三菱電機は6月12日、第5世代移動通信システム(5G)の強化および第6世代移動通信システム(6G)へのスムーズな移行を担う“5G-Advanced”基地局の実現に向け、高レベルの電力効率を有する7GHz帯GaN増幅器モジュールを開発し、5G-Advancedで使用される通信信号を用いた同モジュールの性能実証に成功したことを発表した。

  • 発表の概要

    5G-Advanced基地局と開発されたGaN増幅器モジュールの関係(出所:三菱電機)

5G-Advanced基地局実現に貢献する高効率増幅器モジュール

5Gの発展版となる5G-Advancedは、超高速大容量・超低遅延・多数同時接続を特徴とし、2023年に規格化された後、2025年から段階的に導入が開始される。その普及に不可欠な5G-Advanced基地局は、多数同時接続を実現するため、複数のアンテナを協調動作させて任意の方向に電波のビームを形成しており、その際に周波数で決まる波長の長さに応じてアンテナを配置することで、ビーム方向の精度を高めるという。

ただし現在4Gや5Gで主流とされるものに比べて高い周波数帯(6.425GHz~7.125GHz)を使用する5G-Advancedでは波長が短いため、各アンテナの配置間隔が狭くなるとともに、各アンテナと対をなして裏面に実装される各増幅器モジュールの配置間隔も狭くなるため、モジュールの小型化が課題とされていた。また増幅器は特に発熱による電力損失が大きいことから、低消費電力化による省エネ実現も求められている。

そこで三菱電機は、こうした課題を解決するため、独自の整合回路技術と同社製高性能GaNトランジスタを採用した7GHz帯GaN増幅器モジュールを開発。そして、5G-Advancedで使用される通信信号を用いた同モジュールの性能実証に成功したとする。

今回のモジュールでは、GaNトランジスタの寄生成分を整合回路の一部として利用する独自技術を適用し、寄生成分による電力効率の劣化を抑制。またGaNトランジスタも高効率製品を採用しており、5G-Advancedで求められる水準を上回る電力効率41%を実現したとのことだ。

三菱電機によれば、同モジュールは12.0mm×8.0mm(開発試作品の外形サイズ)と小型であり、各部品の高密度実装が可能になるため、5G-Advanced基地局の設置性向上に寄与するとのこと。同社は今後、2025年以降の実用化に向けた研究開発を進めることで、5G-Advanced基地局の実現に貢献していくとする。

なお今回の開発成果の詳細は、6月15日から20日まで米・カリフォルニア州サンフランシスコで開催される国際会議「IEEE International Microwave Symposium(IMS) 2025」にて発表される予定だ。