NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)は10月9日~10日、展示イベント「docomo business Forum'25」を東京都内のホテルで開催中だ。初日となる9日には代表取締役社長の小島克重氏が基調講演でAI-Centric ICTプラットフォームの方向性を示したほか、メディアの前に登場し記者からの質問に対応した。
同社のAI-Centric ICTプラットフォームと、7領域のテクノロジーロードマップはすでに小誌でも紹介しているので、本稿では特にパートナー企業との共創事例について、小島氏の基調講演の中からピックアップしてお届けしたい。
業務・業界特化のAIエージェントを200種提供予定
NTTドコモビジネスは5月に、AIを利活用したサービスを開発するエクサウィザーズと資本業務提携を開始し、「文書作成」や「データ分析」など業務に特化した20種のAIエージェントを提供している。
2026年度にはこれを「金融」「製造」「物流」など業界特化のAIエージェントにも拡張し、200種まで増やして提供する予定だという。これにより、顧客企業の要望に合わせて必要なAIエージェントを組み合わせてソリューション化できるようになる。生産性向上や競争力の強化に貢献する。
国境や業界を超えたバリューチェーンをデータ連携で実現
グローバル規模でのIoT利用に向けては、建設・鉱山機械を展開する小松製作所(以下、コマツ)との取り組みが進んでいる。コマツは建設機械の保守などアフターフォローマーケットを拡大するため、グローバルでの情報収集を必要としていたという。
これに対しNTTドコモビジネスは、海外のエリアごとにIoT回線を効率的にマネジメントするソリューションを提供。この回線管理プラットフォームにより、SIMの通信管理や運用の自動化、データ分析など詳細なコントロールが可能になった。
同社は業界を横断したデータ流通も支援する。自動車産業のデータスペースであるCatena-Xのオンボーディングサービスプロバイダ認定を日本で初めて取得し、国境を越えたバリューチェーン全体でのデータ連携を可能としている。ここでは、NaaS(Network as a Service)として提供する「docomo business RINK」が活用されている。
「こうした動きは、経団連から『産業データスペースの構築に向けた第2次提言』が発表されたように、国内でも活発になっている。当社はAI-Centric ICTプラットフォームを活用して、世界中で産業データスペースを利用しているお客様に対して安心・安全な相互接続を提供していく」(小島氏)
自動運転・モビリティ向けのネットワークにも注力
地域の公共交通においては運行業務の担い手不足が進み、運転者の確保が社会課題となっている。これに対し同社は、公共交通機関の利便性の向上と社会課題を解決するため、自動運転の実証実験を各地で実施している。
トヨタ自動車とも、交通事故のない社会の実現を目指してモビリティ・AI・通信を活用した取り組みを共同で進めているという。
「docomo business Forum'25」の展示ブースでは、自動運転を支える途切れない通信を実現する自動運転モビリティ向けの通信安定化ソリューションのデモが披露される。今後は建設機械やロボットなど、移動しながら通信を必要とするさまざまな領域に同ソリューションを展開する予定だ。
また、労働力人口が減少する社会課題に対し、同社はロボットとAIとネットワークを組み合わせた三位一体のプラットフォームを提供する。昨今はロボットが単体で稼働するだけでなく、フロア内やビル内で複数のロボットが協調して稼働する事例が増えてきた。
こうした状況の中で同社は、異なるロボットをつなぐプラットフォームを提供し、ロボットが活躍するエリアをさらに広げ、AIを活用したリアルタイムな状況把握やマルチロボット制御を実現する。
基調講演の中で小島氏は、川崎重工業とロボット・モビリティ・社会インフラなどのネットワーク連携による新しい社会の創造に向けた取り組みを推進するため、戦略的協業に関する覚書を締結したことを発表した。
同氏は川崎重工業との共創の意義について、「複数のロボットメーカーがある中で、川崎重工はソーシャルロボットを強みとしている。また、両社は共にオープンな開発環境を目指しているので、AIとロボットをオープンに組み合わせてより良いものを作れると考えた」と記者向けに説明していた。
小島氏は「当社はAI時代に最適化されたAI-Centric ICTプラットフォームを通して、さまざまな産業や地域が抱える課題を解決し、驚きと幸せに満ちたサステナブルな社会を実現していく」と述べ、講演を締めくくった。





