STがシンガポールでのLiF型研究開発を拡大
STMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)のInstitute of Microelectronics(IME)および日本の半導体製造装置メーカーであるULVAC(アルバック)と協力し、シンガポールにおける「Lab-in-Fab(LiF)」型研究開発を拡大し、「Lab-in-Fab 2.0」へと発展させることを発表した。
3者のLiF型研究開発に関する取り組みは2020年より進められているもので、圧電式MEMS技術に特化した8インチ(200mm)ウェハの研究開発用ラインをSTのシンガポール工場(アンモキョ工場)に設置して、運用することで、概念実証から製品開発、そして量産への期間短縮を図ることを目指してきた。
この取り組みを通じて、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)薄膜を形成する物理気相成長(PVD)法を発展させることに成功。鉛含有量を従来のバルク圧電技術と比べて削減できるようになり、その成果を踏まえ、今回の拡張がなされることが決定したという。
環境に優しい鉛フリー圧電材料の開発と高コスト小型センサ/アクチュエータの開発を推進
今回の協業拡大では、A*STAR物質材料工学研究所(A*STAR IMRE)およびシンガポール国立大学(NUS)とのプロジェクトを実施することで、環境に優しい鉛フリー圧電材料の開発推進と、コスト効率に優れた小型のセンサおよびアクチュエータの実現を目指すとする。
また、この取り組みを通じて、高等教育機関やスタートアップ企業、中小企業、多国籍企業が包括的な製造ラインを活用する形で圧電MEMSの製品化までの期間を短縮できるようになり、そうした製品としては、3Dマッピングおよびイメージング向け圧電MEMSの超音波トランスデューサ(PMUT)や、パーソナル電子機器向け小型スピーカ、スマートフォンのカメラモジュール向け自動焦点デバイスなどが想定されるとしている。
また、高等教育機関については、Lab-in-Fabの先進材料やデバイスプラットフォームをベースとしたマルチ・プロジェクト・ウェハ(1枚のウェハに複数の企業のチップを集積するプロジェクト)・サービスの提供による支援も推進しているとする。
圧電MEMSを研究開発の重点領域の1つに据えるシンガポール
なお、圧電MEMSは、シンガポールの研究開発における重点領域の1つだという。この他の重点領域としては、異種集積技術に基づく先端パッケージング技術、SiCやGaNといったワイドバンドギャップ半導体、ミリ波RF(無線周波数)技術、先進フォトニクス(フラット・オプティクスとフォトニクスの異種集積技術など)があり、これらの重点領域は、イノベーション主導の経済および社会に向けたシンガポールの発展に貢献する技術として、シンガポールの「研究・イノベーション・企業2025計画」(RIE 2025)で指定されているという。