オムロンは、ものづくり現場のエネルギー生産効率向上に向けたオートメーションコントローラの新製品として、高速かつ高精度の制御を実現したCPUユニット「NX502」と、大容量の情報制御を行うイーサネットIPユニット「NX-EIP201」を、4月24日にグローバルで一斉発売したことを発表。同発表に際し、新製品に関する記者説明会を開催した。

  • オムロンはオートメーションコントローラの新製品「NX502」と「NX-EIP201」の発売を発表した

    オムロンはオートメーションコントローラの新製品「NX502」と「NX-EIP201」の発売を発表した(出所:オムロン)

性能向上をより効率的に生産性向上につなげる新製品

昨今の製造業では、ESG経営の重要性の高まりを受け、製造現場でにおけるカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが活発化しており、生産ラインの稼働率最大化に対する要求が高まっている。また、xEVやデジタルデバイスといった急速に技術革新が進む製品に関わる製造現場では、急激な需要変動に対応するため、歩留まり改善を迅速化し、柔軟な設備設計に対応できるライン構築が課題となっている。

これらの課題解決に向け、オムロンは、機械制御に必要な機能・高速性と、産業用コントローラとして求められる安全性などを兼ね備えた“マシンオートメーションコントローラ”を提供している。同社はその効果拡大を目指し、高速化や大容量化といった性能強化を続けてきたというが、その強化については、ハードウェア面での制約などの理由から限界が近づいているという。

これらの課題感からオムロンがアプローチしたのが、生産ラインの稼働効率最大化による生産性向上だ。サイクルの高速化やメモリの大容量化、ネットワークの高速化などといった重要な性能指標は従来と変わらないものの、サイクル高速化によるデータ収集能力向上、大容量メモリを活用したデータ管理、サーバ通信の高速化など、効率を最大化するための機能向上に取り組んでいるとする。

オムロンの新コントローラが持つ2つの強み

そして今回同社が発売に至ったのが、NX502。同製品は、NXシリーズの従来製品が強みとする高速・高精度制御を踏襲しているという。さらに、安全制御向けのNX-Safety、および同時に発売される情報制御向けのNX-EIP201を接続することで、速度や精度を落とすことなく大容量化を実現するとしている。

オムロンは新製品の強みとして、以下の2点を挙げる。

  • 高精度のデータ収集能力と大容量転送能力により生産現場における資源廃棄ロスを削減
  • 大規模かつ高速安全の統合制御技術により生産ライン変更時のリードタイムを短縮

生産現場における資源廃棄ロスの削減

新製品では、ジッタ1μs以下の高精度データ収集能力および大容量のデータ転送能力により、温度や圧力といった生産関連データの分析をリアルタイムで行い、その結果を加工条件に即時的に反映できるとする。これにより、不良要因の発生から不良要因の特定・改善までの時間を短縮し、不良品の発生を回避することができるという。

  • データ転送や分析結果の反映を高速化することで、従来(左)に比べて新製品使用時(右)では、不良要因の特定を高速化して歩留まりを向上させるという

    データ転送や分析結果の反映を高速化することで、従来(左)に比べて新製品使用時(右)では、不良要因の特定を高速化して歩留まりを向上させるという(出所:オムロン)

オムロンはそのアプリケーション事例として、太陽電池向け多結晶インゴットなどの結晶製造プロセスを挙げる。生産関連データをリアルタイムで変動させる必要がある高品質結晶の生成において、これまでは通信性能の限界により、製造品質が不安定だったとのこと。しかしNX502を用いることで、不良原因を早期に特定し、歩留まりを向上させることが可能だとしている。

生産ライン変更時のリードタイム短縮

また新製品は、EIPユニットの拡張によって最大8系統までネットワーク系統が分離可能で、同時に大規模システムの構築を可能にする2つの安全通信規格もサポートしているため、安全制御のネットワーク構成をモジュール化することができるという。

このメリットは、製造ライン変更時のリードタイムにおいて発揮されるとする。従来のように1つのネットワークで製造の複数工程を制御する形態では、一部の変更時でもライン全工程を停止して調整を行う必要があった。しかし新製品では、工程それぞれで調整が可能となるため、変更が生じたモジュールのみの確認で製造を再開することができ、リードタイムを短縮できるとのことだ。

  • ネットワーク構成のモジュール化により、製造ライン変更時のリードタイムを短縮し生産効率を向上させるとする

    ネットワーク構成のモジュール化により、製造ライン変更時のリードタイムを短縮し生産効率を向上させるとする(出所:オムロン)

多角的なアプローチでさらなる生産性向上へ

オムロンは今回の新製品発売に留まらず、今後も同社が掲げるモノづくり革新コンセプト「i-Automation!」の実現に向け、製造現場の生産性向上やカーボンニュートラルへの貢献、サステナブルなものづくり現場への進化を目指した製品提供を進めるとしている。