Appleは10月15日、新しいAppleシリコン「M5」を発表した。第3世代3nmプロセスを採用して製造したSoC(システムオンチップ)で、同日発表の新しい「14インチMacBook Pro」と「iPad Pro」、「Apple Vision Pro」の3製品に搭載。いずれも予約注文を受け付けている。

  • Apple「M5」チップのイメージ

    Apple「M5」チップのイメージ

M5は、「AIパフォーマンスに次なる進化をもたらし、チップのほぼすべての面で進化を遂げた」という、最新世代のAppleシリコン。

“世界最速”をうたう高性能コアを盛り込み、6つの高効率コアと最大4つの高性能コアで構成した最大10コアのCPUを搭載。全体では前世代の「M4」チップよりも最大15%高速なマルチスレッドパフォーマンスを追求している。また、改良した16コアNeural Engineとパワフルなメディアエンジンも搭載。ユニファイドメモリ帯域幅はM4比で約30%増の153GB/sに強化しており、初代「M1」チップ比では2倍以上の増強となる。

M5のメモリ容量は最大32GB(新しい14インチMacBook Proの場合)。32GBモデルであれば、Adobe PhotoshopやFinal Cut Proなどの負荷の高いクリエイティブスイートを同時にシームレスに実行しながら、バックグラウンドで大規模なファイルをクラウドにアップロードできるとしている。

各コアにNeural Acceleratorを備えた次世代の10コアGPUアーキテクチャを導入し、GPUベースのAIワークロードの実行を高速化。ピーク時のGPU演算性能は、M4比で4倍を超えるという。また、M5のGPUのグラフィックス性能も強化し、第3世代のレイトレーシングも提供。これらの組み合わせによって、M4比で最大45%高いグラフィックスパフォーマンスを発揮するとしている。

M5は電力効率のパフォーマンスも高めており、新しい14インチMacBook ProやiPad Pro、Apple Vision Proのエネルギー効率についてはAppleの高い基準をクリア。製品のライフサイクル全体で消費するエネルギーの総量削減にもつなげた。

  • Apple「M5」のグラフィックス。「次世代GPUアーキテクチャ、パワフルなCPU、より高速なNeural Engine、増加したユニファイドメモリ帯域幅により、次のレベルのAIパフォーマンスを解き放つ」とアピールしている

    Apple「M5」のグラフィックス。「次世代GPUアーキテクチャ、パワフルなCPU、より高速なNeural Engine、増加したユニファイドメモリ帯域幅により、次のレベルのAIパフォーマンスを解き放つ」とアピールしている

AI・グラフィックスに最適化した次世代GPUアーキテクチャ

M5の次世代GPUアーキテクチャでは、チップのすべての演算ブロックをAIのために最適化しており、AIパフォーマンスのためのGPU演算性能(ピーク時)は、初代M1と比べて6倍を超えるという。

こうした性能強化のメリットは、M5搭載の新しい14インチMacBook ProとiPad ProでDraw Thingsなどのアプリで拡散モデルを実行したり、webAIなどのプラットフォームを使用して大規模言語モデルをローカルで実行したりといったAI活用のワークフローで発揮されるとのこと。

  • LM Studioアプリの画面。M5のNeural Acceleratorは、LM Studioなどのアプリ内で、デバイス上で実行するGPUベースのAIワークロードのパフォーマンスを向上させられるという

    LM Studioアプリの画面。M5のNeural Acceleratorは、LM Studioなどのアプリ内で、デバイス上で実行するGPUベースのAIワークロードのパフォーマンスを向上させられるという

グラフィックスパフォーマンスについては、M5の次世代GPUと強化したシェーダコアの組み合わせによって、M4比で最大30%高速なパフォーマンス、M1よりも最大2.5倍高速なパフォーマンスを追求。M5にはAppleの第3世代レイトレーシングエンジンを搭載したことで、レイトレーシングを使用するアプリでのグラフィックスは最大45%向上するとしている。

また、再設計した第2世代Dynamic CachingとGPUの組み合わせで、よりスムーズなゲームプレイや、3Dアプリでのリアルなビジュアル、複雑なグラフィックスプロジェクト、ビジュアル処理の負荷が高いアプリにおけるレンダリング時間の高速化を実現。

M5搭載のApple Vision Proでは、マイクロ有機ELディスプレイで10%多いピクセルをレンダリングでき、最大120Hzリフレッシュレート対応で細部がより鮮明になり、表示パフォーマンスもなめらかになることで、モーションブラーが軽減されるといった効果があるという。

こうしたGPUアーキテクチャは、Appleのソフトウェアフレームワークとシームレスに統合できるよう設計しており、Core MLやMetal Performanceシェーダ、Metal 4といった、組み込みのAppleフレームワークとAPIを使用するアプリでは、パフォーマンスの向上が自動ですぐに得られると説明。また、Metal 4でTensor APIを使用してNeural Acceleratorを直接プログラムすることで、開発者がアプリのソリューションをビルドすることもできるとしている。

  • Macでゲーム「サイバーパンク2077」をプレイしているイメージ

    Macでゲーム「サイバーパンク2077」をプレイしているイメージ

AI機能をパワフルにするNeural Engineの高速化/メモリ強化

インテリジェント機能については、M5の高速な16コアNeural Engineによって、高いエネルギー効率でパワフルなAIパフォーマンスを提供できるのを特徴とする。一例として、Apple Vision Proに搭載している写真アプリで2D写真から空間シーンへ変換する機能や、Personaの生成機能といった、Vision ProヘッドセットのAI機能がさらに高速かつ効率的に動作するとしている。

M5の高速なNeural Engineとユニファイドメモリにより、Apple Intelligenceモデル全体のパフォーマンスも強化。Image Playgroundなどのデバイス上のAIツールがより高速になるほか、AppleのFoundation Modelフレームワークを使用するデベロッパも、より高速なパフォーマンスを得られるという。

ユニファイドメモリアーキテクチャでは、チップ全体が大規模な単一のメモリプールにアクセスできるため、M5搭載のMacBook Pro、iPad Pro、Apple Vision Proでは大規模なAIモデルを“完全にデバイス上で実行できる”とうたう。

このメモリ設計はCPUやGPU、Neural Engineの高速化にも寄与するため、アプリのマルチスレッドパフォーマンスが向上するほか、クリエイティブアプリやゲームでのグラフィックスパフォーマンスの高速化、GPUのNeural AcceleratorやNeural Engineでモデルを実行するAIパフォーマンスの高速化にもつながる。

  • Apple Intelligenceを活用する、Macの作文ツールの画面

    Apple Intelligenceを活用する、Macの作文ツールの画面