この半導体ニュースのまとめ
・EssilorLuxotticaとApplied Materialsが、AR/AI対応スマートグラス向け次世代光学システムの共同開発契約を締結
・導波路、可変レンズ、先端材料を組み合わせ、軽量で高性能なAR用光学プラットフォームの商用化を加速
・両社はApplied Materialsのシリコンバレー拠点内に専用ラボを設け、研究から量産化までの立ち上がり短縮を狙う
ARスマートグラス量産に向け、光学プラットフォームを共同開
仏EssilorLuxottica(エシロールルックスオティカ)とApplied Materials(AMAT:アプライド マテリアルズ)は6月16日、拡張現実(AR)およびAI対応スマートアイウェア向けの次世代インテリジェント光学システムの商用化を加速するため、長期の共同開発契約を締結したと発表した。レンズ、フレーム、スマートアイウェアで世界的な事業基盤を持つEssilorLuxotticaと、マテリアルエンジニアリングおよび導波路技術に強みを持つAMATが組むことで、軽量かつ高性能な視覚体験を実現するAR向け光学プラットフォームを開発する。
導波路・可変レンズ・材料技術を統合し、軽量高性能なAR体験を狙う
今回の提携の中心にあるのは、スマートグラスを単なる情報表示端末ではなく、日常的に装着できる次世代コンピューティング基盤へ引き上げるための光学系の進化である。両社は、導波路、調光・可変レンズシステム、材料イノベーションを含む先端光学技術の研究開発を共同で進める。ARデバイスにおける導波路は、投影された画像を透明レンズへ取り込み、内部を伝搬させ、現実世界の視認性を保ちながら眼前へ出射させる中核部材であり、軽量化と視認性、量産性を左右する重要技術となる。
また、光に応じてレンズ濃度を変える調光技術や電気的に状態を制御するレンズ技術は、視認性だけでなく装着時の快適性やウェルビーイングの面でも意味を持つ。加えて、AR表示系の光学性能を維持するためのレンズ封止技術も将来の製品成立性に直結する。両社はそれぞれの知財と技術資産を持ち寄ることで、研究段階の成果を量産可能な光学ソリューションへつなげるまでの時間を短縮したい考えだ。
シリコンバレー共同ラボで、研究から量産立ち上げまでを短縮
実際の共同研究は、AMATのシリコンバレーキャンパスに設ける専用コラボレーションラボで進める。研究から試作、製造性の検討までを一体で回し、画期的な光学技術を製品設計や量産立ち上げへつなげることが狙いである。スマートグラス市場では、表示デバイス、光学部材、レンズ設計、材料、AI機能、電源、実装技術が複雑に絡み合うため、個別最適ではなく垂直連携による開発スピードが競争力を左右しやすい。今回の提携も、そうした産業構造を見据えたものと言える。
EssilorLuxotticaのフランチェスコ・ミッレーリ会長兼CEOは、先端光学、AI、ウェアラブル技術の融合が新たな消費者体験を切り開くとの見方を示し、長年培ってきたレンズ技術と視覚性能の知見を生かして、スマートグラスと次世代ビジュアルコンピューティングの将来を形作る知的光学技術を探求したい考えを示した。一方、AMATのゲイリー・ディッカーソン社長兼CEOも、次世代スマートグラスの設計、製造、量産には、技術エコシステム横断の深い協業が不可欠だと述べ、フォトニクスとマテリアルエンジニアリングの知見を生かして、まったく新しいユーザー体験を生む先端ディスプレイ・スマートグラスの開発と商用化を加速するとしている。
AIスマートグラス普及の壁は、光学レンズスタックの完成度
ARスマートグラスは、AIアシスタント、リアルタイム翻訳、視覚補助、産業支援、ナビゲーションなど幅広い応用が期待されている一方、普及の壁となってきたのが、重量、装着感、消費電力、表示品質、量産コストのバランスだった。今回の提携は、その中でも特に難易度が高い光学レンズスタックを共同で磨き込むことで、市場立ち上がりのボトルネックを減らそうとする動きと見ることができる。スマートフォンの次を担う新たなコンピューティング端末としてスマートグラスへの期待が高まる中、レンズと材料の大手2社が量産を見据えた協業に踏み出したといえるだろう。