経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は11月27日、三菱電機と湘南工科大学が、高周波入力信号をAIでデジタル制御する機能を備えたポスト5G基地局向けGaN増幅器を開発し、動作実証に成功したことを発表した。

第5世代移動通信システム(5G)は、2025年ごろにポスト5Gと呼ばれる高速・大容量通信に移行することが予想されている。

そうしたポスト5G向け基地局の実現には「高品質なデータを一度に大量送信する技術が不可欠になる」とNEDOは説明する一方で、このポスト5G基地局の実現のためには、無線部を構成する増幅器の広帯域動作を確保することが不可欠になるとしている。そこでNEDOのIoT推進部は2020年度から2023年度までの4年間に「ポスト5G情報通信システム基盤強化兼空開発事業」を推進し、その事業の中で三菱電機と湘南工科大学には2020年10月から先導研究「基地局増幅器のための広帯域化回路技術の研究開発」を委託。その先導研究を実施した結果、三菱電機と湘南工科大学は「AIデジタル制御機能を備えたGaN増幅器の開発」と「高速評価システムの構築」を実現したとする。

具体的には、ポスト5G向け「AIデジタル制御機能を備えたGaN増幅器の開発」として、従来の1入力型構成ではなく、2入力型構成の採用が有効になると考えられていたものの、その実現には、2つの高周波入力信号を動作周波数や出力電圧レベルなどに応じて最適に制御する必要があったという。今回の研究では、独自の評価関数に基づき、GaN増幅器への2つの高周波入力信号を、三菱電機のAI技術を活用して、AIによるデジタル制御とすることで、ポスト5Gで求められる動作効率40%以上を維持しつつ、ひずみ性能(ACLR)が-45dBcと動作周波数帯域幅4000MHzを両立したGaN増幅器の動作実証に成功したと説明する。NEDOでは「この開発によってポスト5Gの基地局向け基盤技術開発にめどをつけた」としている。

また、併せて開発した2つの入力端子を備えたGaN増幅器の性能を短時間で評価できる高速評価システムの構築にも成功したともしており、評価回数約18万回に必要な時間を従来の100分の1に当たる30秒以下にできたとする。

これらの結果、無線部を構成する増幅器の広帯域動作に関する課題が解決されることとなり、複数の周波数帯でも、1台のGaN増幅器で低ひずみの高周波信号を出力可能になったことから、「この開発成果を基にしたポスト5G情報システムの中核をなす基地局に実装できる見通しが得られた」とNEDOではコメントしている。

なお、三菱電機では、この研究開発成果を基にポスト5G向け基地局用GaN増幅器の実用化に向けた研究開発を継続し、2028年以降の事業化を目指すとしているほか、湘南工科大学も、ポスト5G基地局における無線部の基礎研究を継続していくことで、通信インフラを担う次世代の技術者の育成、産業の発展に貢献することを目指すとしている。

  • 開発されたAIデジタル制御機能を備えたポスト5G向け基地局用GaN増幅器のイメージ図

    開発されたAIデジタル制御機能を備えたポスト5G向け基地局用GaN増幅器のイメージ図 (出所:NEDO)