この半導体ニュースのまとめ

・インフィニオンがAIデータセンターの高電力化に対応する800V DC電源向けリファレンスを発表
・CoolGaNを用いたIBCにより98%超の高効率と高電力密度を実現
・電源の「高電圧化」と「中間バス最適化」を軸にAIインフラ電源の次世代化を狙う

Infineon Technologies(インフィニオン)は、AIデータセンター向け電源アーキテクチャとして、±400Vおよび800V DCシステムに対応する2種類の高電圧中間バスコンバータ(HV IBC)リファレンスデザインを発表した。650V対応のGaNパワーデバイス「CoolGaN」をベースに、高効率かつ高電力密度の電源変換を実現し、電力需要が急増するAIインフラへの対応を狙う。

AIデータセンターで進む「高電圧化」

生成AIの普及に伴い、データセンターでは1ラックあたりの消費電力が増大しており、従来の電源構成では配電損失や発熱の増加が課題となりつつある。こうした背景から、48Vを超える高電圧DC配電、特に±400Vや800Vといった電源アーキテクチャの検討が進んでいる。

今回のリファレンスは、こうした市場ニーズに対し、高電圧DCを中間電圧へ変換するIBC(Intermediate Bus Converter)を軸とした電源構成を提示することで、電力分配損失の低減と熱管理の改善を図ることを狙ったものとみられる。

GaNで高効率と高密度を両立

今回発表されたリファレンスデザインは800V DC/±400Vから50Vへの変換(48V系IBCへの中間段)と、800V DCのバス電圧を12Vの中間レールへ直接変換する薄型HV IBCデモボードの2種類。

  • 800V DC/±400V-50V HV IBCリファレンスデザイン

    800V DC/±400V-50V HV IBCリファレンスデザイン (出所:インフィニオン)

前者は、48V系の既存電源構成と組み合わせる中間段として位置づけられており、中電圧CoolGaNスイッチ、EiceDRIVERゲートドライバー、PSOCマイクロコントローラーを採用する形で、2つの3kW 400V-50Vコンバーターのビルディングブロックで構成されている。

これらは入力直列出力並列(ISOP)構成を採用することで、6kWのTDP(熱設計電力)まで拡張することを可能とし、400μsの間、最大10.8kWに対応するという。また、複数の同期整流段を備えたプレーナーPCB一体型トランスを採用し、すべての負荷条件でソフトスイッチングを実現することでEMIを低減することも可能だとする。

60mm×60mm×11mmというコンパクトなフォームファクタを採用しつつ、2.5kW/in3の電力密度を実現しているという。

薄型設計で新たな冷却コンセプトの採用も可能に

後者はサーバボードの小型化や簡素化を目的とした直接変換として位置付けられるデモボードで、6kWのTDPを実現し、400μsの間、最大10.8kWに対応。ISOPハーフブリッジLLCコンバーターとして動作し、革新的なマトリックストランスフォーマー設計を採用することで130mm×40mmのフットプリントで高さ8mmを実現したとする。

また、薄型設計ながら2300W/in3を超える電力密度を達成していることから、これまでにない新たなサーバボード冷却コンセプトが可能になるとする。さらに、高品質な650V CoolGaNスイッチおよび40V OptiMOS 7スイッチ、EiceDRIVERゲートドライバー、PSOCマイクロコントローラーを採用し、ピーク効率98.2%、全負荷時効率97.1%を達成できるともしている。

グリッドからコアまでを網羅するAIサーバ向け電源供給ポートフォリオとしての活用を期待

なお、同社は今回のHV IBCリファレンスを、単なるパワー半導体ソリューションの提供ではなく、電源システム全体の設計指針を提示する取り組みとして位置付けているものと見られる。

同社はデータセンター向けにGaN、Si/SiC、デジタル電源コントローラなど幅広く電源関連製品群を展開しており、今回のリファレンスで、それらが統合された形で示された形となる。そのため、同社でもこれら2つのリファレンスデザインについて、グリッドからコアまでを網羅する幅広いAIサーバ向け電源供給ポートフォリオでの活用に最適化されていると説明。ポートフォリオとして、ソリッドステートトランスフォーマー(SST)やサーキットブレーカー(SSCB)、高電圧および中間バス変換、そしてセカンドステージのDC変換電源モジュールが含まれるとのことで、デバイス単体ではなくシステムレベルでの電源最適化を軸とした方向性を示したものと見られる。