中国は米国の対中半導体輸出規制の中にあっても、半導体製造装置の国産化などを急ピッチで進めている。そうした中、韓国政府系の対外経済政策研究院は、「中国の半導体国産化推進状況」に関する調査を行った結果を報告した。
主な報告内容は以下の通り。
- 2022年、中国における半導体製造装置の国産化率は前年比14ポイント増の35%、中国最大の半導体製造装置メーカーであるNauraや中国最高クラスの半導体製造装置メーカーAMECなどが政府による投資と研究支援などを通じて迅速に技術力を向上させ、エッチング、薄膜、蒸着などプロセス分野で国産化率を大きく向上させてきている。
- 中国唯一の露光装置メーカーである上海マイクロ電子(SMEE)は国産DUV(ArF)露光装置を開発したが、ASMLの製品との差は10年以上と見られ、露光装置の国産化率は3%程度に過ぎない。
- 米国の制裁が相対的に弱い半導体設計分野への中国の投資が増えており、一部の中国企業における先端半導体設計分野の競争力が高まってきている。
- Huaweiはパッケージング、EUV、EDAなどの分野で特許を次々と出願しているほか、アリババ、バイトダンス、テンセントなどがRISC-VベースのAIチップ設計に着手している。
- 短期的に主要国の輸出統制措置が中国の半導体国産化に影響を与えてはいるが、国有資本が投入された重点企業を中心に28nmノード以上のレガシー半導体製造技術とノウハウが急速に蓄積されており、中長期的に中国半導体製造装置市場でローカル企業の割合がさらに高まる見通し。
- 中国はデジタル中国戦略の実現と米国とのAI競争で優位確保のために先端半導体が必要な状況で、チップレット技術など先端パッケージングによるチップ性能向上と迂回方法を通じて先端半導体を確保するとみられる。
- 中国は先端半導体設計能力を内在化し、多量の特許出願を通じて技術保護に乗り出すと予想され、電気自動車などに使用される次世代パワー半導体(SiC/GaN)の競争力拡大を模索している。
中国の半導体製造装置内製率は40%超に
また、中国の半導体製造装置の内製化率は40%を超えており、2年以内に2倍に拡大することが予想されるほか、PVDならびに酸化装置の国産化率はすでに50%を超えた、とする韓国半導体業界の内部情報を台湾メディアDigitimes Asiaが伝えている。
同誌が調べたところによると、装置、ファウンドリ、パッケージングとテスト、IDMを含む中国の半導体製造サプライチェーンにおいて、半導体製造装置メーカーの研究開発比率が最も高いという。過去2年半の間、中国を拠点とする半導体装置メーカーの研究開発への売り上げに対する投資比率の中央値は10%以上を維持しており、これはSMICの研究開発費よりも高い割合だという。
例えばAMECの研究開発比率は、過去2年半の平均で13%以上となっているほか、Naura Technologyは売り上げの11%を研究開発に割り当てている。このほか、売り上げの20~40%ほどを投じている新興企業もあるという。一方で、IC設計業界(ファブレス)は製造を担わないという性質もあり、中国拠点の設計会社はファウンドリや装置メーカーよりも高い研究開発比率であったという。
なお、中国の半導体自給率の向上は、大消費地である国内市場に加えて、政府の支援、強力な研究開発能力の推進、資本市場から支援などが背景にあるものと考えられており、今後の進展においては、微細化の鍵を握る先端露光装置の開発あるいは入手が中国にとって大きな課題となってくるであろう。