太陽ホールディングス(太陽HD)は5月20日、都内でエレクトロニクス事業戦略に関する説明会を開催し、新開発の次世代放熱ペースト材料の紹介などを行った。
太陽HDの全社売り上げの半数以上を稼ぐ「エレクトロニクス事業」
同社は「エレクトロニクス事業」、「医療・医薬品事業」、「ICT&S(Sustainability)事業」の3つの事業を書くとしており、このうち、エレクトロニクス事業は電子部品用化学品部材の製造・販売を担当しており、中でも半導体パッケージ基板用ソルダレジストで強みを有している。
同社の2025年3月期の全社売上高は1190億円、そのうちエレクトロニクス事業の売り上げは817億円と過半を占める規模で、海外比率は96%となっているとする。内訳としては、中国が59%、韓国が18%、台湾が10%、日本が4%、その他が9%となっており、開発・製造拠点も国内のみならず、中国、米国、韓国、台湾、ベトナムに有しており、2023年12月には中国にグループ初の研究開発センターも開設している。
半導体/組み込みに欠かせないソルダレジスト
ソルダレジストは、プリント基板の表面を覆うことで回路パターンを保護する絶縁膜を形成するインキで、主に不要部分へのはんだの付着防止、ほこりや熱、湿気などからの回路パターン保護、回路パターン間の電気絶縁性の維持などといった役割を担っており、同社のエレクトロニクス事業のプリント基板向け売り上げとして半導体パッケージ基板が33%を占めるほどに成長しているとする。
成長する半導体市場の流れに乗れるように同社としても、既存のプリント基板向け市場でのシェアの維持・拡大を図りつつ、製造企業がまだ少ないドライフィルムを武器に半導体パッケージ基板向けで攻勢を仕掛けるとともに、売り上げの6%にとどまっているフレキシブル基板向けソルダレジストの拡販を進めることで、事業規模の拡大を図っていくことを目指すとする。
また、新規事業の創出や新たな用途への展開も同時に進めて行くことで、さらなる技術の適用範囲の拡大なども進めていき、次世代の成長につなげたいともする。
2024年4月に新たな技術開発センターを開設
こうした新規技術の開発や新たな用途への展開に向けて、同社は2024年4月に技術開発センター「InnoVally」を開設。今後、同センターで開発された技術などを活用することで、さまざまな新製品を生み出していきたいとする。
InnoVallyは、最先端の装置に加え、知的生産性の向上やコミュニケーションの活性化を図るための仕掛けなどを各所にちりばめることで、ものづくりのみならず、人づくりにも主眼が置かれており、1~3階をラボエリア、4~6階をオフィスエリアとし、実際に内部で働く従業員からの意見を取り入れる形で、実験室を回遊するための導線なども工夫が施された作りを採用することで開発スピードの向上を実現するなど、さまざまな仕掛けが施されているという。
InnoVallyから生まれた新製品第1弾となる放熱ペースト材料
こうした工夫を取り入れたInnoVallyでは、基礎研究から処方開発、プロセス開発、製品開発まで一貫して行う体制を構築。スピーディに製品開発を行うことを可能としたということで、2025年2月に、同センターで開発された技術を活用した第1弾製品となる次世代放熱ペースト材料「HSP-10 HC3W」を上市した。
同材料はソルダレジストではなく、交流を直流に変換するチャージャーコンバータで活用される放熱ペースト。すでに大手自動車メーカーが採用を決定済みとするほか、同社ではさまざまなエレクトロニクス製品の高性能化が進む中で、大電流で処理する際に問題になってくるパワー半導体で発生する熱をどう逃がすかといった課題を解決することができるため、幅広い産業分野で活用されることが期待できるとしている。
同材料の特長は、従来のパワー半導体とヒートシンクの間に塗られるTIM(Thermal Interface Material)材料では、熱をよく伝えるためのフィラー(充填剤)が含まれ、表面が粗くなり、ヒートシンクと塗膜の接触面積が減少し、機械強度などの課題を解決することを可能とした点。パワー半導体を搭載した基板側に同材料を塗り付け、その上にヒートシンクを搭載することが可能となるほか、塗布時間の短縮や無溶剤とすることで溶剤の揮発がなくなり、表面平滑性Ra 0.8μmを実現し、ヒートシンクとの接触面において滑らかな表面を形成することを可能とした。
半導体パッケージの表面に塗るのではなく、パワー半導体系の昨今のトレンドである銅コイン埋め込みプリント基板側に塗り、ヒートシンクと接続させることで放熱性を向上することが可能となるが、この際の平滑性が高いため、接地面が拡大し、より熱を逃しやすくなるという
また、-40℃~+165℃の負荷を1000サイクルかけても割れや剥がれが発生せずに、各種特性を維持できることも確認しているほか、絶縁破壊電圧6.6kV/100μmも実現したともしている。
なお、同材料は現在サンプル出荷中で、本格量産については2026年1月からを想定していると同社では説明しているが、同材料に続く市場ニーズにマッチした製品群を継続して上市していくことで、ソルダレジスト世界トップクラスのメーカーとして存在感を高めていきたいとしている。