この半導体ニュースのまとめ
・三井金属がVSP箔とMicroThin箔の2030年以降の増産計画を発表
・マレーシアに新拠点設置でVSP月産2600t、MicroThin月産1200万m2体制へ
・VSPは市場拡大に応じて月産5000tまでの生産能力構築も視野
三井金属は8月17日、高周波基板用電解銅箔「VSP」とキャリア付極薄銅箔「MicroThin」について、2030年以降の生産能力増強に関する展望を発表した。
同社は8月7日付で、2030年に向けたVSPおよびMicroThinの生産能力増強を発表していたが、2030年以降もAI・半導体市場の継続的な急成長が見込まれることから、顧客への安定供給を継続するため、マレーシア工場(Mitsui Copper Foil (Malaysia))の近傍に新たに土地を取得し、2031年以降に新拠点を設立する計画を策定した。
マレーシア新拠点でVSP月産1200t、MicroThin月産400万m2を追加
新拠点では、VSP箔で月産1200t、MicroThin箔で月産400万m2の生産能力を持つ体制を構築する計画。既存の生産能力と合わせることで、VSP箔は月産2600t、MicroThin箔は月産1200万m2まで拡大する。
同社が示した生産能力計画では、MicroThinは2025年度および2026年度の月産490万m2から、2027年度に520万m2、2028年度に600万m2、2030年度に800万m2へ拡大。その後、2031年度に1000万m2、2033年度に1200万m2へ引き上げる計画となる。
VSPについては、2025年度の月産720tから、2026年度に840t、2027年度に1000t、2028年度に1200t、2030年度に1400tへ拡大。その後、2031年度に2000t、2032年度に2600tとする計画で、取得予定地は月産5000tまで増強可能としている。
AIインフラ向けにVSPの需要が急増
VSPは、高周波数帯におけるプリント基板の伝送損失低減に寄与する高周波基板用電解銅箔で、サーバ、ルータ、スイッチなどの高性能通信インフラ機器に採用されている。
足元では、AIインフラ関連向けにHVLP5グレード品が量産フェーズへ移行しており、ビッグテック各社での採用が進んでいるという。AIサーバやデータセンター向けでは、高速・大容量通信に対応する基板材料の重要性が高まっており、同社はVSPの需要が急激に増加していると説明している。
VSPは、鏡面のような優れた表面平滑性を特徴としており、高周波伝送時の損失低減に寄与する。AIサーバやネットワーク機器では、基板の低損失化がシステム性能や消費電力にも影響するため、こうした高機能銅箔への需要は今後も拡大が見込まれる。
MicroThinは半導体パッケージ基板や光モジュール向けが拡大
一方のMicroThinは、微細回路形成に適した1.5μm~5μmの銅箔厚みと、複数種類の微細な粗化処理を組み合わせたキャリア付極薄銅箔。主に半導体パッケージ基板、光モジュール、スマートフォン用マザーボードであるHDIプリント基板などに使用されている。
同社では、データセンターやメモリ基板用途が増加しているほか、光モジュールについてもAIサーバへの採用に伴い、今後も需要が伸長していくとみている。
AIデータセンターでは、GPUやAIアクセラレータ、HBM、光通信モジュールなどをつなぐ基板・パッケージ技術の高度化が進んでいる。半導体パッケージ基板や光モジュール向けでは、微細配線形成や高密度実装への対応が求められるため、極薄銅箔の供給能力増強は、AIインフラの拡大を材料面から支える取り組みといえる。
AI・半導体向け機能材料の供給力を中長期で強化
三井金属は、AI・半導体市場の拡大を背景に、VSPとMicroThinの供給体制を段階的に引き上げる方針を示しており、今回、2031年以降の新拠点計画を示したことで、AIインフラ向け材料の中長期的な需要増加を取り込む姿勢をより明確にした形となる。
特にVSPについては、2032年度時点で月産2600tまで能力を拡大したうえで、取得予定地を活用することで月産5000tまでの生産能力体制の構築も視野に入れるとしている。AIサーバ、ルータ、スイッチ、光モジュールなどの需要拡大により、高速通信インフラ向け基板材料の重要性は高まり続けており、需要に応じた安定供給体制の整備を考えた取り組みといえるだろう。

