名古屋大学や富士ソフトなどでつくる研究コンソーシアムが、自動運転車と道路インフラをつなぐ情報通信プラットフォーム「ダイナミックマップ2.0」を開発し、オープンソースソフトウェアとしてGitHub上で5月15日に公開。個人・組織を問わず無償で利用できる。

  • 車載センサのみの自動運転(左)と、路車協調型の自動運転(右)のイメージ (出所:名古屋大ニュースリリースPDF)

    車載センサのみの自動運転(左)と、路車協調型の自動運転(右)のイメージ (出所:名古屋大ニュースリリースPDF)

プロジェクトの正式名称は「Dynamic Map 2.0 Platform」。これまで「死角」が課題とされてきた一般道における自動運転の安全性を高め、通信仕様も共通化。自動運転の社会実装を後押しするねらいがある。

名古屋大学未来社会創造機構モビリティ社会研究所、および同大学院情報学研究科附属組込みシステム研究センターの高田広章教授らの研究グループによる成果で、ソフトウェアはMITライセンスの下で配布されている。

今回の研究成果の注目ポイント

  • 路車協調型の自動運転サービスを支援するための、車両、路側機、クラウドをつなぐ情報通信プラットフォームを開発
  • ソフトウェアをオープンソースで公開、誰でも自由に利用可能
  • 柏の葉地域(千葉・柏)での「レベル4」自動運転で利用実績あり
  • ダイナミックマップの基本概念(左)と分散アーキテクチャ(右) (出所:名古屋大ニュースリリースPDF)

    ダイナミックマップの基本概念(左)と分散アーキテクチャ(右) (出所:名古屋大ニュースリリースPDF)

基盤開発の背景

運転手不足や交通安全の高度化といった社会課題を背景に、欧米・中国を中心に「協調型ITS」(Intelligent Transport Systems)やインフラ協調型自動運転の取り組みが加速している。

日本国内においては、一般道路は見通しの悪い交差点が多く、車載センサのみの自動運転では死角からの飛び出しに備えた低速度での走行が必要となるため、安全かつ円滑に走行できる場所が限られる。

さらに、実証実験単位で通信仕様やシステムが個別最適化されてきたため、社会実装にあたり、互換性や拡張性に課題があった。こうした状況を踏まえ、基盤部分をオープン化し、誰もが利用できる形で提供する取り組みが求められてきたという。

高田教授らのグループは研究コンソーシアムを立ち上げ、同志社大学モビリティ研究センターのメンバーとも連携して、路側機からのセンサ情報や信号機からの灯色情報などを、自動運転車両に共有することで視野外の状況を伝えられる、協調型の自動運転支援のためのソフトウェア開発を進めてきた。

なお、レベル4自動運転とは特定の条件・範囲内において、人間の運転手を必要とせずシステム主体で行われる自動運転のこと。運転手が常にハンドルを握り、運転手の責任で行われるものは「レベル2」自動運転として区別されている。また路側機とは、LiDARやカメラなどのセンサ、物体認識処理のための小型のコンピュータ、通信装置を搭載した装置のことを指す。

研究グループが今回公開したのは、車両と路側機、クラウドをつなぐ情報連携を支援するための基盤ソフトウェアだ。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム・自動走行システム(SIP-adus)のプロジェクト内で重点分野のひとつとして扱われている。

このプラットフォームでは、路側機のセンサが提供する「物標情報」と「フリースペース情報」、信号機が提供する灯色情報と残秒数(灯色が変わるまでの残り時間)、さらに自動運転に必要な高精度道路地図が扱え、これまでは独自仕様で出されることが多かったこれらの情報に対して、無線方式にも依存しない共通インタフェースを提供する。

物標情報とは、道路上に存在する物体に関する情報のことで、これには位置座標や大きさ、車両や歩行者といった物体種別、向きなどが含まれる。一方フリースペース情報は、道路上で“物体が存在しない領域”のことで、自動運転車両を通行させても問題ないことがセンサ検知により確定している領域として扱われる。

同プラットフォームは、東京大学柏キャンパス・シャトルバスルートの一部区間で1月13日から実施しているレベル4自動運転プロジェクトで活用されており、実用性・有効性を確認している。この基盤では、信号情報や残り時間、道路上の物体情報などを統合的に扱うことで、都市部における高度な自動運転にも対応するのこと。

  • 柏の葉地域での協調型自動運転を、ダイナミックマップ2.0の導入事例として紹介 (出所:名古屋大ニュースリリースPDF)

    柏の葉地域での協調型自動運転を、ダイナミックマップ2.0の導入事例として紹介 (出所:名古屋大ニュースリリースPDF)

研究グループは、「情報の仕様共通化は、効率的なソフトウェア開発において重要な意味を持つ。今回、ダイナミックマップ2.0をオープンソースソフトウェアとして公開することで、この共通インターフェースを広く誰でも無償で利用可能になる。協調型の自動運転を導入する際のコストを下げ、国内の多くの実証実験地域で使えるようにすることが目的だ」と説明している。

富士ソフトは2023年からこのコンソーシアムに参画しており、協調型自動運転や都市交通分野における社会実装を支援してきた。ダイナミックマップ2.0の無償公開にあたり、同社はプラットフォームの活用を検討する自治体や事業者に対し、要件整理からシステム構築、実証・導入まで技術支援を行い、ダイナミックマップ2.0の社会実装を後押しする。

これにより、ダイナミックマップ2.0をインフラ協調型モビリティにおける共通開発基盤として位置づけ、信頼性と効率性の向上を図りながら、多様なプレイヤーが参加できるエコシステムの形成をめざす。