このものづくりニュースのまとめ

・PTCジャパンが東京オフィスを西新宿から日本橋へ移転
・新オフィスのコンセプトは「Living Harmony」、日本橋の歴史を踏まえ、人と技術、伝統と革新をつなぐ共創拠点へ
・Japan Experience Center(JXC)を新設し、製造業DXやAI活用の共創拠点として展開

PTCジャパンは8月18日、8月頭に東京オフィスを西新宿から日本橋へ移転したことを記念した新オフィス開設セレモニーを開催した。

  • 新オフィス開設セレモニーのテープカットの様子。左からミダス代表取締役社長の畑山啓一氏,PTC EVP 兼 最高人事責任者のBeth Conwey氏、PTC 最高マーケティングサステナビリティ責任者のCatherine Kniker氏、PTCジャパン社長・執行役員の神谷知信氏、PTC 最高収益責任者のRobert Dahdah氏、PTC EVP 兼 最高財務責任者のJennifer DiRico氏、三井不動産 ビルディング本部 法人営業二部ジェネラルマネージャーの工藤人護氏A@新オフィス開設セレモニーのテープカットの様子

    新オフィス開設セレモニーのテープカットの様子。左からミダス代表取締役社長の畑山啓一氏,PTC EVP 兼 最高人事責任者のBeth Conwey氏、PTC 最高マーケティングサステナビリティ責任者のCatherine Kniker氏、PTCジャパン社長・執行役員の神谷知信氏、PTC 最高収益責任者のRobert Dahdah氏、PTC EVP 兼 最高財務責任者のJennifer DiRico氏、三井不動産 ビルディング本部 法人営業二部ジェネラルマネージャーの工藤人護氏A@新オフィス開設セレモニーのテープカットの様子

新オフィスのコンセプトは「Living Harmony」。人と人、テクノロジーと人間、伝統と革新、仕事とコミュニケーションが互いに影響し合いながら、日々新しい価値が生まれていく状態を意味する。PTCが重視するデジタルとフィジカルの融合を、社員や顧客が空間の中で体験できるオフィスを目指したものだという。

  • 新オフィスのコンセプト

    新オフィスのコンセプト

15年ぶりの移転、AI時代に人が集まる意味を再定義

PTCジャパン 社長執行役員の神谷知信氏は、今回の移転について「15年ぶり」の東京オフィス移転であると説明した。コロナ禍以降、リモートワークやサテライトオフィスを含めた働き方が広がる中で、AI時代という不確実性の高い時代だからこそ、人と人がつながり、互いに考えを持ち寄り、新たな気づきを得る場の価値が高まっているとする。

  • 新オフィスのエントランス

    新オフィスのエントランス。社内と社外のパートナーが出会う場所となる

新オフィスの所在地となる日本橋は、江戸時代に整備された東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道の五街道の起点として、人、モノ、情報、文化が行き交ってきた場所である。PTCジャパンでは、そうした日本橋の歴史と、同社が製造業向けに提唱してきたデジタルとフィジカルの融合、すなわちデジタルツインやデジタルトランスフォーメーション(DX)の考え方を重ね合わせた。

そうした思いを重ねた結果、新オフィスの空間設計について、日本橋の歴史を「BRIDGE=橋」と「PATH=道」という2つのコンセプトで表現したとしている。ゲストエリアは「Bridge to Harmony - Connecting Worlds」と位置付けられ、PTCと顧客、テクノロジーと人、社内と社外、過去と未来をつなぐ場所として設計された。先進性を感じさせるモニターや照明表現に加え、木材や植栽など温かみのある素材を組み合わせることで、PTCのテクノロジーと人間らしい心地よさが共存する空間を目指したという。

  • 空間コンセプト

    空間コンセプトとして日本橋という場所で重要となる「橋」と「道」を採用したという

Path to Harmonyで偶発的な交流を促す

執務エリアのコンセプトは「Path to Harmony - Flowing Creativity」。五街道が日本橋から各地へ延びていったように、オフィス内にも一本の「道」が通る構成としたという。社員が行き交い、偶然出会い、会話し、知識やアイデアを交換するための動線としての意味付けがなされており、人と人との出会いから生まれた発想が、次の人やプロジェクトへ広がっていくことを表現したとする。

また、オフィス内には「Chaya living」と呼ぶ空間も設けられたという。日本の街道沿いにあった茶屋のように、人が少し立ち止まり、気持ちを切り替え、自然に会話を始められる場所を意図したものだという。適度に包まれた安心感と、周囲へ開かれた雰囲気を両立させることで、休憩だけでなく、偶発的な交流や新しいアイデアが生まれる場所として機能させる狙いがあるとする。

浮世絵と現代テクノロジーを融合した独自アートも

新オフィスには、浮世絵師 OZ-尾頭-山口佳祐氏によるPTC向けのオリジナルアートも設置された。日本の伝統的な浮世絵の世界観と、PTCが体現する現代のテクノロジー、エンジニアリング、未来への挑戦を融合した作品で、富士山や広がる空、太陽といった日本を象徴する風景の中に、PTCのロゴや企業活動を想起させる要素を自然に組み込んだものとなっている。

作品は手描きを原点としており、色彩も既製色をそのまま使うのではなく、浮世絵特有の風合いを表現するために一色ずつ調合したという。広い壁面に拡大した際にも、空の広がり、富士山へ続くグラデーション、太陽を取り巻く色彩が美しく見えるよう、壁面全体での見え方まで考慮して描き込まれており、Locality、Regional identity、History、Human and Technology、Co-creation、Diversityといった社員へのメッセージも込められているという。

  • オリジナルアート

    執務室内には基本的に部外者の立ち入りは禁止なのだが、今回、許可を得てオリジナルアートの撮影許可をいただいた。浮世絵をモチーフにしているが、よく見ると現代的な電子的なさまざまなモノが見えるほか、PTCのロゴなども見えるので、ぜひ拡大してチェックしてみてもらいたい

Japan Experience Centerを新設

このほか、新オフィスの大きな特徴の1つが、デモセンター「Japan Experience Center(JXC)」の新設である。同施設では、PTCの最新ソリューションや先進技術を実際に体験することができるほか、製造業が直面する課題や将来構想について、顧客とともに考え、議論し、共創する場として活用することが可能となっている。

神谷氏は、JXCについて、デジタルとリアルの融合を顧客が実際に体験できる施設であるとするほか、日本国内の顧客とのコラボレーションだけでなく、海外拠点と接続してオンラインでのデモの中継も可能な施設として整備。同様の機能を有している拠点はPTCとしても、米国、ドイツ、そして日本だけで、アジア初のインタラクションデモが可能な施設として、日本のみならずアジア太平洋地域の顧客とのエンゲージメントを高める拠点として位置付けられている(中国の上海にもExperience Center Shanghaiがあるが、今回のようなインタラクティブなデモが可能な設備は導入されていないという)。

PTCが40年以上にわたって、製品開発から製造、運用、サービスまでをつなぐデジタル技術を提供してきた経験を踏まえ、JXCでは、同社が提唱する「インテリジェント・プロダクト・ライフサイクル(IPL)」の最新技術や、グローバル顧客の活用事例を通じて、ものづくりの未来を具体的に体験できる環境を提供することとなる。

顧客課題は製品単体からライフサイクル全体へ

セレモニーに登壇し、事業戦略や顧客を取り巻く課題を説明したPTCのExecutive Vice President and Chief Revenue OfficerであるRobert Dahdah氏によると、現在、同社は世界で5万社以上の顧客を有し、航空宇宙・防衛、自動車、産業機械など複数の業界でビジネスを展開。そのうえで、あらゆる製品でソフトウェアの重要性が高まり、サプライチェーン問題、AI活用、サステナビリティ対応、地政学的圧力などにより、優れた製品を作ることが一段と複雑になっていると指摘した。

一方で、企業には市場投入までの期間短縮、コスト効率の向上、品質とコンプライアンスの確保も同時に求められており、そうした環境を踏まえ、PTCは顧客とともに課題解決を進め、製品をより早く、より高品質に、より効率的に市場へ投入することを支援してきたという。

AI活用の前提はデータ基盤とオープンな連携

今後も、顧客とともに課題を解決し、いち早い製品の市場投入を実現する鍵を握るのがIPLとなる。その実現には、状況に応じたしっかりとしたデータ基盤を構築すること、PTC製品同士のみならずサードパーティ製品も含めて問題なくつながるオープン性があること、AIをワークフローに組み込むことで、製品ライフサイクル全体を強化していくことが可能であることの3つの要素が重要になるとする。

これらは、要件定義から設計、製造計画、製品提供、アフターサービスに至る製品のライフサイクルのすべての段階で欠かせない要素になる。PTCとしては、AIを単独の機能として提供するのではなく、製造業の業務プロセスに組み込まれた形で活用できるしていくことを目指す姿勢を見せている。

建機とSDVを題材にデジタルスレッドを体験

現在、インタラクティブなデモとして提供されるソリューションは4つ。そのうち2つが今回のセレモニーでは披露された。1つ目は、建設機械メーカーBobcatの小型重機におけるサービス現場からの情報を設計側へフィードバックし、部品単位で不具合や交換頻度を把握したうえで、設計改善につなげる流れが紹介された。PTCのPLMであるWindchillを軸に、設計データ、サービス情報、部品表、作業手順などをつなぎ、上流での変更を製造やサービス側にも漏れなく反映する仕組みであるとするほか、Creoによる3D設計や最適化を通じて、部品の強度や重量を考慮した設計変更を行い、その変更をサービス作業手順や予備品リストへ反映することも可能であり、こうした取り組みにより、現場で古い情報を使い続けるリスクを抑え、設計、製造、サービスをまたいだデジタルスレッドを構築できるとした。

  • Bobcatのデモ筐体

    Bobcatのデモ筐体。手前の箱型筐体はタッチパネル式になっており、さまざまなソリューションを切り替えて表示できる

2つ目は、アウトモービリ・ランボルギーニのソフトウェア定義車両(SDV)開発を想定したデモ。ソフトウェア、ハードウェア、電装、機械などの要件をつなぎ、開発から検証までを一貫して管理するソリューションが示された。

  • ランボルギーニのデモ筐体
  • ランボルギーニのデモ筐体
  • ランボルギーニのデモ筐体。パネルの上に車両が見えるが、デモの際にはパネルが路面になって、その上を実際にタイヤが回転して走るような状態になる。フロント部に測距センサがあり、物体が近づくと自動で減速・停止することもできる

日本橋から製造業の共創を加速

PTCジャパンは、今回の移転を単なるオフィスの移設ではなく、日本のものづくりの未来に向けた新たな挑戦の起点と位置付ける。歴史と革新が共存する日本橋という場所から、顧客やパートナーとの対話と共創をさらに深め、製造業の変革と持続的な成長を支援していく考えだ。

JXCはその基点となる存在であり、米国で開発されたデモを即座に日本でも披露することが可能となる。現在のデモに加え、さまざまなデモが開発されており、順次、実装される予定。日本の顧客の取り組みに基づくデモも開発されているとのことで、将来的には実装されることが期待されるという。また、単にPTCのソリューションを見せる場所ということにとどまらず、顧客が自社の製品開発やサービス、AI活用のあり方を考えるための共創拠点ともなることが期待されている。AIが本格活用される時代において、最終製品に求められるものづくりの内容が複雑化する中、PTCジャパンは日本橋を起点に、製造業のデータ基盤、ライフサイクル管理、AI活用をつなぐ取り組みを強化していくことで、顧客の課題の解決につながる取り組みを深化させ、顧客とともに次世代のものづくりと三行の未来を切り拓いていきたいとしている。