同開発を進める。SENZは、こうした製造、SoC、レンズ・アイウェアの各プレイヤーをつなぐ視覚プラットフォームの役割も担う構図になっている。

スマートグラス普及の壁は「部品」ではなく「システム統合」

AMATのフォトニクス・プラットフォーム事業でVice President兼General Managerを務めるPaul Meissner氏は、スマートグラスが人と技術の関係を変えつつあり、優れた体験を実現するには、ハードウェア、ソフトウェア、接続性、開発者イノベーションを迅速かつ容易に統合する新しい水準のエンジニアリングが必要だと述べている。実際、スマートグラスはこれまでも市場期待が高かった一方で、重量、フォームファクタ、表示品質、視力補正との両立、量産性といった複数の課題が足かせになってきた。SENZは、それらを個別要素ではなくシステム全体の完成度として解こうとする提案であり、スマートフォン後の新しいコンピューティング端末を巡る競争の中で、光学・材料・製造の統合力を前面に押し出したものと言える。

半導体製造装置大手として知られるAMATだが、今回のSENZの発表は、同社がスマートグラス市場においても単なる要素技術の供給にとどまらず、スマートグラス市場全体の基盤を提供する立場となることを狙っていることを示す。かつては、液晶パネルや太陽電池の製造に向けたターンキーソリューションを提供するなど、キープレイヤーを狙う取り組みを推進してきた経緯があり、今回の取り組みも過去のそうした流れの一環とみることもできる。

SENZは、導波路単体ではなく、設計から量産までを見据えた統合済みのプラットフォームとして提示することで、ブランドメーカーやデバイス企業にとっての開発負担を軽くし、市場立ち上がりを早める役割を担うものと言える。ARとAIの融合が本格化する中で、SENZという存在がスマートグラスの量産化をどこまで前進させられるかが、今後の注目点になりそうだ。