この半導体ニュースのまとめ

・Tata Electronicsがインド・アッサム州で建設を進めていた半導体後工程工場が年内にも稼働の見通し
・車載や産業用途向けを軸にグローバル顧客獲得を狙う
・インドの半導体政策と連動しサプライチェーン強化を加速

インドTataグループのタタ・エレクトロニクス(Tata Electronics)がインド・アッサム州モリガオン(ジャギロード)に建設を進めている大規模な後工程工場(OSAT:Outsourced Semiconductor Assembly and Test)を年内にも稼働させる計画であると複数の海外メディアが報じている。自動車および産業機器向け需要への供給能力の拡大で世界中の顧客からの信頼構築を進める模様である。

インド半導体産業の成長を後押しする後工程拠点

同社は現在、インドのカルナータカ州ヴェマガルに小規模な後工程工場を建設・稼働させているが、より大規模な後工程工場の稼働により、OSATとしての生産能力を高め、世界中の顧客からの信頼を獲得していく狙いがあるという。また、こうした半導体製造に対する取り組みは、インド政府が推進するインド半導体産業の育成政策の一環としても位置付けられることとなる。

これまでのインド半導体産業は、半導体メーカーの設計拠点は多々設置されてきたが、電力や水などのインフラへの懸念などから前工程ならびに後工程工場は皆無で、サプライチェーンの空洞化が課題となっていた。

そうした意味で、本格的な後工程工場の拠点整備は、インド内での半導体製造バリューチェーンを構築する上で重要なステップとなるといえる。

自動車・産業用途を軸にグローバル展開へ

ジャギロードの後工程工場は総工費2712億ルピーとも言われ、約100万ft2のクリーンルームを活用して1日あたり最大4800万個の半導体デバイスを生産できる能力を有する予定で、先行して製造ノウハウを蓄積してきたヴェマガル工場のチームが5月末までに現地入りし、生産移管を進めるとされる。

主にスマートフォンや家電向け半導体デバイスのパッケージ工程のほか、自動車(車載)や産業機器などの高い信頼性が求められる市場も主なターゲットとする見通し。こうした高信頼性が市場は、長期供給や高品質が求められるものの、単価が比較的高いため、OSATの事業として見た場合、収益性を確保しやすいことが考えられる。タタ・エレクトロニクスでは、こうした市場を起点としてグローバルで顧客獲得を狙っていく戦略と見られる。

インド発OSATの参入で競争環境は変わるのか

現状のOSAT市場は大手を見るとAmkorが米国企業である以外、トップのASEをはじめとする台湾勢および中国勢が大半を占めている。ここにインド発のOSATが参入することで、市場環境が将来的に変化する可能性がある。

コスト競争力だけでなく、インド政府による支援やインド国内の需要の高まりを背景に、半導体サプライチェーンにおける新たなプレイヤーとしてのポジションを確立する可能性があるためだ。

設計中心から製造を含む産業へ転換

インド半導体産業はこれまで、半導体の回路設計やソフトウェアを中心に発展してきたが、近年、前工程・後工程といった製造も実現するべく政府も後押しする形で総合産業への転換を目指した動きが推進されてきている。 政府主導の投資と民間企業による事業展開が連動することで、インド内で完結するサプライチェーンの構築が進む可能性がある。

グローバルの半導体産業に変化が起きるのか

半導体産業はこれまで、台湾、韓国、日本、中国といったアジアを中心に、そして米国と欧州・中東を含めて分業体制が構築されてきたが、コロナ禍での半導体不足の経験を踏まえたAI時代の需要拡大と地政学的リスクの高まりにより、一気に供給網の多極化が進もうとしている。

そうした中でのタタ・エレクトロニクスの今回の動きは、新興国による半導体製造への参入速度の加速、世界的なエレクトロニクスの潮流による半導体チップ製造の増加に対する後工程工場の重要性の高まり、国家主導による産業政策の推進という3つの潮流が重なった動きと言える。

現在、インドでは複数の前工程工場の建設が進んでおり、そうした動きも含め、インド半導体産業がグローバルの中でどこまで存在感を高めていけるか、半導体サプライチェーン再編に向けた動きが進む中で注目されるポイントとなる。