東北大学と三井不動産は4月26日、社会課題解決と新産業創造を目指す共創の場の構築に向け、「東北大学サイエンスパーク構想」を本格始動したことを発表。サイエンスパークの愛称を「MICHINOOOK(ミチノーク)」とし、東北大 青葉山新キャンパスにて「国際放射光イノベーション・スマート研究棟」と産学連携拠点「青葉山ユニバース」の運用を開始したことも併せて発表した。

この発表に際し両者は合同発表会を実施。サイエンスパーク構想の歩みを説明するとともに、新愛称に込められた想いや将来的なロードマップについて語られた。

  • 東北大の冨永悌二総長と三井不動産の植田俊代表取締役社長

    会見に登壇した東北大の冨永悌二総長(左)と三井不動産の植田俊代表取締役社長

東北大のサイエンスパーク構想がついに本格始動

先端技術領域において技術革新が急速化する中、これからも加速が続くと予想される技術開発の国際競争に打ち勝つためには、産業界の各プレイヤーがしのぎを削るだけではなく、学術界との連携による共創がもはや不可欠となりつつある。

1907年に創立された東北大は、「研究第一」「門戸開放」と並ぶ大学の理念として「実学尊重」を掲げ、社会価値の創造につながる研究を推進。フラッシュメモリや半導体レーザなど、大きな価値を発揮するイノベーションを続けている。また同大学は、さまざまな分野において最先端の研究を行っており、材料科学をはじめ、半導体/量子、グリーン/宇宙、ライフサイエンスなどの分野で強みを持つとする。

そんな東北大は長年にわたって、同大学のキャンパスに産学官が結集し新たな社会価値創造を行う共創の場とする“サイエンスパーク構想”を推し進めてきた。約2300億円にも上る総事業費が割かれたこの構想では、仙台市・宮城県および国とも密接に連携しながら、、4万m2ほどにわたるサイエンスパークを東北大 青葉山新キャンパス内に整備中だ。

  • サイエンスパークの概要

    東北大が整備を進めるサイエンスパークの概要(出所:東北大説明資料)

4月には「NanoTerasu」の稼働も開始

なお同キャンパス内では、4月9日より次世代放射光施設「NanoTerasu(ナノテラス)」の本格稼働が開始。官民地域の協力によって整備された同施設を用いて、会員である企業などが技術開発を始めている。また300mm対応スピントロニクス半導体プロセスラインなど、世界トップレベルの研究開発施設が集積している。そして今般、サイエンスパーク構想の本格始動にあたる第1弾として、4月1日より「国際放射光イノベーション・スマート研究棟」および産学連携拠点「青葉山ユニバース」の運用を開始したとする。

なお東北大の冨永悌二総長によると、今般運用を開始した2つの施設に続き、新たな産学共創拠点が2027年に竣工するとのこと。その完成をもって「サイエンスパークの整備がひと段落する」と語った。

  • 冨永総長

    東北大のサイエンスパーク構想について語る冨永総長

共創コミュニティで実績を持つ三井不動産と連携

また東北大は、サイエンスパーク構想への企業進出を活発化させるため、2023年10月に三井不動産との連携を開始。企業進出の機会創出に向けたコンサルティングや、R&Dに力を入れる企業へのアプローチに加え、青葉山新キャンパスを“共創の場”としたコミュニティの形成に着手したという。

そして今般両者は、先述した2施設の運用開始を契機とする構想の本格始動を受け、サイエンスパークの愛称を“MICHINOOK”に決定。また新設予定の会員組織の名称を「MICHINOOKコミュニティ」とすることも併せて発表した。この愛称は、“陸奥(みちのく)”と“未知ノ奥”を掛け合わせたもので、可能性が無限に広がるイノベーションを表現しているとする。

  • 植田代表取締役社長

    “MICHINOOK”に込められた意味合いについて説明する植田代表取締役社長

セミナーやシンポジウムの開催で産学の交流の場創出へ

なお、MICHINOOKコミュニティの形成に向けた取り組みについて、三井不動産 イノベーション推進本部 産学連携推進部長の湯川俊一氏は、まずは材料科学・半導体/量子・グリーン/宇宙・ライフサイエンスの4領域における活動を開始するとした。同社が実績を持つライフサイエンス領域のコミュニティ「LINK-J」や宇宙産業領域のオープンプラットフォーム「cross U(クロスユー)」などで得た知見を活かし、6月6日のライフサイエンスに関するセミナーを皮切りに、各領域でのセミナーやシンポジウムを開催し、認知の拡大および会員の増加につなげていきたいという。

さらにこうしたイベントに限らず、会員のニーズに合わせた交流の機会などを創出していくとのことで、現状の産学連携における課題である“きっかけや入り口がわからない”、“最適な研究者が見つからない”、“企業同士の連携の機会も欲しい”などの課題を解決するため尽力するとしている。

  • MICHINOOKコミュニティについて説明する湯川氏

    MICHINOOKコミュニティの展望を語る湯川氏

加えて“共創の場の創出”にあたっては、さまざまな実験に活用可能な私有地のモビリティサーキットや再生医療プラットフォームを有する「柏の葉スマートシティ」での実績を展開しながら、東北大の研究者における利便性・快適性はもちろん、実証実験の場や企業PRの空間など、多様なニーズに応える場を整備していくとする。

個人・学生会員の登録はすでに開始

なおMICHINOOKコミュニティの会員種別については、従業員数に応じて区分された入会費・年会費が有料の企業会員「特別会員A・B」と、入会費・年会費が無料となる「個人会員」「学生会員」を設定。個人会員と学生会員はすでに登録が開始している。湯川氏は会員数の目標として、5年後に個人会員・学生会員を5000名まで、特別会員を100社まで拡大したいと話した。

  • 会員種別および会員募集スケジュール

    MICHINOOKコミュニティの会員種別および会員募集スケジュール(出所:三井不動産説明資料)