NTTドコモビジネス(旧 NTTコミュニケーションズ)とNTTは10月8日、自動運転車両のように移動しながら安定した通信を必要とするモビリティ向けの通信安定化ソリューションをパッケージ化して提供開始することを発表し、記者説明会を開いた。同ソリューションは自動運転レベル4の遠隔監視を支えるものとなる。
取り組みの背景
昨今は地域の公共交通における運行業務の担い手不足が深刻化しており、特に地方では運転者の確保が課題となっている。帝国データバンクの調査によると、主要な路線バス事業者でも80%以上が、減便や廃止を実施したという。
こうした状況に対し、自動運転レベル4(特定条件下でシステムが完全に運転を実施)の社会実装に向けた取り組みが全国で進められている。NTTドコモビジネスとNTTはこれまで、全国で自動運転の実証実験に参画し、自動運転レベル4の社会実装に必要となる遠隔監視での通信の安定化に取り組んできた。
しかし、自動運転レベル4が普及するためには、車両を安全に運行するために車両の状態や周辺環境を遠隔地から把握する環境が欠かせない。また、運行には都道府県公安委員会の認可を受け、自動運転運行主任者(遠隔監視者)を置いて道路交通法を順守する必要がある。
自動運転の通信においては、高速かつ複雑な交通環境を車両が移動するため高頻度で基地局を切り替える必要があるほか、遮蔽や混雑など電波環境が不安定なエリアで走行する場合もあるため、遠隔監視を実現するためには途切れない通信環境の確保が求められている。
さらに、これまでは通信品質の安定化を実現するために必要な複数の技術が個別に提供されていたことから、導入時のリードタイムとコストが課題となっていた。NTTドコモビジネスとNTTは、モビリティ向けの通信安定化ソリューションに関する技術実証の成果を受け、自動運転の実証実験や社会実装を目指す企業向けにソリューションの提供を開始する。
通信安定化ソリューションの概要
今回提供を開始するサービスは、公衆ネットワーク / LTEやローカル5G、Wi-Fiなど無線の品質を予測する技術「Cradio」、Cradioの予測結果に基づいて最適な回線にデータを振り分け通信を安定させる「協調型インフラ基盤」、車両のカメラやセンサーから取得した異なる形式のデータを遠隔監視システムにリアルタイムに伝送するシステム「intdash」という、3つの技術をパッケージ化して提供する。
自動運転車両と遠隔監視システム間を複数回線でマルチパス接続を行うとともに、無線品質の変化を先回りで予測してマルチパスを制御することで、遠隔監視の映像が途切れるリスクを抑制する。
また、リアルタイムなデータ連携のシステムを用いることで、走行データや車載センサーの検知情報、AI画像解析の結果などの複数データを遠隔監視システムへ連携できるようになる。
3つの技術を組み合わせてパッケージ化することで、自動運転の社会実装を目指す自治体などに対し導入時のリードタイム短縮を図る。担当者によると、従来の個別設計の場合は約3カ月を要していたリードタイムを、およそ1カ月間まで短縮できる見込みだという。
自動運転の実現に向けては、遅延時間400ミリ秒以下の実現が求められる。NTTドコモビジネスの実証の結果によると、これらの技術を適用しない場合は、遅延400ミリ秒以下の割合が1回線目が92%、2回線目が53%だった。対して新技術を適用した場合はその割合が99%と、目安水準を満たすことが確認されたとのことだ。
デモでネットワークが途切れないことを実証
下の写真は、10月9日~10日にザ・プリンスパークタワー東京(東京都 港区)で開催される「NTT docomo Business Forum'25」で披露される予定の、デモの様子だ。左側の画面が通信安定化ソリューションを使用したもの、右側の画面が単一のキャリア回線を使用したものを模している。会場に設置したカメラの映像をクラウド上で処理し、ブラウザで閲覧している。
通信安定化ソリューションを使用していない方の車載ルータを遮蔽すると、通信が途切れてしまった。しかし、左側の通信安定化ソリューションを使用している方の車載ルータのうち一つを遮蔽しても、他のネットワークが使われることで映像は途切れなかった。
NTTドコモビジネスでスマートシティを担当する多良康孝氏は「これらの技術は建設機械やロボットなど、モビリティ全般の遠隔操作や自動化に適用してきたい」と、将来性を語った。







