NECは6月1日、「2030中期経営計画」の理解促進を目的とした説明会「NEC IR Day 2026」を開催した。説明会は「ITサービス」と「社会インフラ」の2部構成で実施され、本稿では社会インフラ事業に関する発表内容を紹介する。

登壇したのは、執行役 Corporate EVP 兼 COO(社会インフラ事業担当)の永野博之氏、Corporate SVP 兼 ネットワークソリューション事業部門長の佐藤崇氏、Corporate SVP 兼 海洋システム事業部門長の植松智則氏。

NECは社会インフラ事業を「防衛」「デジタルインフラ」「サイバーセキュリティ」の3領域で強化し、経済安全保障市場の拡大を成長機会と捉えている。

説明会では、近年、世界各地で地政学リスクが高まり、防衛や通信インフラ、経済安全保障への投資が拡大していることに触れ、こうした環境変化を追い風と捉え、防衛、海底ケーブル、通信インフラ、航空宇宙分野を今後の成長領域として強化していく方針を示した。

 経済安全保障への投資拡大が追い風に

現在、社会インフラ事業を取り巻く事業環境は大きく変化している。

ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢などを背景に、安全保障への関心は世界的に高まっているのに加え、サイバー攻撃の高度化や自然災害の激甚化を受け、社会基盤そのものの強靭化も重要な経営課題となっているのだ。

NECはこうした変化について「安全・安心」への投資が今後も継続的に拡大すると分析している。

従来、防衛やインフラ整備はコストとして捉えられることも多かった。しかし現在は、国家競争力や経済安全保障を支える重要な戦略投資へと位置付けが変わりつつある。

長年にわたり通信インフラや社会基盤システムを手掛けてきたNECは、その技術基盤と実績を生かしながら、社会インフラ領域でさらなる成長を目指す考えだ。

  • 社会インフラ事業を取り巻く事業環境について説明する永野氏

    社会インフラ事業を取り巻く事業環境について説明する永野氏

防衛事業への期待が拡大

防衛予算の増額が進み、防衛装備や情報システムへの投資が拡大している中、今回の説明会で特に存在感を示したのが「防衛事業」である。

NECは、レーダーシステム・指揮統制システム・通信システムなどの分野で実績を持っている。今後は装備単体の提供だけでなく、複数のシステムを連携させた統合ソリューションの提供を強化する。

NECは防衛ICT領域のトップ企業を目指し、指揮統制や情報関連機能などの領域で事業拡大を進める。また、政府方針に基づく装備移転やデュアルユース製品の海外展開も強化する方針だ。

その一例として、2026年4月にはオーストラリア海軍の次期汎用フリゲート艦向け大型案件を受注した。契約額は2.7億豪ドルで、3隻分の通信機器やセンサーなど9種類の装備品を供給する。

防衛分野では近年、ソフトウェアの重要性が急速に高まっている。

従来の防衛装備はハードウェア中心だったが、現在では高度な情報処理や状況分析、意思決定支援を担うソフトウェアが競争力の源泉になりつつある。その背景を踏まえて、NECはAIやデータ分析技術を活用しながら、防衛分野における付加価値向上を図る考えを示した。

海底ケーブル需要が急拡大

NECの社会インフラ事業を語る上で欠かせないのが「海底ケーブル事業」である。現在、海底ケーブル市場は世界的に需要拡大が続いている。

「世界の国際通信の約99%は海底ケーブルによって支えられています。動画配信サービスやクラウドサービスの利用拡大に加え、生成AIの普及によって世界中でデータ流通量が急増しています」(植松氏)

  • 海底ケーブルについて説明する植松氏

    海底ケーブルについて説明する植松氏

海底ケーブルの需要が拡大している中、NECは海底ケーブルの設計、製造、敷設までを一貫して手掛ける数少ない企業だ。近年ではアジア、北米、欧州を結ぶ大型案件も増加しており、今後も積極的に受注拡大を図る。

NECは海底ケーブル市場において、2030年までに世界シェア35%の獲得を目標に掲げる。2024年度までのシェアは25%で、アジア・太平洋地域を中心に受注拡大を進める考えだ。

2025年にはアジア・太平洋地域で大型案件を2件受注した。日本とシンガポールを結ぶ「Candle」は総延長約8,000km、24ファイバーペア構成を採用するほか、「AUG East」は総延長約8,900kmで最新の光伝送技術による大容量通信を実現するという。

5Gから6Gへ 通信インフラの高度化を支援

さらに「通信インフラ事業」もNECが注力する重要な事業領域である。

現在は5Gの普及が進む一方で、すでに次世代通信規格である6Gを見据えた研究開発やインフラ整備も始まっている。

NECは通信機器の提供だけでなく、ネットワーク運用の自動化、省電力化、オープンRANなどの領域にも注力している。

通信事業者を取り巻く経営環境は依然として厳しいが、データ通信需要は今後も拡大が続く見通しだ。NECはネットワーク運用の効率化や省エネルギー化を支援することで、通信事業者の競争力向上に貢献していく考えを示した。

  • 2030中期経営計画の確実な実行に向けて 通信インフラ事業

    2030中期経営計画の確実な実行に向けて 通信インフラ事業

航空宇宙分野でも成長機会を狙う

「航空宇宙分野」もNECにとって成長領域の一つだ。航空宇宙分野では国内市場に加え、東南アジアなど需要拡大が見込まれる海外市場への展開を進める方針を示した。

また、中長期的には複数の小型衛星を連携させる「衛星コンステレーション」事業の事業化も検討しており、宇宙分野を次世代の成長領域として位置付ける。

近年は衛星通信や宇宙関連ビジネスへの投資が世界的に活発化している。災害対策や安全保障、通信ネットワークのバックアップなど、宇宙インフラの役割は年々大きくなっている。

今後は人工衛星や地上局システムなどの分野で技術を蓄積してきた知見を生かし、新たな市場機会の獲得を目指す。

社会インフラ企業としてグローバル成長を目指す

今回の説明会を通じて見えてきたのは、NECが社会インフラ企業としての存在感をさらに高めようとしている姿である。

これまで社会インフラ事業は、通信や公共システムといった国内市場中心のイメージが強かった。しかし現在は、防衛、海底ケーブル、通信インフラ、宇宙といった分野が世界規模で成長を続ける市場へと変化している。

NECが成長領域として位置付けるのは、防衛、海底ケーブル、通信インフラ、航空宇宙だ。特に防衛分野では海外展開を進め、海底ケーブルでは2030年に世界シェア35%を目指す。経済安全保障への投資が拡大する中、同社はこれらの領域を成長エンジンとして事業拡大を図る。