PFUは4月21日、クラウド型AI-OCRサービス「PaperStream AI」、およびバックオフィス業務の効率化を支援する「ドキュメントDX」の提供を開始することを発表した。

社長の平原英治氏は説明会において、「当社はハードウェアだけでなくソフトウェアも提供することで、スキャナ読み取りの後工程まで支援を広げてきた。本日発表するサービスもこの延長線上にある。従来のスキャン領域から非定型フォーマット読み取りと、その後のワークフロー連携まで領域を拡大する。当社の強みである高品質なイメージ入力と、AIを組み合わせて、さまざまなデータをAIが活用できる構造化データに変えていく」と紹介した。

  • PFU 代表取締役 社長執行役員 平原英治氏

    PFU 代表取締役 社長執行役員 平原英治氏

なぜ紙の帳票はなくならないのか?人手不足でも残る理由

現代は労働人口の減少が進み、AI活用は実証から実運用へと移行しつつある。しかし、現場には紙を用いたアナログ業務も多く残っており、AIが活用できる社内のデータは、電子化された証票や文書に偏っている課題がある。

また、現場にある資料のデータ化が進まないことで、早ければ2026年にはAIの学習データが枯渇するとも指摘されている。

さらに、企業内で扱われるデータの多くは非構造化データであり、そのままでは分析やAIによる活用が難しい。紙で届く請求書や契約書など、現場に残されている紙データがAI活用を阻害する要因となっている。

「デジタル化の窓口」を運営するクリエイティブバンクの調査によると、紙の書類を扱う理由として、「仕入先が紙・FAXを求める」(36.8%)、「顧客が紙・FAXを求める」(33.1%)などが多く挙げられ、企業間で連鎖する構造的な課題により、現場での紙の作業が残っていることがうかがえる(クリエイティブバンク「会社員1,061名に聞く「職場の書類とデジタル化」実態調査」)。

  • 紙の書類を扱う理由(資料:PFU)

    紙の書類を扱う理由(資料:PFU)

紙の帳票をどうデジタル化する?PFUの「ドキュメント AI Ready」とは

こうした課題に対しPFUのドキュメントイメージ事業では、独自の画像処理技術を搭載した業務用イメージスキャナ、自社開発のAI-OCR、業務課題の発見からソリューション提供まで対応可能なSE(システムエンジニア)によって、アナログからデジタルへの移行を支える。

常務執行役員の宮内康範氏は「AIを成長させるためには、どのようにデータを整理し、どのデータをどう活用するのかを設計することが非常に重要。企業のAI活用が遅れている背景について、データが不足しているわけではなく、AIが活用できる形式のデジタルデータを準備できていないだけ」だと指摘した。

  • PFU 取締役 常務執行役員 宮内康範氏

    PFU 取締役 常務執行役員 宮内康範氏

そこでPFUは、「ドキュメント AI Ready」構想をコンセプトとして打ち出す。このコンセプトは紙のデータを構造化データに変え、AIを活用した業務変革を提案するというもの。

具体的には「紙から高品質なイメージを生成する電子化」「電子化したデータをAIが使えるデータに変換する構造化」「AIを活用した最適な業務プロセスを設計する業務変革」までの3つの段階で支援する。

  • PFUの「ドキュメント AI Ready」構想

    PFUの「ドキュメント AI Ready」構想

「単にAIを導入いただくことが事業の目的ではない。企業のデータ基盤や基幹システム、現場の作業の流れを変更することなく、現場の業務変革を進める。当社がこれまでお客様の現場に寄り添ったサービスを提供してきたからこそ打ち出せる事業構想だ」(宮内氏)

PaperStream AIで帳票処理はどこまで削減できる?最大97%の効果

クラウド型AI-OCRサービス「PaperStream AI」は、「ドキュメント AI Ready」構想の2段階目に相当する「データ構造化」に寄与するサービスだ。4月21日から販売開始し、提供開始は5月14日の予定。

同サービスは生成AIを活用して、請求書や注文書など取引先ごとに異なるレイアウトの非定型帳票を読み取り、金額や日付などの項目を自動で抽出する。帳票全体の構造把握と高精度な文字認識技術により、同社の評価によると99.99%の認識精度を記録したという。

  • 画像処理技術と生成AI技術を組み合わせたという

    画像処理技術と生成AI技術を組み合わせたという

帳票全体を把握する技術により、従来のOCRでは認識が困難だった、軽減税率対象品目の横に「※」がつく帳票など枠外の情報も考慮した処理を可能としている。

  • 文字を読み取るだけでなく枠外の情報も加味した処理が可能

    文字を読み取るだけでなく枠外の情報も加味した処理が可能

さらに、複数のOCRエンジンと生成AIを組み合わせて並列処理を行う技術を搭載。一般的なクラウド型AI-OCRサービスのように「OCRの認識が完了するまで待ってから確認する」のではなく、OCRの進行に合わせて確認や修正を同時に進行できる。

同社によると、一定条件下では、一般的なクラウド型AI-OCRサービスが30ページの帳票を読み取ってから確認・修正するまでに40.6分を要するところ、PaperStream AIでは51秒と、待ち時間を98%削減可能とのことだ。

  • OCR待ちの時間を約98%短縮している

    OCR待ちの時間を約98%短縮している

加えて、複数部門で共用する運用にも対応し、例えば、営業部門と経理部門でそれぞれスキャナや「PaperStream Capture Pro / Capture Pro Premium」を利用している場合、それぞれの業務で行われた修正内容が帳票種ごとに蓄積・学習され、部門をまたいで認識精度の向上に使われる。

この学習は自社の運用データをもとに行われるため、他企業の影響を受けないとのことだ。少量の処理のみを行う部門にも展開しやすく、全社で入力業務の効率化と投資効果の最大化を図れる。

同社が先行して実施した実証の結果によると、月間5000ページを処理する業務において、年間で約1万9140時間の短縮、金額にして約3704万円、実に約97%のコスト削減効果が確認されたという。入力工数は11人月から、1人月へと削減された。

  • PFUによる実証の結果

    PFUによる実証の結果

提供ライセンス体系はすべて年額(税別)で、年間に処理したいページ数に応じてS(30万円:1万ページまで)、M(100万円:5万ページまで)、L(200万円:20万ページまで)の3プランを提案する。

  • 提供するライセンス体系

    提供するライセンス体系

ドキュメントDXとは何か?業務改革まで支援する仕組み

もう一方の、DX支援サービス体系「ドキュメントDX」は、企業内に残る紙や画像などの文書情報を業務で使えるデータに変換し、バックオフィス業務の効率化を促進する。「ドキュメント AI Ready」構想では3段階目の「業務変革」の支援に相当するサービスだ。

PFUのSEが顧客の業務と文書の棚卸しから、業務プロセスの再設計やシステム導入、その定着までを伴走型で支援する。具体的には、これまでに200社以上の業務デジタル化を手掛けてきた専門SEが、「業務棚卸し」「プロセス見直し」「最適なソリューションの導入」の3つのステップで伴走しながら支援する。

  • 「ドキュメントDX」のサービス概要

    「ドキュメントDX」のサービス概要

単に紙の束を電子化するだけではなく、現場の業務でデータ活用できるまでの変革を支援し、レガシーな既存のシステムとも連携しながらバックオフィス業務を効率化する。

  • デバイスやシステムの選定もサポートする

    デバイスやシステムの選定もサポートする

同社経理部門の請求書処理業務にドキュメントDXサービスを適用したところ、これまで全件を目視チェックしていた業務にAIを活用し、社員からの申請とAIの読み取り結果が不一致の場合にのみ担当者がチェックする仕組みを構築し、年間1250時間の削減に成功した。金額にして、年間約540万円の削減効果だ。

  • PFU経理部門での実証結果

    PFU経理部門での実証結果

業務およびドキュメントの整理と課題抽出は、1業務当たり100万円(税別)。その結果に応じた最適なソリューション提案および提供については、個別の見積もりが必要となる。