エアコン室外機の低消費電力化を可能とするIPMを開発

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月15日、三菱電機がエアコン室外機の中に搭載されるコンプレッサー駆動用インバーター回路基板の電力消費量を削減できるSiCパワー半導体採用のインテリジェントパワーモジュール(IPM)を開発したことを発表した。

  • エアコンの室内機と室外機の構成イメージ

    エアコンの室内機と室外機の構成イメージ (出所:NEDO)

この取り組みは、NEDOの助成事業「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」を通じて三菱電機が2021年度より取り組んできたもので、エアコンの消費電力量削減する技術開発として、シリコンベースのパワー半導体チップよりも、高い効率改善が期待できるSiCパワー半導体チップを搭載することを目指したものだという。

SiCとSiパワー半導体を並列接続し、互いの良いとこどりを実現

具体的には、単純にSiパワー半導体チップをSiCパワー半導体チップに置き換えるのではなく、Siパワー半導体チップとSiCパワー半導体チップを並列接続し、エアコンの動作状態に応じて両方のチップの特性を引き出せる技術を開発。並列接続素子に適した新たな駆動回路ICとパワー半導体チップを同じモジュール内に収める実装技術の開発を進め、これらの技術を集積したIPMとすることに成功したとする。

  • 開発されたIPM

    開発されたIPMとそれに搭載されたSiCパワー半導体ならびに6インチSiCウェハ (出所:NEDO)

実際に、開発されたIPMの試作品動作特性から推定したエアコン動作条件で試算した結果、Siパワー半導体チップのみを搭載した従来IPMのコンプレッサー駆動用インバーター回路部と比較して年間消費電力量を41%削減できることが確認されたという。また、新開発のIPMの外寸は、従来のSiパワー半導体チップ搭載品と同一であるため、従来のIPMを搭載している既存基板での置き換えも容易に行えるという。

なお、今回の成果を踏まえ、三菱電機では4月22日より主にエアコンなどへの搭載を目標として、開発したIPMのサンプル出荷を開始し、2027年度を目標年度とする新省エネ基準達成に協力していくとしており、NEDOではこうした取り組みを通じて2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、家電分野における温室効果ガスの排出量削減に貢献するとしているほか、今後も経済成長と両立する持続可能な省エネルギーの実現を目指し、「省エネルギー・非化石エネルギー転換技術戦略」で掲げる産業・民生(家庭・業務)・運輸部門などにおける重要技術を中心に、2040年に高い省エネ効果が見込まれる技術の開発について、事業化までシームレスに支援していく予定としている。