オムロンは3月1日、同社電子部品事業の新製品として、太陽光発電システムで使用されるパワーコンディショナ(PCS)の高出力化に貢献する、300Aの高容量リレー「G9KA-E」を同日よりグローバルで発売したことを発表。同日にはオンラインで記者会見を開催し、新製品の概要や狙いを説明した。

  • オムロンが発売を開始した高容量プリント基板用リレー「G9KA-E」

    オムロンが発売を開始した高容量プリント基板用リレー「G9KA-E」(出典:オムロン)

カーボンニュートラル実現を目指し太陽光発電に着目

オムロンは全社の長期ビジョン「Shaping the Future 2030」において、カーボンニュートラル(CN)の実現に取り組んでいる。また電子部品事業としても、そのミッションの1つとして、気候変動への対応やCN実現への貢献を掲げている。そして、新エネルギーに対応したインフラや製品機器の普及に向け、同社の"繋ぐ・切る"技術を軸として、安全性を担保する確実な直流遮断や低消費電力化に貢献する製品の提供を目指している。

その中で今回、CNへの要求の高まりに加え、昨今の世界情勢を受けて電力の地政学リスクに対する懸念が増大していることから、「国産の再生可能エネルギー」としての太陽光発電に貢献する製品の提供に至ったとする。

耐熱性の改善でプリント基板用リレーの高容量化を実現

産業用太陽光発電システムでは、発電された電力が太陽電池から電力系統に送られる際、PCSで直流から交流への電力変換を行っている。またPCSのもう1つの役割として、太陽電池や電力系統に異常があった際に、「開閉器」を用いて電力を遮断し安全を確保することがある。

  • 産業用太陽光発電システムの構造概要図。太陽電池から電力系統までの電力の移動における安全管理で、開閉器が重要な役割を担っている

    産業用太陽光発電システムの構造概要図。太陽電池から電力系統までの電力の移動における安全管理で、開閉器が重要な役割を担っている(提供:オムロン)

開閉器としては、コンタクタ(電磁接触器)もしくはリレー(継電器)が用いられる。両者のうち、コンタクタの方が大電力用途向きである一方で、リレーの方が小型かつ軽量であるという利点を持つ。またリレーの中でも、ネジ締めやコネクタでの接続を行うものと、プリント基板にはんだ付けされた製品があり、後者は配線材を必要とせず、接続工程の省力化にもつながる。

しかしプリント基板用のリレーは、小型化とトレードオフの関係にある課題として、通電時の発熱への耐性が低いことが問題となっていた。

そこでオムロンは、プリント基板用リレーの高容量化を実現したG9KA-Eを開発した。新製品では、前世代品のリレーである「G9KA」の設計を踏襲し、業界トップクラスとなる0.2mΩ以下の接触抵抗を実現することで発熱を抑制するとともに、端子面積を増やしスタンドを高くすることで放熱性や通風性を高めているとする。これにより、300Aの通電定格を実現し、最大開閉電圧もAC1000Vまで拡大させたとしている。

  • 新製品のG9KA-Eと、前世代品のG9KAや他社製品との比較

    新製品のG9KA-Eと、前世代品のG9KAや他社製品との比較(提供:オムロン)

太陽光発電向け分散型PCSに加え、EV用急速充電器にも適用を期待

オムロンは新製品の主な適用領域として、太陽光発電システムの分散型PCSを挙げる。

従来の大規模太陽光発電システムでは、電力変換を行うPCSを1つに集約し、集中型PCSとして運用していた。しかしこの場合、異常が発生した際には、PCS置き換えができず現地での調査や修理に時間を要する点や、1つの異常で多くの太陽電池が発電できなくなる点など、メンテナンス面での課題が表出していたという。

これらの課題を受けて現在利用が進むのが、人手で運搬できる大きさの分散型PCSだ。この場合、異常が発生した際には予備品などとの交換が可能で、また太陽電池の稼働ロスも抑えることができる。 しかしながら、小型のPCSは1台あたりの出力が限られるため、大規模な太陽光発電システムにおいては多数のPCSを稼働させる必要があり、保守負担の増加や故障率の上昇などが懸念されていたとする。そして、サイズや重量は維持したまま1台あたりの出力を増加させたリレーの開発が求められていたとのことだ。

オムロンは、新製品はまさにそのニーズに応えるために開発されたものだとしており、今後もプリント基板用リレーの大容量化に向けて開発を進めていくとする。

また新製品の適用範囲については、分散型PCSのほかにも広範に及ぶという。その例には集中型PCSを挙げ、前述した課題解消に向けてモジュールとして運用する形での開発が進む集中型PCSにおいても適用が可能だとする。また、近年注目が集まる電気自動車(EV)用の急速充電器でも開閉器は用いられていることから、その領域への適用も期待されるとしている。

  • 分散型PCSに加えてG9KA-Eの適用が期待される用途例

    分散型PCSに加えてG9KA-Eの適用が期待される用途例(提供:オムロン)