NVIDIAはCOMPUTEX 2026で、新型Armベースプロセッサー「RTX Spark」を発表した。コードネーム「N1x」として知られていた製品で、NVIDIAはAI、グラフィックス、アプリケーションを統合的に実行できる次世代Windows PC向けプラットフォームと位置付ける。Windows on Armのアプリ互換性向上も背景にあり、NVIDIAやArmは「エージェンティックPC」時代を支える重要なマイルストーンになるとしている。
これはコードネーム「N1x」と呼ばれていたプロセッサーで、NVIDIAのソフトウェアスタック(AI、DLSS、CUDAなど)の100%を実行できるという。
RTX Sparkを正式発表、AI性能は1ペタフロップス級
RTX Sparkは6月1日から台湾で開催されている「NVIDIA GTC Taipei at COMPUTEX」で発表された。基調講演に登壇したNVIDIAのCEOであるJensen Huang氏は、同製品を「最も驚くべきチップ」と表現し、その性能をアピールした。
RTX Sparkは、コードネーム「N1x」として知られていたArmベースプロセッサーで、MediaTekと共同開発した20コアのNVIDIA Grace CPUとBlackwell GPUを統合している。Grace CPUは10コアのArm Cortex-X925と10コアのArm Cortex-A725で構成され、AI性能は1ペタフロップス級に達するとされる。
また、NVIDIAのAI、CUDA、RTX、DLSSなどのソフトウェアスタックをフルに活用できるほか、ユニファイドメモリアーキテクチャを採用し、AI推論やコンテンツ制作、ゲーミングなど幅広い用途を想定している。
会場にはデスクトップPCやノートPC、ワークステーションなどの実機も展示された。ワークステーションモデルは最大768GBのメモリーと20ペタフロップスの処理性能を備え、1兆パラメーター規模のAIモデル実行を想定しているという。
Windowsアプリ互換性への懸念を払拭
Windows Latestによると、RTX Sparkに関してユーザーが最も気にしているのは、従来のWindowsアプリが問題なく動作するかという点だ。
これについてNVIDIAは、同社が提供するすべてのソフトウェアスタックが動作するだけでなく、Windows上の既存アプリケーションも利用できると説明している。背景には、Windows 11 on Armの互換性向上がある。
Microsoftはx86/64アプリを実行するためのエミュレーション技術「Prism」を継続的に強化しており、Windows Latestによると、すでにほぼすべてのWindowsアプリが動作可能とされる。
この改善はWindows 11 ビルド26100.6725または26200.6725以降で利用可能だが、一部環境では実行ファイルのプロパティから機能を有効化する必要があるとされる(参考:「Windows 11 on Arm is finally ready for gaming with AVX/AVX2 support, now rolling out」)。
また、AVXやAVX2などx86系プロセッサーの拡張命令セットへの対応も進んでおり、従来Windows on Armの課題とされてきたアプリ互換性への懸念は大幅に軽減されつつある。
NVIDIA・Arm・Microsoftが描く「エージェンティックPC」
NVIDIAとArmは、RTX Sparkを単なる新型プロセッサーではなく、AIエージェントを中心とした次世代PCの基盤と位置付けている。
ArmはRTX Sparkについて、「Windows on Armエコシステムにとって重要な節目」と説明。NVIDIA、Arm、Microsoft、主要OEM各社が連携し、AIネイティブな「エージェンティックPC」の実現を目指すとしている。
Armのクリス・バーギー氏は、AIエージェントが推論や計画、タスク実行を担う時代にはCPUの役割がさらに重要になると指摘。RTX SparkはArmの高効率CPUとNVIDIAのGPU技術を組み合わせることで、常時利用可能な新しいPC体験を実現すると説明した。
詳細なスペックや価格、発売時期は現時点では公表されていない。しかしRTX Sparkの登場により、QualcommのSnapdragon Xシリーズが先行してきたWindows on Arm市場は新たな局面を迎えそうだ。
Microsoftも「Windows PCの新章」と位置付け
MicrosoftもRTX Sparkを次世代Windows PCの重要な基盤と位置付けている。同社はWindowsブログ「Introducing a powerful new chapter for Windows PCs, accelerated by NVIDIA RTX Spark」において、RTX Sparkを搭載した新しいWindows PCについて「Windows PCの新たな章の幕開け」と表現した。
また、MicrosoftはRTX Spark搭載PCの第1号機として「Surface Laptop Ultra」を発表。開発者やクリエイター、パワーユーザーを主な対象とし、AIエージェントの活用を見据えた新世代のPCとして位置付けている。
NVIDIAやArm、Microsoftは、従来のPCを単なる作業ツールではなく、ユーザーを支援するAIエージェントの実行基盤へと進化させる構想を示しており、RTX Sparkはその実現に向けた重要な一歩とみられる。

