imecがGaNの300mm化研究を開始

imecは、先進的なパワーデバイスの開発と製造コストの低減を目指す取り組みとして、300mm GaN技術共同開発プログラムを開始したことを発表した。

同プログラムの発足時パートナーには、ファウンドリのGlobalFoundries(GF)のほか、半導体製造装置メーカーの独AIXTRON、米KLA、米Veeco、EDAベンダのSynopsysの5社の名前が挙がっている。

imecにおける300mmウェハハンドリング試験とマスクセットの開発成功を踏まえたもので、imecのGaNパワーエレクトロニクスに関する産業提携プログラム(imec Industrial Affiliation Program:IIAP)の一部に位置づけられており、300mm GaNエピ成長、低電圧および高電圧GaN高電子移動度トランジスタ(HEMT)プロセスフローの開発を目指すとしている。

最先端装置の活用による高性能化も目指す

GaN技術はUSB PDベースの急速充電器への採用で注目を集めるようになったが、シリコンベースの従来技術と比較して、フォームファクタの縮小、軽量化、高い電力変換効率を備えており、最近では車載用オンボードチャージャーやDC/DCコンバータ、太陽光パネル用インバータ、通信・AIデータセンター向け配電システムなどにも活用されるようになってきた。

imecでは、200mm GaNウェハの知識をベースに300mm化を進めるとしており、imecのGaNパワーエレクトロニクスプログラムのフェロー兼プログラムディレクターであるStefaan Decoutere氏は、「300mmウェハへの移行の利点は、生産規模の拡大と製造コストの削減にとどまらない。当社のCMOS互換GaN技術は、最先端の300mmウェハ処理装置の活用により、より高度なGaNベースのパワーデバイスの開発を可能とする」と述べている。

プログラムの手始めに、300mm Si(111)を基盤として、低電圧アプリケーション向けに、横型p-GaN HEMT技術プラットフォームのベースラインの確立を目指すとする。すでにp-GaNエッチングとオーミックコンタクト形成を中心としたプロセスモジュールの開発が進行中で、その後、高電圧アプリケーションへの対応を目指すという。650V以上のアプリケーションでは、300mm SEMIスペックおよびCMOS互換のQSTエンジニアリング基板(米Qromisが開発したGaNエピ成長専用の多結晶AlNコア材料)を活用して開発を進めるが、ウェハの反り制御と機械的強度が最優先事項となるとしている。

  • imecによるp-GaNエッチング後、KLAのCIRCL(光学式ウェハ表面検査装置)ツールで検査されたAIXTRONの300mm GaN-on-Siウェハ (出所:imec),Aimecによるp-GaNエッチング後、KLAのCIRCL(光学式ウェハ表面検査装置)ツールで検査されたAIXTRONの300mm GaN-on-Siウェハ (出所:imec)

    imecによるp-GaNエッチング後、KLAのCIRCL(光学式ウェハ表面検査装置)ツールで検査されたAIXTRONの300mm GaN-on-Siウェハ (出所:imec),Aimecによるp-GaNエッチング後、KLAのCIRCL(光学式ウェハ表面検査装置)ツールで検査されたAIXTRONの300mm GaN-on-Siウェハ (出所:imec)

  • 300mmウェハ上のGaN HEMT用に開発されたマスクセット

    300mmウェハ上のGaN HEMT用に開発されたマスクセット (出所:imec)

imecでは、2025年末までに同社の300mmクリーンルームに300mm GaNに対応する製造能力を導入する予定としており、200mm GaNの取り組みで得られた設計、エピ、プロセス統合、アプリケーションの緊密な連携の実演に向けて、さらなるパートナーの参加を促していくとしている。

なお、欧州の動向としてはInfineon Technologiesが先行する形で、既存の300mm Siパワーデバイス用生産設備にて300mm GaNウェハベースのパワーデバイスの試作に成功したことを明らかにしている。